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恋屋  作者: 人見絢音
1/1

開店─出会いと依頼─

初めての作品です。拙い文章と子どもっぽいストーリーで申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

高校二年生くらいだろうか、女の子が歩いている。

制服姿で、けして動きやすい格好とはいえない。事実ミルク色の濃い霧に視界を遮られ、何度も木の根に足を取られている。が、進み続ける。


彼女は、きっと覚悟がある……。


そう判断した私は、水晶玉から目をそらして準備をする。

テーブルには黒いレースのテーブルクロスを。いすを向かい合わせるようにセット。いずれも、アンティーク調のものだ。

突然ドアが開いて、女の子が恐る恐る顔をのぞかせる。

「ようこそ、恋屋へ。私はこの店の主人──美墨レイラ。以後、お見知り置きを。」

優雅に礼をし、客人にいすを勧める。

「少し、待っていてください。」

カチコチに緊張している彼女に、お茶を入れることにする。

キッチンで茶葉を漁る。

うん、そんなに高い茶葉でなくてもいいな。とりあえず、いつも通りを連想させる方が落ち着く筈。

温かいミルクティーとスコーンを盆に乗せて運ぶ。

「どうぞ。落ち着いたらお話ししてください。」

カップを両手で包み込むようにしていた彼女は、やがてポツリポツリと話し始めた。

「……わたし、高橋麻衣といいます。相談に乗っていただけますか?ここは『恋屋』というお店で、恋のお手伝いをしてくれるんですよね?店主さんにお手伝いしてもらえば、百パーセント恋がかなうって聞きました。」

ここで一つ、確認しなければならない。

「──恋屋では、恋の手助けをする代わりに『お礼』をいただいております。それは、あなた様の清い心。契約を、結ばれますか?」

途端に曇る、麻衣さんの顔。

「手助けして貰ったら、わたしは清い心を失ってしまうのですか?」

「いえ、頂くのはほんの一部。誰かから完全に清い心を抜き取るなんて、そんな事しませんわ。」

ずっと険しい表情をしていた顔が、幼さの残るティーンエンジャーにもどる。

「契約を結びます。」

「ありがとうございます。どうぞ、なんなりとお申し付けください。」

 再び礼をすると、麻衣さんが語り始めた。


私は、幼なじみがいます。ソイツを意識し始めたのは三年程前ですが、意識する程素直になれなくて。前は休み時間だとか結構一緒にいたのに、今はほとんどしゃべりません。

その幼なじみ──大地は、癖っ毛と猫目で人気が高くて。地味な私とは、ほど遠い存在になっちゃって。よけいに話しかけづらいんです。

でも、部活のサッカーをしているところなんかみると、諦めるなんて絶対無理って思うんです。

大学入試直前ということもあって、今のうちに告白してしまおうという人が多くて。とられてしまいそうで不安なのです。

たとえば、かわいい顔をした二組の前川さん。あの人も大地狙いらしく。前川さん、サッカー部のマネージャーなので、仲良くなるチャンスはいくらでもあるんです。

前川さんが諦めたとしても、さっきもいったようにたくさん大地狙いの人はいます。だからフられたっていいんです。告白だけはしておきたいんです。

でも、大地狙いの人達の中には、不良少女……ギャル?性格のきつい子たちもいて。告白したら、生意気だとか言われていじめられるかもしれないって……そういう不安もあるんです。

それに、ウワサってあっという間に広がります。もしかしたら……成功したらいいんですが、フられたらウワサが広まって居心地が悪くなりそうで……。

意気地がないのは、自分でも解っています。だから、レイラさん。私に、勇気をください!


ふー……ん。

ミルクティーをすすりながら、話し終えた麻衣さんを観察する。俯いてはいるが、強い意志を宿した表情をしていた。

見たところ、彼女の外見はそう悪くない。化粧っけはなく控え目だが、目がキレイだ。鼻や口も大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい。

つまり彼女は、自分に自信がないのだ。 

──人間だった頃の私によく似ている……。

昔の私と麻衣さんが似ているとすれば──いい品がある。

「麻衣さん……、あなたは自信が無いんです。だから、これを……。勇気が欲しいときは、これを飲んでください。」

私が差し出したのは、小さな袋。中には燃えるような紅の粉。

「この粉は、世にも不思議な勇気のでる粉。どうぞお使いください。効果が出た暁には、こちらからお礼を頂に行きます。」

麻衣さんが急いで立ち上がる。手にはしっかり袋を握り締めている。

「ありがとうございます!ありがとうございます……!」

私は、三度礼をした。

「御利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております──。」


数日後。麻衣さんの通う高校の屋上にいた。

「大地、突然でごめんなさい。……好きです、こんな私だけど──付き合ってください!!」

数秒の沈黙──。

「おれも、ずっと前から麻衣のこと好きだったよ。」


こうして麻衣さんは恋を成就させ、私は夕焼け色に染まった二人の頬をみてから、無事お礼を回収した。


 


















なんか書き終えてみると、どっと疲れます……。

次回は天使を登場させるつもりです。更新は不定期になりそうです。

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