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甲にひどい傷跡のある手が、白い便箋を取り出した。
便箋には黒いインクで、細い誤字のない字が書かれていた。イグナシオは無表情にその手紙に目を通すと、一緒に包んであった本を開いた。本に前書きはなく、その代わりにこんな出だしがあった。
親愛なる双子の兄弟へ
黒い猫へ、赤い髪と緑の髪の二人へ、その恋人たちへ
聖なる人とそれを知る小さな友人へ
偉大なる科学者とそのこどもたちへ
リリアノーラへ、そのご家族へ
この世界は美しいですね
ハロウ・ストーム
イグナシオは暫く黙ってそのページを見つめていたが、やがてゆっくりと文字を追い始めた。
「牧師さま、お食事、どう、するの?」
「……こちらに来てください、ジョー。これを…」