テンプレート真っ白不思議空間
※亀更新
※変なノリ
勢いで始めてしまいました。よろしくお願いします。
目が覚めたら、上も下もわからない一面真っ白の不思議空間の中で、
「おめでとうございます。厳正なる審査の結果、あなたは管理番号FK10841169世界の地方土着神に選定されました」
と、目の前の老紳士がいきなり宣った。
寝起き特有のぼんやりした思考回路を私は必死に働かせる。というか、全く頭の中に言葉が入ってこなかった。……もう一度おねがいします
「おめでとうございます。厳正なる審査の結果、あなたは管理番号FK10841169世界の地方土着神に選定されました。」
ご丁寧にどうも。
「どういたしまして」
この人マジ紳士。だけどすみません。ぶっちゃけ、まだ頭がはっきりしてこない。
「あなた様は土着神として目覚められたばかりなので、致し方ないことかと」
なるほど、そういうものなのかな。
さて、老紳士曰く私は管理番号がうんちゃらかんちゃらの土着神となるようだけど、一体何をどうすればいいのだろう。
「あなた様には管理番号FK10841169で、あなた様が管理する地に住まう人々の信仰の対象となり、信仰を集めて頂きます」
ふむふむ。信仰を集めると。わからん。信仰を集めて何になるんだ。
「信仰を集めて奇跡を行使することで、あなた様にはその土地を管理して頂きたいのです」
ほうほう奇跡とな! 楽しそうだけど何ができるんだろ。
「奇跡の行使には、人々の信仰の力が必要となります。行使する奇跡の内容により、信仰の力をどれだけ消費するかが決定されます。そして奇跡ですが、ある程度の制限は掛かりますが、凡そのことは可能です」
素晴らしい。信仰の力を集めれば、漫画アニメ見放題のゲームにインターネットし放題で自堕落な生活が送り放題と、そういうことですな?
そういうことなら、土着神になるのも吝かではない。
というか老紳士さん、さっきから私の思考を読んでますね?
とか考えてたら、老紳士さんは右手を胸に当て、それは立派なお辞儀をしてくださった。下手なこと考えられないなこれ。
因みに、お断りするとどうなります?
「あなた様には通常通り、輪廻転生の輪に戻って頂きます」
どうやら重いペナルティを課されることはなさそうなので一安心である。この話を全面的に信じるなら、だけど。
まあそんな酷いことに遭わされるとして、私にはどうしようもないんだけれど。
正味なところ、この不思議空間を作り出すような超常的な存在からしたら、私の存在なんか取るに足らないものだろうからね。
こんなことを聞いておいてなんですが、実の所お断りする気なんてさらさらなくて、面白そうなので頭下げてでもお受けしたいです。
「ありがとうございます。それではこちらを」
老紳士は懐に手を突っ込むと、一枚のカードを取り出した。それを床、床? 床で合ってるのかな。一面真っ白だしよく分からない場所に置いた。
すると、カードから人が飛び出てきた。なんぞこれ。
「キャラクタークリエイトでございます。これで土着神であるあなた様のお姿を作成致します」
身もふたもないなぁおい!
いやこういうの大好きですけど!!
しかし、今気が付いたんだけど、私、手も足も無いし、どういう状態なんだ。
「いわゆる魂と呼ばれる状態でございます」
大変わかりやすい回答で助かります。
ついでに言うと、私っていうパーソナルな存在の記憶が一部欠如している。サブカルが好きだったーとか日本生まれだったーとかは覚えてるんだけど、名前とか家族構成とか、どんな学校に通ってどんな友達がいてどんな仕事に就いたかとかが抜けている。
「それは、あなた様の神格を形成する際に、記憶として負の情報を保持していると不具合を生じやすく、又、神としての活動に悪影響を与える恐れが強いため、意図的に排除しております」
なるほど?
よくわからんけど、例えば、私が超絶トラウマ級の体験をして超絶ネガティブ土着神になったら、土着神としての行動に悪影響を及ぼす、とか?
「概ねその通りでございます」
神様がお気楽でパッパラパーな性格だったらどうすんのよ、とか思ったけど、そこは厳正なる審査とやらで弾いてるんだろうね。だよね? 私はパッパラパーじゃないよね?
