第2部 第1話 レジスタンス
カトリック家が無くなり、3年の月日が過ぎ獣人達は逃げ場所を失っていた。
皇帝は重税と帝国市民法を定め、反対派の貴族は容赦なく粛清された。
怪しい者は一方的に裁かれた。裁かれた者や獣人は悪戯に殺され、辱められ、奴隷にされた。
「早く逃げなさい! お母さんが時間を稼ぐから!」
アイギパンの親子が逃げていた。理由はなく市民権を持たない獣人や人々は捕まると、強制収容所に収監され帰った者は1人もいなかった。
「お母さん! ダメだよ! いやだよ!」
子供は、泣きながら母にしがみついていたが、母親は捕まればどうなるか知っていた。強く抱きしめた後に、泣きながら子供に言い聞かせた。
「お願いだから! お母さんの言いつけを守りなさい!」
子供が走りだし、母親が兵士を止める。
後ろから母親の叫び声と、兵士の怒鳴り声が聞こえくる。
アイギパンの子供は、泣きながら森に走っていき茂みに隠れる。声が漏れないように自分で口を塞ぐが鼻水と涙が止まらずに手は濡れていた。
「ふー、ふー、ふー、」
兵士達の足音が聞こえる度に心臓が跳ね上がる。母親の心配と恐怖で気がおかしくなりそうだった。
「あのガキどこに行きやがった!」
兵士の持つ剣から血が垂れる。容易に母親の血だと子供でもわかった。
「ふーえっ、ふーえっ」
涙と鳴咽が止まらず恐怖心で、股が温かくなる。
「なんだ、お前達は? 我々は帝国の兵士だぞ」
「お前達は人でなしだ!」
男性の怒鳴り声と共に兵士達が切られる。
「ぐはっ!」
たくさんの足音が聞こえて来る。
「よく、頑張ったな!」
黒い軍服に金髪に青い瞳の優しい顔が見える。
「だれ?」
「レイ様、撤退しましょう。兵士達に追われていた20名の安全は確保しました」
黒い軍服に赤い毛に赤いキャツアイのような瞳の凄い美人のキャットピープルが、レイと呼ばれる人に話し掛ける。
「ああ、行こう」
抱きかかえられたアイギパンの子供は安心したのか気絶してしまった。
「こんな子供にまで……」
「レイパパ、アイカママ、待ってる」
レイの腕に尻尾を巻きつけたココに急かされながら、急いで走り出す、アイギパンの子供を優しく抱きかかえながら……
♢♢♢
レジスタンスとして、獣人達の安全を確保しながら帝国中に拠点の建築と水面下で、帝国に抵抗している貴族や反対勢力を集めていた。
「お帰り、うまく行ったようだな」
「ただいま、スタンリー!」
スタンリーは、ブルーリザードマン族で筋肉隆々の戦士だ。帝国から家族と共に逃げていた時に、助けた1人で、レジスタンスに家族で参加している。
「スタンリーさん、かなりの人を救出しましたが逃げ遅れた人も多数で予定より少なかったです」
「落ち込むな。アイカ嬢、帝国の狩りは酷くなる一方だ」
激しくなる帝国からの獣人狩りに、オレ達は全力を尽くしていたが、全員は救えない……亡くなる人が、増え続けていた。
「スタンリー、すまないがナターシャ達を見なかったかい?」
「ここですよ、レイ!」
天井からぶら下がりオレを抱きしめてくる。
ナターシャはナーガ族で白い鱗の尻尾に銀髪に赤眼の美女で、帝国の兵士に仲間達を殺された。
救出してから生き残った仲間と共に、レジスタンスになって戦っている。
「手荒い歓迎だね、ナターシャ」
「わたくし、助けていただいた時からあなたに心をうばわれてますの」
白い尻尾でオレを縛り、潤んだ赤い瞳をしながら弾力ある胸が当たる。
「ナターシャー! レイ様から離れなさい!」
アイカの尻尾がツンと起き、全身の毛が逆立ち怒っている。
「気づかなかったわ、あ・な・た、レイと付き合いが1番長いからって、いつも、いつも! レイにべったりとくっ付いているのだからいいじゃない!」
「よくないわよ! シャー!」
「ナターシャ、アイカママ、喧嘩よくない!」
最近では、ココが仲裁に入り解決するのが、増えていた。ココは、レジスタンスのマスコット的存在になっている。
「わかりましたわ、ココ」
「ナターシャ、くすぐるダメ、キャキャ」
ナターシャは、ココをかなり可愛がってくれるので助かる。
「すまないが、隠れ里の状況はどうなっているんだ? 救出した人達を非難させたい」
「隠れ里の建設状況は順調ですの、安心してほしいですわ」
「よくやってくれたね。ありがとう、これでみんな助かる!」
嬉しさのあまりナターシャの肩に手を置き真剣な顔で感謝を伝える。
ナターシャの顔が真っ赤になりながら潤んだ瞳でオレを見つめる。
「レイのそんな顔を見ているとわたくし……」
ナターシャの顔が近づいてくる。
「ニャーーーー!」
アイカがナターシャの尻尾を思い切り引っ張り、ナターシャは床にキスをする羽目になった。
