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 第7話 家族との別れ


 馬車の襲撃から2日が経過した。

 オレ達は、カトリック家の領地に帰る為に、ゆっくりと移動している。


 エリカやアイカを逃したかったが、危険と判断していたが、自分が居ない所で危険な事にならないか心配もあった。


 帝国からの追ってがあると考えて、街道は避けて遠回りでも、森を移動していた。


 よかったのは、襲撃した騎士達の軍馬が手に入り、オレとカイン兄さんが先行して安全を確認できる。

 千里眼は数キロ先しか見ることができないからだ。


「なかなか、深い森ですね……」


「ああ、帝国がいるかもしれないからな、エリカ達を安全を守らないとな」


(次に.何かあればレイは暴走するだろう……今の状態で暴走したら……)


 カインは恐ろしかった。アイカ達が死んだりしたら、襲撃した騎士達の比ではない暴走が起こる。

 そして、カトリック家がどうなっているのかわからない。


 下手に町や村に立ち寄り騎士に出くわせば、カトリック家に帰る事が出来ない。


偵察が終わったオレ達は、鳥を狩り。夜のキャンプをしていた。


「エリカの様子はどうだ?」


「まだ、起きれません。すみません。私達が足手まといで……」


「関係ない! アイカもエリカもオレの家族なんだ! さっき、森で狩ってきた鳥だ。エリカの分もある。食べてくれ……」


「ありがとうございます……」


「カイン兄さんも休んでください!」


「悪いな……時間になったら起こしてくれ」


「わかりました」


 アイカの顔色が悪い。休んでいないのだろう。


「食事が終わったらアイカも休むんだ、見張りはオレとココがいれば大丈夫だ、いいね?」


「ココ、守る」


「はい……」


 ココと鳥肉を食べて火を見ながら、不安な気持ちが広がる。カトリック家の事やエリカの事。みんなの安否が頭から離れない。


 しかし、騎士達を殺した事は気にしなかった、あいつらは敵で、人でなしだ。アイカやエリカに酷い事を言ったうえにエリカを切った。今でも怒りが湧いてくる。


「レイ様……」


「アイカ? 寝れないのかい?」


 静かにうなずくアイカに、まとっいる毛布で来るようにジェスチャーをする。

静かに布団に入るアイカがオレの膝にいるココを見つけて微笑む。


「私達は大丈夫でしょうか? 私は……不安でなんです」


 焚き火がパチパチと音が鳴り、焚き火の灯りにアイカの横顔が照らされている。


「エリカもアイカも大丈夫だよ。オレが守るから……絶対に守るから……」


(たとえ……悪魔と呼ばれようとも……絶対に)


「レイ様……私に勇気を下さい」


 アイカの顔が近づき唇が重なる。柔らかい唇の感触に思考が停止していた。

 長いキスと同時に気づくとアイカを抱きしめていた。


「えー、2人共すまないな」

 

「「!?」」


 カイン兄さんが交代で起きてきたがタイミングが最悪だ。


「交代の時間だ。馬車で休んでいろ、アイカと一緒にな」


「いつから居ましたか?」


「レイがアイカを抱きしめ始めた辺りだよ」


 無言のまま耳まで赤くなりながら尻尾を振っている、アイカは馬車に乗っていく。

 カイン兄さんがオレにそっと耳打ちをした。


「寝るだけだぞ、いいな? 寝るだけだぞ」


 オレはうなずきながら、おやすみ馬車に入り赤くなったアイカを引き寄せ、抱きしめながらアイカが寝るのを待った後にアイカの甘い匂いを感じながら寝た。


♢♢♢


 馬車を誘導しながらカトリック家の領地に入った。

 カトリック領地に着いたオレ達は街の変貌ぶりに驚愕していた。


 街の中は鉄と何かが焦げる匂いと、死体が焼ける匂いがする。

 半壊した家屋に燃え盛る家があちこちにあり街中に黒い煙が上がっている。


 道端には斬り殺された死体が数え切れないほど転がっている。


「ここまでやるのか……」


 オレ達は絶句していた。酷い惨状に現実感が無く悪い夢のようだ。

 遠くで戦っている声が聞こえる。


「いたぞ! 逃すな!」


 声の方向に向かうと戦っているレイン先生がいた。


「レイン先生」


「レイくん? 無事だったの?」


 レインを追いかけていた10名程の騎士がオレ達を見て面倒そうな態度だった。


「まだ居たのか? カトリック領の人間はドブネズミのように現れる! クソ!」


「レイくん、逃げるんだ! コイツらは正規軍ではない、″死の商人″の傭兵だ!」


 傭兵の1人がオレ達が誰か分かったらしくニヤつきながら答える。


「コイツは付いてる、カトリックのガキ共と次男坊だ、ボーナスがつくぞ」


「女までいるぜ、ボーナスにおまけ付きだ」


「……コイツらは人間じゃない、外道の人でなしだ! 街を破壊し、住民を殺し! オレから奪う!」


 シュパーー


 傭兵の上半身を吹き飛ばし血の噴水で周りが赤く染まる。


「な!?」

 

