第4章 第5話 断ち切れない絆
オレが、沢山の強制労働施設を解体した後、時期的ににゴットアベンジャーが動いても、おかしくない位の時間がたった。
自分達の庭で、いいように暴れているヤツがいたら、当然、粛正する為に動く。
その為に、わずかな手掛かりを残していった。
全ての岩場を見渡せる場所で、遠くまでをアイカ達とオレは、見渡していた。
「レイ様、誰が来ますかね?」
軍服姿のアイカが、真面目な顔で質問する。
「そうだな、龍之介の知り合いと後は……」
言葉に詰まる。緊張と願いにも似た感情からか、自然と汗が滲む。
「お姉様のリリーナ様ですか……」
「ああ……」
「大丈夫だよ、パパ」
「ありがとう、ココ」
オレを恨み、怒り、憎しみに取り憑かれた、たった一人の姉。だが、オレには確信があった。
冷静に話し合いが出来れば、彼女と新しい関係が築いていけると、なぜなら彼女は……
「レイ、来ましたわ」
ナターシャの声で、意識が目の前に戻る。
巨大なヘルバウンドに乗るオウガに、フィンリルに乗るリリーナ、多数のヘルバウンドに混ざってキキを確認した。
「作戦開始! 雫達に、合図を送ってくれ」
「了解!」
ナターシャが、打ち上げ花火を上げると、ウインドラに捕まり、オウガ達の進行方向に降りた。
「待っていたよ! ゴットアベンジャー!」
オレが、叫ぶのと同時にオウガ達の後ろには雫達が、逃がさない為に道を塞ぎ、岩場に隠れていた。女装の龍之介とオレが道を塞ぐ。
「ラッキースターの兄貴に、ピースメーカーが手を組んだか……」
ウインドラが、ナターシャを連れて降り立つとアイカを迎えに行った。
「ピースメーカーは、やばいがあんた達は雑魚なんだよ! 極技・桜花絢爛朱雀舞!」
キキが放った技で、辺り一面に桜吹雪が舞い炎を纏ったキキが、朱雀のように斬りかかる。
「レイ、任せろ! 秘奥義・鏡面針」
龍之介の鏡面針が、キキの技を跳ね返す。
「グハッ!」
キキが、吐血をしながら倒れそうになるがオウガが受け止める。
「大丈夫か! コレは……まさか!」
オウガは、キキの影に刺さっている針に気づいた。
「あの時は、すまなかった。オウガ、キキ」
カツラを取った、龍之介にオウガとキキは目を見開き驚愕する。
「し、師匠……なんで、貴方がいるんだ」
「師匠? なんで……」
オウガとキキが、驚愕から固まって動けない。
「貴様! よくも私の前に顔を出せたなレイ!」
怒りから、リリーナは固まっていたが、ようやく動けるようになった。
「リリーナ、話がしたい。聞いて欲しい事があるんだ、姉さん……」
「姉だと……お前が、私を姉と呼ぶな! 母さん、行くよ! 極技・疾風狼牙破岩撃」
フィンリルが、風を纏い、地面を抉りながらレイに噛みつこうとした時……
「極技・炎道暴風」
アイカが、空から空中に炎の道を作りながら、炎の暴風を纏いフィンリルとぶつかる。
技が相殺されるとアイカとリリーナは、距離をとる。
「まずい、コイツ達……強い!」
緊張が走る、リリーナとアイカに、レイが間に入る。
「オレ達は戦いに、来たわけじゃないんだ。まずは、オウガ、キキ、リリーナと話した後に、グランドに……いや、叢雲 竜也とも話したい」
オウガとキキは、レイがグランドの本名を知っている事に、絶望した。龍之介が、完全に裏切った事に……
「どこまで、どこまで落ちるつもりなんだ! 師匠、神技・阿修羅無限撃」
オウガの腕が、8本になり全ての腕には金棒が握られていた。
「お前が、師匠をたぶらかしたんだろうが!」
涙を流しながら、オウガがレイを襲おうとした瞬間だった。
「話を聞け……」
レイの重く、冷たい声にオウガは背中に冷たい物を感じた。長年、戦場で感じた事がある。それは、間違えるはずがない"死"だった。
「すまない。あの頃とは、違うんだ。オレは君達とは、戦いたくない……本当の敵が別にいるんだ、オレ達の共通の敵が……」
理解が出来ず、呆然とするオウガとキキ。
リリーナが、フィンリルから降りて、レイを前に立った。
「あはははは……共通の敵ですって、ふざけるんじゃないわよ! あの苦しみが、あの痛みを私は忘れない! 絶対に……」
「本当にすまない。知っていたら、必ず助けに行ったに……知った時には、すべてが終わった後だった」
涙を流すレイに、怒りが収まらないリリーナはレイを殴り始める。
「あんただけが、愛されて! 私は、苦しみだけだった! なんで、あんただけが……」
黙ってリリーナに、殴られるレイに、ポケットにいたココが怒って出てきた。
「パパだって、大変だったんだ! あんただけが苦しんだわけじゃ……」
「よすんだ、ココ。オレを殴る事で、気が晴れるなら、オレは、それでいいんだ」
ココとのやり取りを見ていた、リリーナが泣きながら叫んだ。
「なんでよ……なんで、そこまでするのよ。まともに、会った事もないじゃないの!」
「違うんだ。誰よりも、知っているよ。たった一人の、妹だからな。命……」
名前を呼ばれた、リリーナは固まり一言だけ呟いた。
「……明兄ちゃん?」
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