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第02話 え、また転移ですか……

「――あなたは落雷に撃たれ死んでしまいました」


 何を言っているんだこの綺麗な人……。

 目を覚ますと、目の前に金色の綺麗な髪のお姉さんが居た。


「いやん、綺麗だなんて素直な方」


 無表情で恥ずかしがるという器用な事をする女性。

 真っ白な空間、なぜか喋る事ができない。

 目の前の美人は俺が喋ってなくても思っている事が通じているようだ。


「はい、心読めるので」


 とんでもない展開のはずなのに焦りを感じない。

 目が覚めたら、喋れなくなって知らない空間で、美人さんと対面なんて流石の僕でも取り乱すとおもうんだけど。


「騒がれると面倒なので感情を制限してます」


 誘拐犯みたいなことをいう美人さん。

 それにしても、目の前の美人さん初対面なのに、なんだか初めて会う気がしない。


「はい、私達は一度会っていますよ」


 それはおかしい。もし、こんな美人さんに会っていたのなら忘れる訳ない。


「一度目は記憶を消去させて頂きましたからね。しかし、そんなに褒めても【特典】くらいしか出せませんよ?」


 特典ってなに……。

 それに、今更だけどここはどこなんだ? あなただれ?


「特典とはあなた方が持っている能力の事ですよ。南野柏木は【全属性魔法成長異常】の能力でしたよね? そして、ここは天界です。神々が住まう世界なので私も神様です」


 とんでもない情報量がぶち込まれた。

 え、僕の能力って【全属性の中級魔法を使える】じゃなかったですけ?

 それに神様って……確かに女神級に美しいですが……。


「女神級ではなく女神です。全属性中級魔法? なんでわざわざ貴重な転移者に【そんな程度の能力】を付与すると思ったんですか?」


 そんな程度!?

 こ、心が痛い。これまでこの力で頑張って来たのに……。

 全否定された気分……。

 それに、俺の能力が【その程度】な理由って、それは俺が【巻き込まれて】転移したからですよね。


「そうです! そこなんです! 本来あなたは巻き込まれての転移ではなく、【勇者】として転移するはずでした」


 ――はへ?


「そうです! そこなんです! 本来あなたは巻き込まれての転移ではなく、【勇者】として転移するはずでした」


 いや、聞こえなかったわけではなくてですね。

 え、勇者って才徒の事ですよね?


「ん? 才徒さんって魔法使いの方ですよね」


 え、魔法使いって燈火さんですよね?


「ん? 燈火さんって魔導士の方ですよね」


 え、魔導士って美空さんですよね?


「ん? 美空さんって回復士の方ですよね」


 ……。


「ん? 夏風さんって拳闘士の方ですよね」


 いや、夏風さんについては何も言ってないです。


 そんな……じゃあ、俺は【勇者】なのに皆の足を引っ張って、無能だと思い込んであんな酷い事を……。


「いえ、あの状態でのあなたは無能でしたよ? だって、契約書にサインし忘れて行っちゃったんですもん。全属性の中級魔法を使えたのはただの才能ですね」


 ……驚けないのも困る。

 凄く叫びたい気分なのに、気持ちは落ち着いている。

 不思議な感覚だ。


「ほら、ここです。【以上の条件に同意し、私は勇者として世界を救います】って所にチェックマークが! これ、チェックマークじゃなくてサインしないと駄目なんですよ」


 一枚の紙を見せてくる神様。

 ホントだ。一番上に小さく【同意したら名前を記入してください】って書いてる。

 あはは、異世界転移ってしっかりしてるんだなぁ。


「という訳で一度あなたを呼び戻して、サインしに来てもらいました。丁度雨で悪天候だったので雷で一発です」


 神様の前だと命が軽すぎて怖い。


「あはは、別に軽くないですよ。ただ、定められた寿命が尽きなければ何回殺しても死なないので殺し放題なだけです」


 殺しがゲシュタルト崩壊しそうです。


 まぁ……つまり、神様は契約書を書き直させるために呼んだという事なんですね。


「イエス! という訳でちゃちゃっと書いちゃってください。あ、一応言っておきます。元の世界に帰りたければ今なら返せますよ? 私達が凄く困りますけど」


 元の世界……。魅力的だ。

 もし、僕が才徒君に助けられてなかったら帰っていたかもしれない。

 もし、僕が恩を返せていれば帰っていたかもしれない。

 もし、僕と彼の別れ方があんなじゃなかったら帰っていたかもしれない。


 でも……僕はまだ何一つも恩を返せていない。

 謝れていない。


 だから、僕は迷わずサインする。


「……ふふっ、やっぱり勇者ですね」


 ん? 何か言いましたか?


 サインを書き終わって神様に渡す。

 なんでか、先程まで無表情だったのに少しだけ微笑んでいる。

 僕がサインしたのがそんなに嬉しかったのだろうか。

 帰られると困るって言っていたし……。


「いえ、何も……。では、あの世界に戻しますね。今回は特別に記憶を残しておきます」


 はい。

 あ、今度殺すときは前もって言っててくださいね。


「ふふ、それはどうしましょう。それでは――」


 はい、次会うのは世界を救った時にでも……。


「どうか、あなたのこれからに幸多からんことを――」




 こうして僕は、二度目の異世界転移をした。

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