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なんちゃらハザード

 徴税官達を追い払った後、集落は大盛り上がりだった。よっぽど鬱憤が溜まってたんだろうね。

 けど、それも一時の話。時間が経つと、村人たちは段々と現状を把握するようになってきた。


「なあ、今更だけどよ、ちょっとまずかったんじゃねえかな……」


「だよな……」


「でもよ、あのまま徴税官の言いなりになってたら、また重税に苦しめられるんだぞ」


「そうそう。それによ、女神様は税の為に作物を育てないって御子様が言ってたじゃないか」


「しかしな……」


 村人達は現在、報復が怖い勢と、俺達は正しいことをした勢に分かれている。

 報復が怖いって言うのもわかる。


「なあモロウ、この後どうなると思う?」


 モロウさんは黙って成り行きを見守っていたけど、問いかけられた事で口を開いた。


「派兵が行われるだろうな。良くて鎮圧、悪くて村の取り潰し、と言ったところか」


「そんな……」


 村の取り潰しが意味する事を、村人達は理解している。要は一族郎党、皆殺しだと。

 鎮圧されたとしても、きっと碌でもない事になるだろうね。村が潰れても構わないくらいの更なる重税、村人の酷使あたりかな。想像に難くない。

 いずれにしろ、周囲の村への見せしめも含まれてるんだろう。


「今更うだうだ悩んだ所で状況が変わるわけでもない。戦うしかないだろう」


 きこり兼大工のヤークさんが落ち着き払った様子で言う。


「戦う覚悟を決めろ。それにだ、俺らが戦う事を決めたら、女神様は俺らの事を守ってくださるだろうよ。初めから女神様に期待しちまうのも、情けない話なんだがな……」


「俺は戦いますよ。女神様が味方をしてくれるんですから、何も問題ないでしょ。女神様って、頑張らないと助けてくれませんよーって言う割に、いつも右斜め上方向で助けてくれますからね」


 グルーレ君は事もなく、あっけらかんとした様子で言う。待て右斜め上方向ってどういうことかな? え、もふ鶏と温泉施設? あ、うん……。

 ともあれヤークさんとグルーレ君の後押しもあって、集落は再びやる気に満ち溢れてきた。


「やるぞ!」


「兵士を徴税官諸共ぶっ殺せ!」


「八裂きにしろ!」


「領主どもに死を!」


「裁きだ!」


 違った。殺る気だった。ガブルズさんを囲んだ時も思ったけど、この人達血の気が多過ぎる。バーサーカーかな?

 広場はわきにわいている。そんな中、モロウさんは変わらず冷静でいて、私に問いかけてきた。


「と、まあ、俺達は戦うと決めたわけだが。女神様は俺達を助けてくださるかね?」


「それはもう。女神様は敬虔な信徒達を祝福なさってますよ」


 みんなの殺る気は大変頼もしいけど、できれば血を見たくないなぁ。かと言って生温い対応をしたら舐められそうだから、完膚なきまでに叩き潰すしかない。中々に難しいオーダーだけど、奇跡があればやれるだろう。





 さて早速村の防備を固めよう、と思ったけど、その前にやる事がある。

 残る村人の移住だ。逃げ出した徴税官一行を脅したとは言え、楽観はできない。手を出される前に連れ出す必要があるだろう。幸い、相手の馬車は潰したし先回りは簡単だ。村長親子? 知らんな。

 時間は夜半。バビュッと空を飛んでたら、下に火の明かりが灯っていた。用を見るために降りてみたら、徴税官一行は途中で野宿していた。食料品とか全く持ってなくて、ぼんやり焚火だけ囲んでるの何でだろうって思ったけど、私が馬車を叩き潰してたんだったわ。てへぺろ。

 村まで急ごうかなーと思ったけど、これはあれじゃね、イタズラするチャンスじゃね?

