ーモノクロ世界ー
「うん……」
私は目が覚める。
「ここは?」
目の前に映し出されたのは、病院の天井だった。
「なんで…!?聞く事しか出来ない筈なのに…」
私は驚いた。なんと無の世界では無く元の世界に帰ってこれたんだから。言葉も発する事が出来るし、体を動かす事も出来る。試しに腕を抓ってみると痛みを感じた。
「戻ってこれた…?」
…いや。
私はようやく理解した。この世界は夢では無い、だけど前の現実とは違う現実なんだ。
確かに目で物や景色を見る事が出来る。但しそれには色が無く、モノクロのような色調で視界が少し歪んでいる。
つまり、前まで居た世界とはまた違う世界なんだ。
私はここで思い出した。何故こうなってしまったのかを。
「…そうだ」
私の命を…終わらせに来たんだ。
私は早速自分の手で人工呼吸器を取り外してみた。ガチャ…人工呼吸器は床へと転がる。
…死なない?
そうか、この世界から脱出したら死ねるんだ。私は脱出出来るまでの間病院中を歩き回ってみたけど、患者、医者、看護婦さん…1人として人は存在しなかった。
…そりゃそうか、ここはきっと別の世界だもんね。
そう思いながら私は自室へと戻る…すると、病室の窓からモノクロの光が差し込んだ。
私は気になって窓を覗きこむ。
そこには、相変わらずモノクロではあるが…大好きだった丘の上の夕焼けが輝いていた。
「最後に見たかったんだ、見れて良かった…」
私がそう言った途端、再び世界が崩れさる…。