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記憶が戻る

それは、唐突に訪れた。まるで予兆なんてなかった。

眩暈がしたと思ったそのときに、一気に頭の中に情報が溢れた。


トラウス国第一貴族ファントル公爵家の長女、ディアナ・ファントル16歳。

…それがわたしの名前であり、今の立場だ。そして、目の前で恭しく手を差し出している美青年は、わたしの婚約者であり、わたしと同じく今夜のパーティの主役。エルディス・トラウス。

トラウス国の次期国王である第一王子。


そして、わたしの幼いころからの想い人。


今、思い出してしまった。そして理解してしまった。

わたしには前世があり、この世界は、その前世でやっていた乙女ゲームの世界であるということ。

自分が、その登場人物の1人であり攻略対象たる、エルディス王子の婚約者でヒロインの当て馬的役柄の人物だということに。


(ああ、最近よくある転生ってやつかな…読んだことあるなぁ・・・)

なんて暢気に考えたその瞬間、世界が暗転した。


「やぁ。ディアナ。んーそれとも、貴崎 愛奈と呼ぶべきかな?」

「…ディアナ…がいい。」

「そっか。君はディアナが良いんだね。わかったよ。」

わたしの目の前には背中に純白の小さな羽根を持つ可愛らしいうさぎのぬいぐるみが浮いていた。


(もう、何も驚くつもりはないけど…驚くつもりはないのだけど。)


「ああ、最初に言っておくね。僕はぬいぐるみだよ。名前はあるけど教えられないから適当に呼んで。」

ぬいぐるみは、そう言った。

不思議な空間だった。さっきまで王城のダンスフロアに居たはずだった。今夜はわたしとエルディス王子との婚約発表のパーティだったのだ。王子にエスコートされて、さあダンスをという時だった。


でも今は、光一つない暗闇だ。それでも、何故かそのうさぎのぬいぐるみと自分の姿ははっきりと見えた。

不気味といえばそうなのだけれど、不思議と怖いと思えなかった。ただの直感。

(大丈夫。どうせゲームの世界というなら何があってもおかしくない)

ファントル家は、感覚を大切にする。王宮魔法使いを多く輩出する国内でも有数の伯爵家。かくいうわたしも結構な魔法の使い手だったりする。鍛錬も怠ったつもりはない。

わたしは、腹をくくった。ゲームのシステム画面とでも思うことにする。そう思ったら至極ファンシーなぬいぐるみの姿が凄く可愛らしく思えてきた。


(んー…触ってみたいなぁ…可愛いかも。)


「うん。もう少し取り乱すかと思ったのに…平気そうだね?」

うさぎのぬいぐるみは、可愛らしく首をかしげる。その瞳にも感情は見て取れないのになんだか笑われている気がした。

(なんだか悔しい。前言撤回、全然可愛くないっ)

悔しまぎれにこのぬいぐるみを羽根うさぎと呼ぶことにする。

そう決めた。なんとも悔しさを紛らわせられたとも思えないが。”名前”を付けるのは癪だったのだ。

「これでも、16年間大貴族の長女としてやってきたの。取り繕う能力はのは人並み以上よ。羽根うさぎ。」

「まあ、そうだね。じゃ、手っ取り早く話を進めるね。」

羽根うさぎは、そう呼んだことを意に介している様子はなかった。余計に悔しい。その様子にやはり羽根うさぎは少し笑ったようだが、あえてそこには触れてこなかった。

「僕が君に伝えられることを全部伝えるよ。

まず、君は前世で事故に巻き込まれてこちらに転生したんだ。君が転生する前の年齢は26歳だね。そこら辺は思い出せてる?」

わたしは、頷いた。わたしは社会人だったはずだ。

それなりに良い大学に進学した。大学に入るまではとりあえず、”その大学に入る”のだけを目標に生きてきた。


その中で唯一の慰めが乙女ゲームだった。


勉強ばかりで部活も、学生生活ももちろん恋も蔑ろにしていた。それをゲームの中で補っていたのだ。

所謂オタクというやつか。大学に入ったら、入れたならきっと楽しいキャンパスライフが…なんて思っていたはずだが、結局馴染めずに勉強に打ち込むことになり、社会人になって、今度こそ!と思っていたら、やっぱり仕事にのめり込み、気が付いたら同期たちは結婚退職…なんて状況だった気がする。何故だろうか。

事故にあったというのに転生したというそのことを思い出せない。そんなものだろうか?

(結構寂しい人だったかも…って落ち込んでも仕方ないか…)

どうしたって後の祭りなわけだ。そんな記憶が一気に戻ったのだ。ついさっき。

「ってことで、君はこの世界に生まれ変わった。そして君が死んだ年齢と同じ年齢に達したから、記憶が蘇ったってこと」

「…計算合わないんだけど…?」

(死んだのが26歳。今、ディアナは16歳なんだけど…)

「あーそれイレギュラー。」

「そんな一言で済ませるんだ…。」

「ちなみに、君がやってた乙女ゲームの「乙女と騎士の恋愛譚」っていうゲームの世界それが、モデルになってるはずだから。」

「…確かに好きだったけどね。それ」

たとえ、世の中でクソゲーと言われようと。わたしは楽しんでいたゲームだ。

選択肢は分かり辛い、そのうえ選択肢はシビア。そのくせ好感度表示なし、攻略困難という鬼畜仕様。

主人公は、相当ご都合主義な展開で結ばれていく。ストーリーも決して良くはなかった。

でも、好きだったんだから仕方ない。

(キャラが良かったのよ。キャラが。人気イラストレーターが描いたキャラクターが無駄に動く、豪華声優ちょっと大人なな展開もありなのがね…まあキャラゲーといもいうか。)


「じゃあ、頑張ってね。君にはまた会えると思うし」

そんなことを考えていたら、羽根うさぎは事も無げにそう言い放った。

「えっ…?」


とりあえず書き始めてみました。

続くのでしょうか・・・。

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