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勇者パーティーから追い出され、雷に撃たれたら貞操がおかしい世界に来たんだけど!?  作者: 七夕飾梨
第1章 1.つまり、女性が変態な世界
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第05話 頭のおかしい世界だという事は理解しました

 つまり、この世界は前までの異世界とは、また違う異世界。


(だ、だから聞いたじゃないですかぁ~。『元の世界に帰りたければ今なら返せますよ?』って~)


 元の世界って、そっちかぁぁぁぁああ。

 膝をついて、顔を抑える。


(そ、その、本当に最初は能力だけを授ける予定だったんですよ? でもですね……その世界の南野柏木は元の、自分の生まれた世界に帰還する事を願ったんですよ)


 この世界の僕が……つまり、僕は元々居た僕の穴埋めですか?


(そうですね。世界を支配している者を倒せる可能性があるのは南野柏木だけなので)


 それなら、元々居た僕を元の世界に返さなきゃ良かったんじゃ……。


(それは……盟約で禁じられているんです。この世界の神は私ですが、あなた方の世界の神は別に居ます。その神との盟約で【同意なしの世界間の移動を禁ず】【世界から呼び出した者が帰還を願った場合、出来る限り帰還させる】と決まっているんです)


 なるほど……。

 それで、詐欺紛いの事をして僕をこの世界に連れてきたんですね。


(うっ! そう本当の事を言われると神様心が痛いです……)


 しかも、元の世界への帰還は出来るけど、この世界も前の異世界もあなたの世界……盟約外、だから僕をこの世界に縛る事ができると……。


(あははー、私って完全に悪役ポジションですね!)


 笑い話じゃありませんよ!!

 僕は、前の異世界の才徒君達に恩を返したいんです!!

 こうしている間にも、前の世界の才徒君達が危ない目に合っているかもしれない!


(……大丈夫ですよ。その世界を救ってくだされば、すぐに前の世界に戻します。それに、前の世界のあなたが家を出た直後に戻してさし上げます)


 ……そんな事が可能なんですか?


(もちろんです! 本来はしてはいけませんが、世界を救ってくれた者の願いは全て聞かなければいけないので、そこであなたが願いさえすれば)


 そうか……良かった。それなら、才徒君達を助けられる。

 それに、この世界の才徒君達も僕を助けてくれたみたいだし、居なくなった僕に代わって助けないと。


(あれだけの事を言われて、それでも助けるですか……)


 ん、何か言いましたか?

 すみません。考え事をしていて聞き逃してしまいました。


(いえ、なんでもありませんよ。それでは、私と話せるのはここまでです。説明しなければいけない事は全て説明し終えたので……次は本当に世界を救った後で)


 そうですか。

 それじゃあ、最後に一つだけ――



「――ありがとうございました」



 なんか、騙されたりしたけど、神様が居なければ僕が力に気づく事もなかった。

 才徒君達を助けられる力を手に入れる事は出来なかった。

 世界を救う事なんか考えられなかった。


 だから、感謝の言葉だけは声に出して、頭を下げて伝えた。



「――こちらこそ、ありがとうございます」



 その声は、先程までの頭に響く者と違って、耳元で聞こえた気がした。

 感謝の言葉が聞こえた後、もう神様の声は聞こえなくなった。


 さて、次はこれからの事を考えなくちゃ。

 もちろん最終的な目的は元の世界に帰って才徒君達を助ける事だけど。

 まずは目先のこの世界について理解する事だえろう。


 それを理解するには、この世界の住人と話すのが手っ取り早い。

 幸いな事に、この世界の僕は前の世界ほど周りから嫌われてたり、疎外されてはいない。

 話を聞けば、少しくらい返してくれるだろう。


 そうと決まれば、僕はすぐに着替えを終わらせて足早に夏風さん達がいるであろうリビングに行く。

 リビングへ行くと夏風さん三つあるソファの一つに腰かけていた。


「ん、もう着替え終わったの? それじゃ、さっきの事を説明……し、て…………」


 夏風さんが僕に気づいて振り向いた瞬間、目を見開いて驚いた。

 え、な、何? 僕、ちゃんと着替えてきたよ?


「な、なんつううう恰好してるのよおおお!!! なんで下着も付けずに薄着なんか着てるのよ!! スケスケで丸見えじゃない!!」


「スケスケで丸見えって……いつもこんな服じゃなかったけ?」


「いや、いつもはもっとガードの硬い服着てたじゃない!! それに、私達を軽蔑したような眼で見てきたじゃない!」


 なるほど……さっきの反応から何となく予想していたけど、この世界では僕と彼女達の立ち位置が逆なのかな?

 つまり、男性が肌を隠すのが当たり前の世界……あれ、それだったら僕の恰好ってセクハラなんじゃ?


 冷や汗が流れる。いやいや、いくら何でも服が透けたくらいで……。


『お前、それパンツでも同じ事言えんの?』


 頭の中でそんな声が響く……。


「そ、その、そうだよね! 僕の肌なんか見えて気持ち悪いよね!!」


「むしろ眼福……はっ! ち、違うわ!! 今のは違うの!! あんたの肌とかどうでもいいのよ!!」


 す、凄い鼻血……それくらい怒っているって事なのかな。

 でも、最初に眼福って……眼福っていい物を見れたって事だよね。

 それに、鼻血って興奮したら出るとか出ないとか……。


 もしかして……。


 もし、僕の予想が正しければ――


「そ、そんな、どうでもいいなんて酷い!! そこまで言うなら裸になってやる!!!」


 言ってる事は完全に変態だ。

 僕は上着の裾を握って、思い切って持ち上げた。

 ごめんなさい。違うんです。セクハラとかじゃなくて検証なんです。

 誰にも聞こえないけど、心の中で謝りながら言い訳をする。


「――ちょ、あんたっ!! や、やめなさい!!!」


 先程までとは桁違いの出血量。

 うわ、水溜まりみたいだ。

 それに、夏風さんの顔の赤みも増した。

 やめなさいと言っている割に、全然本気で止めようとしないし。


「分かった。じゃあ、やめるね」


「え、あ……」


 僕は胸元くらいまで上げた服を戻す。

 夏風さんは少しがっかりしたような表情だ。

 これで、なんとなくだけど、この世界がどんな世界か理解できた。


「全く……男が簡単に肌を見せるんじゃないわよ……」


 この世界は、【男性と女性の価値観が入れ替わった世界】だ。

 女性は男の人の肌に興奮して、男性はそんな女性を軽蔑する。

 そんな、男女の価値観があべこべな世界。貞操が逆転してしまった世界。


「あたしは少しトイレに行ってくっ――!!」


 踵を返してトイレに向かおうとした夏風さんは、自分の鼻血で出来た水溜まりに足を取られて、こちらに倒れてしまう。

 ちょ、まっ!!


 バタッ。


 という音と共に夏風さんに押し倒される。

 いつつ、自分の鼻血に足を取られるなんて間抜けな……。


「な、なななななっ!!」


「な、夏風さん?」


「お、男の人のおみゅね……きゅぅ」


 夏風さんは僕の胸で気を失ってしまった。

 ……いくら、貞操が逆転していたとしても、こうはならないだろう。

 胸に飛び込んでしまったくらいで気を失うなんて……。


「神様、この世界の事はまだ全然理解していませんが……」


 空を見上げて、先程別れを告げた神様に向かって語り掛ける。


「――頭のおかしい世界だという事は理解しました」

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