 焚火を囲うように徴税官と護衛の二人が座って、残る二人の護衛は焚火に背を向けて見張りとして立っている。

 とりあえず徴税官の後ろに立って、一瞬実体化して彼の肩をトントン叩いた。


「なんだね」


 振り返った徴税官の後ろには、見張りの男が背を向けて立っているだけだ。私は透明なので見えていない。


「キミ、何か用かね」


「は?」


「今、肩を叩いたろう」


「いえ、私は何もしておりませんが」


「本当かね?」


 徴税官は、焚火を囲んでいた護衛二人にも確認するように尋ねる。


「はい」


「……わかった」


 怪訝そうな徴税官は、また焚火に視線を戻した。そこをすかさず私は肩トンする。

 徴税官も今度は素早く振り返るが、もちろんそこには背を向けた護衛しかいない。焚火を囲んでいる護衛は徴税官の一人芝居を見せつけられてる様な状況だ。護衛も訝っている。


「何者かがいるぞ」


 シリアスな表情で徴税官が宣うけど、周りとの温度差が激しい。


「何者か、とは」


「私が知るか! こういう時の護衛だろう! 早く動きたまえ!」


「しかし、何もおりませんが」


「私の肩を叩いた何かがいる!」


「はぁ」


 護衛達は渋々立ち上がるけど、やる気は全然なさそうだ。まあそれも当然だよね。自分の身に何も起きてないんだから、危機感があるわけない。

 護衛達が徴税官の周りに移動した所を見計らって、またしても肩トンした。


「またぁ!?」


 面白っ。けどそろそろ護衛の方々にも、危機感を共有してもらいますかね。

 今度は肩に限らず、無作為にみんなをトントンして駆け回った。

 みんな驚愕に目を見開いておるわ。ふひひ。


「な、なんだ!?」


「だから! 何者かがいると言っただろう!」


「アーリエン殿の周りを固めろ!」


 護衛達は驚きつつも、ブチ切れかかってる徴税官の周りを護る様に固まった。さすが腐っても護衛といった所かな?

 それじゃぁまあ、空からお邪魔しますかね。上からくるぞ気をつけろ!

 そんなわけで、徴税官の頭をぺたりと触った。


「上っ!?」


 徴税官の声に合わせてみんな上を向くけど、もちろんそこには誰もいない。


「暗殺者か……?」


 いいえ、女神です。私が暗殺者だったら、みんなとっくに死んでるぜ?


「姿を見せろっ!」


 嫌です。あー、けど飽きてきたし、そろそろお終いにしようかなぁ。

 どうケリをつけるのがいいかな。このまま放置して警戒心だけ植え付けるのもいいけど……そうだ。ちょっと怖がってもらおうかな。ほいさー!


『……レ』


「ん、何か言ったか?」


「いえ、私達は何も」


『コ……ラ……サレ』


「何か声が聞こえます!」


『ココカラ……タチサレ……』


 明確に聞こえ始めた声に、徴税官一行の身が強張った。


『タチサレ……タチサレ……』


「な、なんの真似だ!」


「ふざけた真似をしやがって……いい加減、姿を表せ!」


 なるほど、その手があったか。声だけだとあんまり怖がらせられない様だし、その案、採用しますね。ほいさー!


「……おい、何か聞こえないか」


「今度は何だってんだ」


 おーけー説明しよう! 今度は遠くからめっちゃたくさんの足音を聞かせる奇跡と、めっちゃたくさんのゾンビの幻影を見せる奇跡だ!

 つまりめっちゃ怖い!

 遠くから聞こえる多数の足音に、護衛達は一層警戒を強くする。


「……これはまずい」


 もしもの時、四人の護衛だけでは処理できないくらいの物量が押し寄せている。そんな想像が容易にできるくらいの足音が、彼らに近づいているのだ。


「ど、どうするのだ!?」


「決まってます。逃げるんですよ! さあ走って!」


 と言うと、彼らは駆け出した。

 え、待って! まだゾンビ君達の勇姿を見せつけてないんだよ!?

 ゆけ! ゾンビ君達! 君達の一世一代の活躍を見せつけるのだ!

 ゾンビ君達の幻影を、陸上選手並みの綺麗なフォームで走らせる。足音も走っている時のそれを忠実に再現!

 後ろから迫る足音に、徴税官一行は背後を少し振り返り、絶叫を上げた。


「ぎゃああああああっ!?」


「し、屍が走ってる!」


「に、逃げろ!」


「神よ! お助けください!」


 いいリアクションだ。そんで少しだけ信仰の力が入ったっぽい。狙ったわけじゃないけど何というマッチポンプ。これは今後、使えるかもしれない。外道? 使える手はなんでも使うのさ(ゲス顔)。

 その後しばらく、ゾンビ君達は徴税官一行を、恐怖を煽る絶妙な距離感で村から遠ざける様に追いかけ回した。

 いい時間稼ぎになった。

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