その笑顔、守りたい。
家に帰ってまいりました。早くまりもの店について話がしたくて仕方がない。玄関の扉を開けそそくさと階段を上がりノックした。
「ノエルさん、しゃべりたいことがあるんだけどいいかな?」
俺は昨日やってしまったことを心配していたが大丈夫のようだ。扉の隙間から顔を出すノエル。そして俺にはなった言葉は、
「は?なんで帰ってきたの?もうここに帰ってこないでよこの変態。死んじゃえばよかったのに・・・」
やっぱ大丈夫じゃなかった。俺のメンタルは一気に削られた。
「昨日の仕返しだよ!冗談だからね!あ、あれ?どうしたの?おーい!!」
今の俺の顔はどうなっているんだろうか。鏡があれば見てみたい。
「ご、ごめん、そこまで傷つくなんて思わなかった・・・」
あ、やっと耳に入ってきた。冗談だったのか、この空気をどうかしなければ俺の天国な生活が地獄へと変貌してしまう。
「はっはっはっ!俺の今までの演技どうだった!!?」
「な、なんだ演技だったのね!やられた!」
危ない危ない・・・この修羅場をなんとか乗り越えることができた。
~朝食~
ここにきて初めての朝食である、パンと・・・パンとパンとパン。
「パンしかねぇじゃねぇかよおい!」
思わず大声を出してしまった。ノエルと俺以外みんな寝ているのに。
「うるさいわね。仕方がないわよ、私料理できないし、それにお母さんとお父さんは夜仕事だから昼間はずっと寝てるのよ」
まさかノエルが料理できないとは、これは前代未聞だぞ。
「しょうがないな、俺が料理を作ってやるよ」
「え!?いいの!?んじゃなんか作ってよ!」
ノエルの手料理が食いたかったができないのなら仕方がないもんな。
「なんか使っていい食材とかある?」
「え~っとね~、これかしらね」
ノエルが手に持ったもの、それは卵である。
「まさか卵だけですか?」
ノエルはうなずいた。
「ここは酒場だか食べ物あんまりは使っちゃいけないのよ。調味料は大丈夫だから安心して」
そういわれてもなぁ・・・あ、いいこと思いついた。
「もういいぞ。火をつけて」
「いいの?卵だけだけど」
俺はうなずいた。
「分かった。じゃあ火つけるわよ」
この世界はIHというものがないから色々とめんどくさい。火を自分でつけなきゃならないし水は井戸まで行って汲にいかなきゃならない。だが田舎って感じがしてこれもまたいいような気がする。
「着いたから後は任せるわね」
「ありがとう」
さあてと、料理を始めますか。
「完成!」
できたもの、それはただの目玉焼き。パンと一緒に食ってもいいしご飯と一緒に食ってもいい。黄身はもちろんトロトロだ。
「ね、ねえこれってさ・・・何?」
何と聞かれましても、
「これは目玉焼きだよ」
「は・・・」
料理が得意とは一言もいってないし、なにか文句言われても普通に言い返せるから大丈夫。とかクズみたいな考えをしていた。
「え、なにこれ!?初めてみた!!こんなうまそうな料理食えるなんて!!」
初めてだと?この目玉焼きが?」
「それ本気で言ってんの?」
「うん!本気だよ!早く食いたい!!」
なんと可愛い笑顔なんだ。守ってあげたい。
「早く席座ってよ!じゃないと冷めちゃうでしょ!」
俺のことを待ってくれる優しさ。最高すぎます。
「はいはい。今座りますよ」
喜び方がまた子供らしい。
「いただきま~す!」
「うますぎた!ごちしょうさま!」
【ごちそうさま】じゃなくて【ごちしょうさま】って、噛んじゃってる。
「そんな喜んでもらえるとは思わなかったからうれしいよ」
ちょっとカッコつけた感じで言ってみたが気持ち悪い。
「今度もまた作ってよ!」
そんなことを言われるとは思わなかった。ちょっとだけ照れた。
「いつでも作ってやるぞ!」
なんか今日は色々とできそうな気がするぞ。
「ところでさ、気になってたんだけど蓮ってどこの国から来たの?」
おっとここでハードな質問だ。日本と言って信じてもらえるか。
「日本ってとこに住んでるんだよ」
「へ~初めて聞いたけど、そこってどんな国なの?」
信じてくれたのかな・・・?どんな国ね。
「色々な特徴があってね。サムライっていう剣を持ってる人もいれば忍びっていうスパイ的存在の人たちがいたりするんだ」
こんなもんで大丈夫かな?
「なんかすっごく面白い国だね。行ってみたくなっちゃった」
「んじゃ連れてってあげるよ」
そんなことできないはずなのに言ってしまった。
「え?本当に?」
もうこれは巻き返せない。
「うん!いつかは必ず連れてってあげるよ!」
やってしまった!!
「わかった!いつかは絶対連れてってね!」
どうせあれだろ。約束したけどどうせ忘れちゃうだろ。
「楽しみに待ってるね」
その笑顔守りたい(本日二回目)
「あとさあとさ、蓮にも家族っているんでしょ?どんな性格なのか教えてよ!」
「俺の家族か・・・」
眠い