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伝えられたもの

僕はね、この世界で起こるイレギュラーを集めているんだ。そしてその最大のイレギュラーと成りうるのが君なんだよ…ディアナ。



「この世界を支配している力に対抗する必要がある。ゲームの世界をゲームの世界として構成している力を削ぎたいんだ。僕にはそれができるんだ。それは君が運命から外れる為にも必要なことだよ」


(…支配している力…?)


「そうだね。例えば、どうしてエルディスがイレギュラーを引き起こせたと思う?」


(…ゲームの世界だとは知っていたという。じゃあ…何が…?)


「よく考えてごらん、記憶を探ってごらん。

エルディス王子は、婚約者とどんな関係だった…?君の記憶に残らないくらい希薄な関係だったはずだ。まあ、テラスでお熱いシーンを披露するような展開は無いね~。そう。所詮は脇役。ヒロインの当て馬だ。」


(そうだ…ヒロインに奪われるって役柄だ…でも…)


なんだか、胸がざわつく。何か重要なことを思い出せてないような気がする。

気が付くとエルディスの服を握っていた。その手をエルディスがそっと包み込む。心地よい温かさが伝わる。


「まあ、行動だけじゃないんだけどね。これ以上は僕が伝えるべきことでもないからね。」


羽根うさぎはくるんと宙返りする。


「微妙な行動ラインだよね~…プロローグ前だし。これが新情報ね。とはいえ、僕を呼べるくらいにはイレギュラーだったんだね。だけど、この程度じゃ攻略対象から外れないみたいだ。」


この世界はゲームの世界として構成されてる。それがどういうことか…考えてみるといいよ。


攻略するとき何が判断基準だった…?どんなことは情報化されてなかった?まあ、君は思い出したはずだよ。僕がここまで説明できるってことはそういうことだよ。


さて、時間だ。また会えるときに期待してるよ。


そして、気が付けばまた夜のテラス。


「また、突然居なくなった…」

「何時も…ああなんだな」


二人の間に沈黙が落ちる。

沈黙を破ったのは、エルディスのほうだった。

「ディアナ」

「はい…?」

わたしは、反射的に見上げた。金色の綺麗な瞳がこちらを見ている。

いつもの深い森の綺麗な色も好きだけれどこの色も好きだ。小さいころから大好きだった色。吸い込まれそうになる。


「やっぱり、ディアナは他とは違うな。」


エルディスが嬉しそうに目を細めて笑むからわたしも、つい微笑んで返す。

そういえば、初めてこの笑顔を見たのはいつだったろうか。

「え?」

「君は、僕を見ることができるだろう?」

「??ええ、何時も拝見しております。綺麗な目の色とか…本当に素敵です!」

(婚約者ですし、じっと見ていて怒られないのは役得だと思う…)

わたしは、言い切る。エルディスは、少し苦笑い。引かれたのかと心配になる。


「…素敵ね。他でも言ってないといいけど。」

エルディスの手が頬をそっと撫でる。少しくすぐったい。

「どうして、君にあんなことしたか聞いておく?」

エルディスの声は甘い。今度は耳に攻撃がきた。もう、これは攻撃だ。

(あんなこと…)

わたしは、はっと思い出して頬が赤く染まった。エルディスがいうのは、羽根うさぎが出てくる前の行為のことだ。エルディスの手が頬にあるので顔を背けることもできない。

「…お聞きしてもよろしいのですか?」

「君の力を確認したかったのと…」

次の瞬間、不意に優しく笑んだ。


「まあ、あとはしたかったからかな。そう俺が思ってるって君に知らしめるためにね。本当は物足りないのだけど…」


それは艶を含んだ妖艶ともいえる笑みだった。直視するだけで

なにか持ってかれそうだ。そして視線を逸らせないわたしはそれを直撃で受けた。


(今日…何回この攻撃を受けたのだろう…耐性つけなきゃ…身が持たない。)


学習能力がないにもほどがある。かなり心拍数が上がった気がする。中身年齢的には上のはずなのに。敵う気がしない。やはり、攻略対象…色気とかもう…なんていうか破壊力が半端ないのだ。


視線できっと人を殺せるに違いない…あっ…この人魔眼の持ち主だった。


そしてなんだかすごいことをサラッと言われた気がする。


「これを返すよ。俺はもう覚えてしまったしね」


エルディスから手渡されたのは、さっきまで私が書いていたメモと


古ぼけた手帳だった。手に取った瞬間、体に小さな衝撃が走った。


(…懐かしいような…でも、なんだか…わたし)


幼いころから、エルディスのことが好きだった。初恋だった。


でも、幼い頃って…いつ?


脳裏に突然浮かんだ疑問。なぜか不安を感じた。


(わたし、何時王子のことを好きになったんだっけ…?)


「ディアナ」


思考の海に飲み込まれかけていたわたしは、その声にびくりと身体を震わせた。エルディスは、わたしの頬を両手で包み少し覗きこむように視線を合わせてきた。


金色の瞳が目の前にある。


「さあ、少し眠ろうか?疲れただろう…大丈夫。今日はもう何も起こらないから」


エルディスは、ディアナを抱き寄せてそう耳元に囁いた。

ディアナの意識が遠のく。視界が真っ白になっていって、身体の力が抜けてくる。


魔眼の力だ…


(…あ…油断したかも…聞きたい事まだあったのに)


…途切れる直前の掠れた視界に見えたのはエルディスの苦しそうな顔だった。

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