「痛いですわ! 良いところなのにふざけないでよ!」
「ふざけるニャー! レイ様になにをするニャー!」
「いい加減にしなさい! 2人共!」
レインが作戦から帰って来ていた、カトリック家か無くなってからは、オレ達とレジスタンスとして共に行動していた。
「レイン、お帰りなさい」
「レイくん、君も止めないか、全くしょうがない。作戦は成功だ、25名の救出に成功した。しかし、良くない噂を聞いた。みんなも聞いてくれないか?」
レジスタンスの仲間に聞こえるように大声で話し始める。
「死の商人が動いた。強制収容所に収監された人々を実験に使い、強力な兵器と魔法を研究していると言う話だ。この実験が成功したら数万単位の死者が出る程の兵器らしい」
死の商人は帝国で暗躍している1人で名前、年齢全てがわからない1人で情報がなさすぎて作戦を立てようがない人物だ。
「どこの収容所ですか?」
「クローガン収容所だ。ウィル殿がクローガにいるそうだ」
「ウォル兄さんが、本当ですか」
カイン兄さん以外は、カトリック家の襲撃から行方不明になっていた。兄3人を探していたがわからず生存は絶望的と考えていた。
「クローガン収容所に、ウィル兄さんが……」
クローガ収容所に向かう事にした。
ウィル兄さんと死の商人の人体実験を止めるために。
♢♢♢
暗い室内でレイはうなされていた。
カトリック家が襲撃された日からずっと悪夢を見るようになり安眠する事はない。
毎日、帝国によって亡くなった人達を成仏させている。癒された魂が天に帰る時、心は癒された気がするが悪夢は続いた。
「はぁ、はぁ、うー、はぁ、……」
「レイ様……」
アイカはレイが悪夢を見るのを知っていた。
額にある汗をタオルで優しく拭いたあと。
だから、アイカは服を脱ぎ裸になり、静かにベットに入りレイを抱きしめていた。
「すーすーすー……」
「アイカママ?」
「しー」
ココに静かにする様にジェスチャーすると服を着てベットから出てからレイの額にキスをする。
アイカやココの日課になっていたがレイは知らないでいた。
♢♢♢
翌日になり、エリカとハルベルト商会のウォーカルが来ていた。
「エリカ、ウォーカル、よく来てくれた!」
「レイ坊っちゃんの為なら、このウォーカル、何処へでも行きますぞ」
ウォーカルはレジスタンスを裏で物資の取り引きをしてくれていた。もちろん、レジスタンスからは帝国から奪った武器や防具に金品の取り引きしている。危険を顧みずに協力していた。
「いつもすまない」
「坊っちゃん、私はカトリック家には返しきれない恩があります!あと、個人的に坊っちゃんが好きだからいいのです!」
「ありがとう」
「エリカも遠くからすまない!」
「私は戦う事ができにゃいけど、協力なら出来るにゃ!」
エリカは救出した人達を秘密の抜け道から隠れ里に輸送したり、カイン兄さんと帝国に抵抗している貴族や他のレジスタンスと交渉したりしてくれているのでオレ達の拠点にはあまり来ない。
「エリカ姉さん!」
「失礼しますにゃ。アイカ!」
会議があるがココには暇だしどうしようか考えていた。
ナターシャを見つけたのでココの面倒をたのんでみた。
「これからクローガ収容所の会議なんだ。ココを頼んでもいいかな?」
「いいですわ! わたくしココには親近感がありますから、一緒にお菓子を食べましょう?」
「ココ、お菓子食べる」
ココはナターシャまで飛んでいくと、ナターシャの軍服のポケットに入る。
「ありがとう、ナターシャ」
「お願いならわたくし喜んで受けます。だ・か・ら、今度わたくしからのお願いも聞いてくださいね」
「お手柔らかに頼むよ」
ナターシャは投げキッスをした後、台所の方に向かって行った。
レインとスタンリー挨拶をした後、クローガ収容所について話を詰めていく。
「スタンリーよく収容所の見取り図が手に入ったね、さすがだよ」
「邪の道は蛇だよ、知り合いにツテが合ってな、助かった」
「見張り棟が4つ魔導具により夜間でも見られる照明に、壁の高さが5メートルで壁の上には2メートル間隔で大型クロスボウに、壁の外には堀が4メートルの深さ。かなり厳重だな」
収容所の見取り図を見ながらレインが内容を話を進める。
「掴んだ情報だと魔術師も多数いるようだ」
「うーん? こことここから入るのは?」
しばらく考えてからスタンリーが答える。
「リザードマンとナターシャのナーガなら、行けると思う!」
「表門と裏門が入り口は跳ね橋?」
「跳ね橋だね」
数時間の間見取り図を見ながら話をしてから、クローガン収容所の近くにある拠点に移動した。
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