祭りの後 【月夜譚No.78】
文化祭の後は、高揚感の残り香と切なさが漂う。片づけをする生徒達の声は賑やかなのに、剥がされていく飾りを見ていると、なんとも言えない物悲しさがつきまとう。
ゴミ袋を抱えた少女が、人気のない廊下を歩いていた。風船でも割れたのだろう、破裂音の後に小さな悲鳴が遠くに聞こえた。
皆が懸命に作ったペーパーフラワーや看板を捨ててしまうのは惜しい気もするが、とっておいても使い道がない。役目を終えたカラフルな塊は、生徒達の思いを吸い込んだ分、重たく感じた。
ふと、廊下の端で足を止める。校庭に面した窓の一つが半分ほど開いている。この辺りの教室は出し物に使われていなかったはずだから、休憩に使っていた誰かが閉め忘れたのだろう。
少女はゴミ袋を足元に置いて、その窓に歩み寄った。サッシに手をかけた瞬間、ひやっとした風が頬を掠めていった。肩を竦めた少女はそっと窓を閉じた。
まだ暑いと思っていたが、夜の空気は少しずつ冬に近づいている。そろそろ冬支度を始めるのも良いのかもしれない。そんなことを頭の片隅で考えながら、少女はゴミ袋を再び手にした。