表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【コント】小説家と編集者

作者: 蒼ノ下雷太郎

場所:小説家の書斎


役:小説家=ボケ 編集者=ツッコミ


小説家:

人生はね。アルコール消毒のようなものだよ。


編集者:

は、はぁ……。


小説家:

きみには分かるかな。アルコール消毒、店に入る前にかならずやる消毒。我々も日々、人生の中でしてることだよね。あ、アルコール消毒のことじゃなくて。あのね、アルコール消毒をいつもしてるけど、それ以外にもアルコール消毒みたいなことしてると思うって、言いたくてね。


編集者:

はぁ……。


小説家:

ともかくだね。みんな、アルコール消毒してるだろ。似たようなことしてるだろ。人を見た目で判断し、クチでは笑ってもどこかで優先順位というか、こいつはいらない、いる、の判断を行う。何て、醜いんだろうね。


編集者:

あ、あのー、先生?


小説家:

何だね、急に。わたしはまだ話してるんだよ。


編集者:

すいません。その、ほんとにすいません。あのですね、話の腰を折って大変恐縮なのですが……。


小説家:

だから何だね。まどろっこしい奴だな。


編集者:

原稿は、どうしたのでしょうか。


小説家:

あ、タバコ切らしたかな。ちょっと買ってくる。


書斎を出て行く小説家。

一人残された、編集者。


編集者:

……すぅー、……はぁー。

くそ、めんどくせええええええええええええええっ!

ないなら、ないって言えよ! その前にくだらない話盛り込むな、馬鹿!


すぐに小説家が帰ってくる。

慌てて、姿勢を正す編集者。


小説家:

実はここに録音機があってね。ほー、きみ、おもしろいこと言うねぇ。(録音を聞いてる)

めんどくさい小説家で悪かったねぇ。編集長に言って、担当を変えてもらったらどうかな?


編集者:

す、すいません先生! こ、こんなことは二度としないので!


小説家:

あー、いいよいいよ。二度としないから。二度と来ないんだし。あーあー、これじゃ原稿なんて書く気起きないな。編集者がこんなんじゃ。わたしは悪くないねー、あひゃひゃひゃっ――ぎゃっ!? え、ちょっ、はたいた? はたいたの!? 嫁にもブタレたことないのに!


編集者:

うるせー、馬鹿!


小説家:

ひぃぃ、怒った!


編集者:

こっちはな……意地でも原稿をもらいにきたんだ。てめーのなんか知ったことか! てめーは確かにむかつく、ゴミクズだ。人としての最低限の価値もねぇ、ゴミ虫だ!


小説家:

え、ちょ、えええっ? その、きみ、ひどくない。流石にそこまでは。


編集者:

だけどな、そんなんでもあんたの小説は最高だ!


小説家:

え、ちょ、えええええっ?!


編集者:

むかつくことに、この俺もあんたの小説にイカレちまったクチでな。ここはどうしても書いてもらうぞ。あんた、書かないときは本当に書かないからな。


小説家:

そ、そうは言ってもさぁ。なんだかんだで印税で暮らしていけるしさ。……それに、そこまで言われて悪いけど、所詮わたしの小説なんてさ。


編集者:

所詮なんて言うな! あんたの何千何万のファンに何て言うつもりだ!


小説家:

いや、だって、『自分よりも年下の女の子にバブみを感じたアラサー男の青春』だぜ!? いいのかよ、これって思うよ。いつも!


編集者:

バブみ……最高じゃないか。


小説家:

く、狂ってる。


編集者:

ともかく、今日はあんたを逃さないぜ。さあ、早く書きなよ。仕事なんてくそ食らえ。今俺は、世界最高峰のバブみをこの世に産ませるために戦う!


小説家:

何一つかっこいいこと言ってないからな!? ……ったく、分かったよ。書くよ。そうだよな、ファンに対して失礼だよな。喰わしてもらってるのに、文句言っちゃって。


編集者:

へへへっ、これであんたはバブみから逃れられないんだぜ。


小説家:

どこのジャンキーだよ、お前。……とは言ってもな、実はすでに次の原稿は出来ていてな。


編集者:

ええええええっ!? もうできてるんですか。何だ、ちょ、さっきまでのくだり何なんですか。紛らわしいな、もう。


小説家:

正直、編集長とも話して自分でもまだちゃんとした答えになってないのだよ。だから、あまり見せたくなかったのだ。ほら、これが次の原稿だ。


編集者:

おおっ! こ、これがバブみ原稿――ありがたくちょうだいいたします。ちょっと、軽くですけど、ささっと確認しますね。へへへっ。


小説家:

実はな、もう今回でバブみ終わらせようと思ってな。


編集者:

ちょ、え、ちょ、ええええっ!? ど、どどどど、どうして、そ、そんなことに。


小説家:

いや、編集長と話してな。もう、次で違うジャンルやっちゃってもいいよと言われちゃって。


編集長:

………。


小説家:

え、ちょっと、どこに行くのー? ……えー、黙って出て行っちゃったよ。原稿も持たないで。そこまであいつ、バブみに心酔してたのか。悪いことしたな。……でもなー、この作品そろそろ方向転換しないと売れ行きが厳しいんだよな。

と、編集長からメールか? えーと、何々……『たすけて』? ……ん?

あ、あいつ、まさか――。


終わり


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