それはさておき、早速キャラクリ始めますか。
で、どうやっていじるの、これ?
「こちらをご利用ください」
そして渡されたとあるコンシューマー機のコントローラー。手、ないんだけど持ててる。不思議。
試しにスタートボタンを押すと(押せた、不思議)、カードから出てきた人の横の宙空にタブとバーが何本も出てきた。性別とか身長とか体型とか顔とかのタブがあって、顔のタブを選択するとタブの詳細、輪郭とか鼻の形とか高さとかを調整するためのバーが出てくる。顔の一部の鼻だけでも沢山の項目がある。
これは燃える。折角だしめっちゃ美人に作りたい。
コントローラーを手に、私は気合を入れた。手は無いけど。
体感で5時間ほど経った頃、プラチナブロンドゆるふわヘアーナイスバディな私の体が完成した。
タブもそうだし各種項目も多いしでめっちゃ時間かかった。
それにね、もうね、途中で美しいってなんだっけってなった。キャラ作ってる最中って、段々とそのキャラに見慣れてきて美しいんだか美しくないんだかってなって、所謂ゲシュタルト崩壊的な感覚に陥りやすい気がするんだ。わかれ。
これでどうよ?
5時間もあーでもないこーでもないやってる横で、老紳士はニコニコしながらずっと私のキャラクリを見ていた。なんか私の理想像を見られてる恥ずかしさやらなんやらあったけど、開き直ってキャラの美醜について相談した甲斐があって大分こなれた感じに話すことができるようになった。馴れ馴れしいって? それが私の持ち味だ。
「大変お美しいですよ」
やったぜ、老紳士のお墨付きだ。それじゃ、これで決定とスタートボタンを押す。
のわああああああ!?
ボタン押したら前兆もなしに、凄い勢いで私の体(魂の方)が私の体(キャラクリした方)にぶっ飛んでいった。もうわかんねぇなこれ。
魂が体にぶつかったと思いきや、私はキャラクリした体に入り込んだようで、手も足も動かせていた。
ていうかよくよく考えたらすっぽんぽんに近い。キャラクリの都合で半裸に剥いてたんだった。今更ながらに恥ずかしい。
「こちらをどうぞ」
そう言って老紳士はトーガと呼ばれる衣服を差し出した。いや、どうやって着るねんて、これ。
「あなた様は既に奇跡を行使できる身となっているのですよ」
なるほど。ということは、トーガを自動的に着用する奇跡を行使すればいいということか。
「そのとおりでございます」
差し出されたトーガに手を当てる。どうやったら奇跡が行使できるか、なんとなくわかる。こう、ほいさーって感じ(語彙力)。
そうするとあら不思議、私の体がトーガに包まれましたとさ。というか初めての奇跡が衣服の着用ってどうなのよ?
「大変お似合いですよ」
ありがとう、老紳士。
ところで、この後はどうすれば?
「辞令が交付されますと、任地へと自動的に転移致します。そこで現地民と交流を図ります」
そしてありがたい神として信仰されるように、奇跡の力を行使していくと。
「そのとおりでございます」
よし、善は急げだ。辞令ちょーだいな。
「それでは……神事規定1081条第三項の規定に基づき、管理番号FK10841169における第一級土着神に任ずる」
ありがとう老紳士。和紙みたいな立派な紙で作られた辞令を恭しく受け取りつつお礼を言うと、老紳士はにこやかに笑みを返してくれた。うーん、紳士。
「それでは、あなた様のご活躍をお祈り申し上げます」
老紳士がまたもや胸に手を当てお辞儀をしてくる。すると、体に力が漲ってきた。恐らくこれが、信仰の力というやつなんだろう。餞別かな。
改めてありがとう、老紳士。
「どういたしまして」
ところで、私が行く場所ってどこ?
日本なら嬉しいけど、インターネットとゲームができて漫画とアニメが見れればどこでもいいよ、仕事も楽しそうだし。あ、けど海外勤務だと英語とか話せないしどうしよう?
「それではいってらっしゃいませ」
あれ、老紳士が質問に答えてくれない。老紳士らしからぬ対応、一体どうした。おーい?
とか考えてたら視界が暗転してきた。にこやかな老紳士の顔が暗闇の向こう側に消えていく。
というわけで、土着の女神、はじめました。
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