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(7)

 チップがP.Pを自分の前に座らせてアルフに電話を掛けていた。


 やっぱり変な光景だなあと思いながら、ストライクはそれをきしむ椅子に逆向きに腰掛けて、背もたれにひじをつきながら眺めていた。


「あと一週間? そんくらいしたら来てくれよ。ルーとスゥによろしく」


 ハロウは少し顔色がよくなって、ぱちぱちとまばたきをしていた。左の腕はがっちりと固定された上にひじから下が小さな水槽みたいなのに入れられて、水槽の中の手首は傷口が全開になったまま薄黄色い液の中でぶよぶよとふやけていた。

 ストライクはなるべくそのあたりを見ないように目をそらした。でもハロウ本人はそれを嫌がる様子でもなかった。自分でやったんだから文句も言えないのかもしれない。


「ストレインさんは?」


 ハロウが思いついたようにちょっとだけストライクのほうに顔を向けて言った。


「まだ眠っています」


 P.Pが答えた。レインはP.Pがごちゃごちゃっととにかく健康ではないとストライクに告げて以来、たくさんのP.Pのストックがいる部屋でP.Pのたくさんのストックと一緒に眠っていた。

 たまに起きているらしいがそういう時はたいていストライクたちがコンパートメントに閉じ込められているときなので、あの「聖なる柩」を持ってきた日から一度も顔を合わせていないことになる。どうもP.Pが双子の兄弟を合わせないことに決めているらしかった。


 今度会ったときにレインがクローンと入れ替わってたらやだな、とストライクはふと不安になった。


「傷は残らないと思いますよ。きれいな断面でしたし細胞も十分に増やしてありましたので無駄な時間がかかりませんでした。神経を現在培養していますがあと三日程度の治療で3ヶ月ほどのリハビリを受ければほぼ元通りに動かせるようになるでしょう」


 P.Pはきりっとした、14歳にしてはずいぶんと小生意気な顔で、一回漂白した後みたいな顔色のハロウに言った。


「すみません」

「そのうちやってみたいと思っていた培養ですからいい機会でした」


 P.Pはとてもいきいきとして見えた。本当にこういうことが好きなんだろう。


「こういった自傷行為は通常反復性が見られますがいかがですか? 可能性はありますか?」


 ハロウはあまりにはきはきとそう言われて「くにゃ」と苦笑いをした。


「予定はありません、今のところ」


 そして「みっともないなあ」とその表情のままで言った。


「ちゃんと死のうと思ったのに。すごく恥ずかしいです」

「でももうご予定はないんですよね?」


 P.Pが少しむっとした顔で確認した。


「もっといろんなところを切っていただいても構わないのですが」


 チップとストライクがその言いように思わず大笑いすると、ハロウもつられて右手を額に当て、歯を見せてにんまりと笑った。






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