(2)
P.Pとそのストックたちの部屋にはやはりロックがかかっていた。
ストライクは一応開けようと試みてみたものの、やっぱり鍵穴がなかった。レインが中にいるはずだと思ってドアを叩いてみたけれど、扉に耳をくっつけてみても中からはP.Pの2063号だかそんなのに記憶を送るポンという機械音しか聞こえなかった。
レインは眠らされているのかもしれない。
しつこくノックしていると例によってP.Pの3次元映像が軽い音と共に現れて、あからさまな軽蔑のまなざしでチップとストライクを見下ろした。
[何をしているんですか?]
「そういう顔をするとDr.A.Aとそっくりだな」
[Dr.A.Aとは身体を共有しているため、そっくりというよりは一致していると言うほうが正確です]
「なんでもいいけど。なあ、中に誰かいるんだろ?」
[あなたと遺伝子的に同一であるストレイン氏と私の約300体のストックがおります]
「もう一人いるだろう? イデンシテキに誰とも一緒じゃないやつが?」
P.Pはきゅっと片方のまゆをあげて口元を下げ、
[どうしてわかったんですか]と言った。
でも扉を開けてはくれなかった。