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(2)

 とても静かだった。


 ストライクもチップも眠っているのだろうか。


 照明は落とされていた。P.Pが眠っているのかどうかは知らない。P.Pはちゃんと向かいの部屋に戻ってきて眠ることもあったし(眠っているのかはP.Pは部屋に入るなり壁を白く切り替えてしまうのでわからないけど)朝食でやっと顔を見ることもあった。検査室のほうで寝ているのかもしれない。


 ストレインさんは大丈夫なのかな。


 ハロウは足元の小さな明かりを一つだけつけて床にそのまま座り込んでいた。


 リリィのパンドラ・ボックスはあの時一度だけメッセージを語り、それ以来どうやっても息を吹き返さなかった。P.Pに見せてみたけれど、一度きりで磨耗してしまうような記録装置だったのだと断言されてしまい、話はそれで終わった。ハロウの旅も終わった。


 こんな時Dr.A.Aは一体どうしているんだろう。


 あの神々しいプールの中で、彼の唯一の「ちゃんと動く」臓器である脳みそで、毎晩考え事をしているのかなあ。あの人はどんなことを考えているんだろうか。僕には想像も付かない。


 足元の明かりは今ハロウの腰の辺りに弱くやさしくまるでイグナシオの教会にあった蓄光体のようにそっと灯り、ハロウの手に包まれたパンドラ・ボックスの輪郭を薄青く照らしていた。ハロウは諦めてそれをそっと自分のトランクに仕舞い、続いてトランクの中をかき回し始めた。


 何かあったかな。このトランクはたくさん物が入る代わりにどこに入れたのか何が入っているのかわからないから、僕自身どんなものがどこからでてくるのかさっぱりわからない。何かあればいいけど。


 トランクのゼンマイをまき、ねじを回しながらハロウはゆっくりとリリィのパンドラ・ボックスの中身を思い出した。


 一言一句覚えていられればよかったのに。P.Pに聞いたら記録が残っているかもしれない。


 でもそんな記録ももういらないな。


 やがてハロウの指は何か堅いものにふれた。ハロウには覚えのない感触だったのでためしに引っ張り出してみると、それは何か銀色の金属ででてきていてレザーの張ってあるスキットルで、キャップをひねるとその白い小部屋の中にスコッチの深くて上等な匂いが漂いだした。


 さて。








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