第3部 第13話 信じたくない悲報
三国との同盟と貿易が始まり、合衆国では目の回る忙しさに賑わっていた。
他国に合衆国が認められ、獣人や意志があり、平和的であればモンスターと呼ばれている者でも、認めてもらえると噂が流れ、魔物や獣人の楽園があると続々と集まっていた。
レイは、今までの苦労が実を結び、嬉しさの余り最近では常にニコニコしていた。
「書類仕事も楽じゃないけど、みんなが幸せに暮らせるなら嬉しい悲鳴だなぁ……」
書類の山を片付け、冷たくなったお茶を飲みながら、大統領府の前にある広場で様々な種族の住民が、家族で遊んだり、散歩していた。
「まだ、問題は山積みだが、初めての平和かも知れないな……」
「パパ、ジジィ臭い……」
「ふっ、ココはしばらくオヤツ抜きだな……」
「なっ!」
絶句し、固まっているココに言い放った。
「オレがいた国には、口は災いの元やキジも鳴かずば撃たれまいにとゆう言葉がある。余計な言葉で酷い目に遭うとゆう事だ。あと、最近、口が悪いぞ」
ココと親子のやり取りをしていると、アイカとウォル兄さんが、大量の追加書類を運んで来た。
「追加だ、今日中に頼むぞ! レイ」
「頑張って下さいレイ様。あっ、新しいお茶入れますね」
最初にあった書類の山よりも高く、聳え立つ新たな山に、目眩を覚えながら、暖かいお茶を飲む。
「あ〜、染みるな……」
「現実逃避もほどほどにしとけよ、レイがサインしないと仕事が進まないからな、あっ、私にもお茶をくれないか?」
「わかりまた。ウォル様」
「そういえば、忙しくて聞いてなかった。獣神教会で、どうして倒れたんだ?」
「あ〜、言うのを忘れていました。アルク・ガルス様に会っていたんです」
「ブーーーー、なんだと!」
盛大にテーブルにお茶を吹き出し、アイカが吹きながら2人して、苦虫を噛み潰したよう顔をしていた。
「アルク様と何を話したんだ?」
アルク・ガルスと神が3つの勢力に分かれて対峙している事、魔素核兵器によって自由勢と支配勢が手を結んだ事、そして、アルク・ガルスが巨竜の大口作戦をするように言われた事を話した。
「レイ様、凄く重要な話じゃないですか」
「そうだ、わかってるのか? 神から神託を受けたんだぞ」
「?」
「何故だ? お前は、かなりの切れ者なのに、神が関わるとポンコツになるんだ!」
ポンコツとは失礼な。話す暇がなかっただけなのに酷いな。
震える手でメガネを上げると、ウォル兄さんは神について、かなり調べたようだ。
神についてオレが言った事は、誰も知らない事で、扱いは慎重にしないといけない事のらしい。
獣神教会の事は、エリカが一番詳しいので、全て話、助言を貰う事にした。
「素晴らしいにゃ! レイ様は、神に選ばれた存在とゆう事になるにゃ!」
「そうなのか?」
「はいにゃ! それに、信徒のお供え物も喜んで頂いている事もわかったにゃ」
確かに、樽で飲んでたからな……
「そういえば、アルク・ガルス様の酒を一口飲んだな……」
「にゃ! まさか、ソ、神酒じゃないにゃ……」
「そうそう、異様に美味い酒だったよ」
見た事がない程、驚いた顔のエリカがいた。
「えっ、エリカ? 別人みたいな顔だぞ」
「姉さん、大丈夫?」
「すっげー顔……」
ウォル兄さんとアイカと、いつの間にか復活したココがエリカの顔を見て、引いていた。
「神酒は、伝説にある。不老不死の霊薬にゃ」
「不老不死って、不死身になったのかオレ?」
「パパ、すげ〜」
「レイ様は、無敵ですね」
焦るオレに、アイカとココが目をキラキラさせてる尊敬の眼差しを向けていた。
「まぁ、人間には変わりないから、大丈夫だろ」
1人だけ、冷静だったウォル兄さんの言葉に、我にかえり、確かにそうだなと思った。
次に、会ったらその辺の事情を詳しく聞かないといけないな。
バンーー!
勢いよく、扉が開きレインが驚愕の表情で現れた。
「大変だ! 叢雲殿が瀕死の重体で現れた! 治療室にいる、急いで来てくれた!」
レインが何を言っているのかが、一瞬、わからなかった。
「龍之介殿が……わ、わかった、急ぐぞ!」
治療室に行くと片腕を無くし、服は血だらけで意識のない龍之介がいた。
「何が、何があったんですか龍之介殿! 貴方程の方が……」
「重体の患者さんなんです! お静かに!」
治療をするフェアリー達に、落ち着くように注意されひとまず部屋を出た。
「信じられない、あれ程の戦士が……」
呟くレインに、オレも同意見だった。龍之介が負ける事なんて想像できずにいた。
龍之介が、運び込まれて2、3時間たった頃にフェアリー達が、治療が終わったと教えてくれた。
「やぁ、すまないな、君達に知らせないといけないと思ってね」
片腕を失い、顔色が悪い状態で無理に明るくしようとしている龍之介がいた。
「一体、何があったんですか?」
「2日前に、聖域が襲われた。私の他に御使が3人いたが、ゴットアベンジャーのグレイトと共に来た仲間に魂ごと、殺された!」
「御使が4人いて……全滅?」
余りの事に、絶句するしかなかった。
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