第3部 第7話 聖域
レイ達は魔獣の大森林の入り口で朝ご飯を食べながら話をしていた。
「森に入らなければ何もして来ないんですね。レインとライチさんは、どうしたらいいと思いますか? 正直、反則的に強いですよ」
「武技が効かない、多分だけど魔法も効かないだろアイツ、お手上げだよ」
「まさか、あんなに強いなんて……アラクネ族の代表をして自分は強いと思っていましたが上には上がいるんですね……」
丸焼きの鳥を眺めながらレインとライチは肩を落とす。
「それに、彼等は何もやっていない……ただ、自分達の生活を守っているだけで比はこちらにあるし、はたから見たら、オレ達は完全に侵略者だしな……別に誰かが殺された訳でもないしな」
鳥肉の美味しそうな匂いがする中、話し合いは失敗し、気分は最悪だった。
「うーん、手ぶらで行ったからダメだったのかな。あっ、出来たんじゃない鳥肉!」
ココの何気ない言葉に衝撃を受けた。
「そうだよ! 最初からお土産を持って行ったら、分かりやすく敵じゃないとわかるじゃないか!」
少し興奮気味になったオレにレインやライチも続く。
「なるほど! 森で手に入らない物を持っていけば話だけでも聞いてくれるかも知れない」
「そうですね! 私達は聖域とやらに行きたい訳じゃないし。ただ、森での狩りを許可して欲しいだけだから、行けますよ!」
よくわからないテンションの3人をココと他のアラクネ達は、冷や汗を流しながら見ていた。心配した、近くにいたアラクネがココに話しかける。
「ココちゃん、大丈夫かな?」
「しょうがないよ。下手をしたら死んでたんだから……」
ココにも分かっていた。2度と龍之介と戦いたくはない……。安全な道を見つけて、緊張が柔らぎテンションが上がっていた。
「とりあえず、ご飯を食べてから彼等に渡す手土産を話し合おう」
「そうだね、まずは腹ごしらえからだ」
「腹が減っていたら、良い考えも浮かばない」
みんなで鳥肉を食べていると森の方から誰かやって来た。
「すみませんが、レイ・カトリック様はいらっしゃいますか?」
青い髪に大きな緑色瞳のドラゴニュートのメイドが訪ねて来た。鳥肉を隣にいたレインに渡し、口についた鳥の油を急いで拭く。
「私がレイ・カトリックです」
「はじめまして、私は龍之介様の筆頭補佐官をしています。リューネストと申します」
リューネストはスカート少し上げながらあいさつをする。緑色の竜の尻尾が見える。
「龍之介様からレイ・カトリック様に招待状をお持ちしました。昨日は、準備が出来ていなくお帰り頂きすまなかったと言っておりました」
「いえ、こちらこそ突然の来訪すみませんでした」
「我が主人に伝えます。つきましては本日の日暮にこちらに来て頂けると迎えを出しますのでお待ち下さい」
「わかりました。叢雲殿にお伺いしますとお伝えください」
招待状を受け取るとリューネストは挨拶をして森に帰って行った。
「まさか、招待されるとは……」
みんなで招待状を見ると1人まで同伴か許されていた。何故か、ココは必ず連れて来るようにと書かれていた。
「ココ? 何をしたんだ?」
「何もしてないよ、なんで招待されたんだろ?」
「とりあえず、急いでご飯を食べてからお土産と同伴を誰にするか決めよう」
そこからは、早かったハーピー達と連絡を取り、大森林で手に入らない物を用意してもらった。レインに同伴してもらう事も決まり。外交向けの正装2人分と様々な物のハーピー達に送ってもらった。
「これで準備はいいな」
「武器の携帯は大丈夫だろうか?」
「大丈夫です。招待状にも書いてありますから」
日暮とほぼ同時に、ランタンを持った黒い包帯に包まれた男が森の中から現れた。不思議な事に包帯男からはオーラが全く見えない。
「私は案内役を受けた、貴方がレイ・カトリックか?」
「私がレイ・カトリックです。同伴のレインとココです。そして、叢雲殿にコチラをお持ちしました」
2人は、包帯男に頭を下げると「わかった……」と短く言うとオレ達を囲み、地面に円を描き始める。何をしているんだろうかこの人は?
「準備ができた。今から行くがいいか?」
「良いですが、行かないんですか?」
包帯男が手をパンと叩くと一瞬で円の外が変わった。
「なんだ今のは、何が起きた?」
「安心しろ転移しただけた、ここが聖域だ」
そこには、巨大な屋敷に沢山のメイド達とリューネストがいた。
「お待ちしておりました。カトリック様では招待状を……」
「はい、あとコチラを叢雲殿にお渡し下さい」
招待状を渡し、お土産を見せるとメイド達が重いはずの荷物を軽々と運んで行く。よく見るとメイド全員がドラゴニュートだった。
「ありがとうございます。カトリック様、主人もお喜びになります」
「レイ君、後ろを見るんだ」
レインの声に振り向くとここが巨大な洞窟の中で、目の前には沢山の家が立ち並び小さな町が出来ていた。驚く事に家からは懐かしい電気の光が見える。
「なんなんだここは?」
「キラキラ光ってる」
震える声で絞り出すように呟くとリューネストが答えた。
「全ては、主人様が答えます。どうぞこちらへ」
屋敷の大きな門が開くと見事な調度品の数々と電気の光で屋敷の中は明るかった。
「ここにも電気が……」
かなり大きな屋敷のようで階段を上がると広い部屋に案内された。
「ようこそ! レイ君、君はカレーとハンバーガーとハンバーグのどれが好きかな?」
スーツ姿の龍之介が料理について質問してきた。突然の事に突発的に返答してしまう。
「え! じゃあ、ハンバーグでってあるのか? ハンバーグが!」
「あるよ。じゃあ、パンバーグにデミグラスソースを付け合せにポテトと、あっ! ライス派かなパン派かな?」
「ご飯まで!」
「聞く必要は無かったようだなライスを頼む。4人分だ」
驚いているオレ達を置いて、龍之介がリューネストに料理を頼む。
「改めて挨拶しよう。私は、叢雲 龍之介ここ聖域の守護者にして屋敷の主人だ。そして、今回の協定者になる」
気になる事はあったがそれぞれが挨拶をして話は続いた。
「昨晩はすまなかった。聞いていた予定と違った為に準備が整っていなかった」
「いえ、良いんですか予定?」
龍之介が何を言っているのかが、わからない。レインが龍之介に質問する。
「協定者とは何の事を言っているんだ?」
「レイ君が分かるはずだ……」
オレが分かると言われてもわからない。レインがオレを見るがわからない。
「え? 聞いてないのか? ゴットアベンジャーが魔素核兵器を使用した事で君の神と私の神が協定を結ばれた事は?」
「神同時の協定なんて知らないけど……」
「は〜、参ったな。どうりで予定より君が来るのが早いはずだ」
深いため息を吐く、龍之介に話せば話すだけ謎が深まるのを感じた。
「世界が今どんな状態か理解しているかい?」
わからないと理解して話を始めた。
「魔素核兵器のせいで世界から魔法が消える危機に世界があり、神同士の戦争になりかけている」
龍之介の言葉が頭に入るまで時間がかかった。
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