 オレは走り傭兵の頭を殴った。頭は勢いよく回転しながら飛んでいく。


「この化け物が!」


 ジュュュユーーンーー


 傭兵の剣を剣で切る。バターのように切れた剣が傭兵の胸に刺さり倒れた。


「こんな化け物がいるなんて聞いてないぞ!」


「お前達は許さない! オレから奪うヤツは絶対に許さない!」


 走るオレに傭兵は魔法を放つ。

 ″マジックアロー″″フレアボム″様々な魔法を弾き返し自分の魔法で倒れる傭兵達。


「無理だ! 逃げるぞ!」



 ブン、ブン、ブンーー


 バン、バン、バンーー


 

 逃げようとする傭兵に走り細切れにした後、細切れにした傭兵を散弾のように飛ばして鎧を穴だらけにした。


 ポタッ、ポタッ…


 力を使い過ぎたのか、鼻血が流れて目眩のせいで片膝をついた。


「レイ様!」


 慌てるアイカがハンカチで鼻血を拭いて肩をかしてくれた。


「……本当に、レイくんなのか?」


 オレの戦いを呆然と見ていたレイン先生がオレに問いができたがオレは頭に血が昇り耳に入らない。

 馬車を引きながら、カイン兄さんがやって来た。


「レイン殿、お久しぶりです」


「カイン殿、レイくんに何があったんですか?」


 カイン兄さんはレイン先生に、今までの事を説明してくれる。



 アイカとココはオレの側にいてくれた。

 自分の中で何が壊れてきている、そんな自覚はあった。

 どうしようもない、怒りと憎しみが渦巻き悲しみが心を侵食していく。


「レイ様……」


「レイパパ……」


 アイカとココが心の支えになっていた。


「行きましょう。父様と母様やみんなが待ってます」


「レイくん……」


 目の下にクマを作り、アイカに肩を借りながら歩いた。みんながいる屋敷に……。


 カトリック家に着くと屋敷は焼け落ちて無くなっていた。


「父様……母様……みんな……」


 走りだし探すと、オレ達が住んでいた庭に、十字架の焼死体が沢山あった。

 焼死体が屋敷のみんなだとすぐにわかった。


 なぜなら、父様と母様とアルルとマコが、青白い光をまとって、待っていた。

 みんな焼死体を見て愕然としていた。


「父様! 母様! アルル! マコ! すみません遅れました!」


「みんな! キラキラ!」


 ココは何もわからないまま、みんなを見て喜んでいる。

 涙を流しながらみんなの霊に話し掛ける。

 振り替えるとオレを心配そうにみんなが見ていた。


「レイ様……」


 アイカとカイン兄さんに手を伸ばす。


「オレを信じてくれ……」


 2人は手を握ってくれた!


「父上! 母様! レイなのか?」

「旦那様! 奥様! アルル姉! マコ姉!」


 アイカとカイン兄さんの雰囲気が変わったのに気がついた。


「みんな何を見ている?」


 レインがレイの肩に手を置いた瞬間、青白い光に包まれた数百の人々がいた。


 レインは気がつく、冒険者の知り合い、宿屋の家族、道具屋の夫婦、街にいて亡くなった人達だとすぐに気がつく。


「みんな……うそ……こんなこと」


 みんなに深く頭を下げる。

 死者は現世にいない方がいい、地上に長くいる霊は成仏せず必ず狂う。


 前世で霊能力者として沢山の霊を成仏させてきた、オレはよく知っていた。


「みんな、もうすぐ行かなきゃならないんだ。別れを伝えてくれ」


 言葉を理解したみんなは、別れを伝える為に亡くなった人達に話し掛ける。

 優しい笑顔だか心配そうにしているみんなにオレは最後に「ありがとう後はオレがやります」と告げた。


 淡い光の数々が天に昇り、光の輪に吸い込まれていく。


「バイバイみんな……」


オレ達は、泣きながら死んでいった人達を見送った。



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