第2章 said 昂 and 沙菜 3/3
俺の目の前に沙菜が立っている。
いつもの声で呼ぶ沙菜。
でも、どれだけ近づこうとして足を進め、手を伸ばしても沙菜は遠くなっていくばかり。
どーしたら届くのか、あの光に近づけるのか。
沙菜が光で俺は影。
俺は光にはなれない。わかってる。でも・・
せめて沙菜の隣にいたい。これからもずっ・・・
ピピピッピピピッ
夢・・・か。
こんな夢を最近見るようになった。
沙菜・・・いなくなるのか?
正夢にならないことを心から願って家を出た。
沙菜のいえの前につきインターホンを鳴らす。
「はーい!」
家の中から聞こえてくるいつもの声。
俺は毎朝自転車で沙菜を迎えに来て後ろにのせ、学校の近くで降ろす。
この2人だけの時間が1日の始まり。
靴箱で靴を履きかえていると、知らない女子から声をかけられた。
「・・・あの・・・松村君・・・話あるんだけど・・・いい?」
「・・・あの
「昂!先に行ってるね!」
そう、一方的に言って去っていってしまった沙菜。
きっと沙菜は俺がこの場で断るとわかっていたのだろう。
「・・・どこではなす」
「・・・体育館裏で。」
きっと、この知らない子も察したんだろう。
よかった。
無駄なこといわなくてすむ。
「あの・・・あたし、松村君が好きなの!」
「・・・悪いけど。」
「やっぱり沙菜ちゃんのこと・・・
「あいつは、光だ。」
「え?」
「あいつはおれの光なんだ。どれだけ手を伸ばしても届かない。」
「・・・そんなの、あたしも同じ。あたしじゃ松村君には届かない。・・・でも、言いたかったの。あたし、転校するんだ。それまでにどうしても伝えたいって思ったの。やっと思えたの。きっと・・・今言わなきゃ後悔するって。だから・・松村も君後悔しないでね。聞いてくれてありがとう!ばいばい!」
っそういって彼女は校舎にむかった。
おれも、教室に向かう。
教室に入っても、沙菜はいない。
どうしたんだ?
俺はあんまり気にも留めず、自分の席についた。
少しして、沙菜はクラスに入ってきた。
表情も、雰囲気もどこか悲しそうだ。
何かあったのか?
「さ・・・
「沙菜、なんかあった?」
俺よりも先に声をかけたのは水樹だった。
なぜか、なんとなく行きにくくなってしまった。
said 沙菜
あたしの雰囲気に気づいてくれたのは・・・水樹だった。
「・・・俺でよければ、話聞こうか?」
「・・・でも
「放課後、教室で待っててね。一緒に行きたいとこあるんだ。」
「・・・うん。まってるね。昂は・・・
「2人で行こう。」
「・・・わかった」
午後の授業が終わり、水樹がすぐにあたしの席に来た。
ちらっと昂を見ると、少し不機嫌な気がする。
なんかあったのかな?
「沙菜。いこか」
「うん。」
あたしは、水樹と2人で教室をでた。
街でクレープ食べたり、ゲーセンでUFキャッチャーしたり。
そんな風に遊んでいたら、もう6時になっていた。
今の季節は冬。
なかなか寒くなって日が落ちるのも早い。
あたしたちは電車に乗った。
電車賃は水樹が払ってくれて、目的地もわからないまま電車にのった。
「水樹、どこいくの?」
「ついてからのお楽しみ!」
電車で30分くらいでついた。
ここは・・・
「海だあああ!」
そう。
水樹がつれてきてくれたのは、夜の海だった。
さすがに冬だから、靴を脱いで海に入るわけにもいかず・・・
海岸の階段に2人で座った。
「・・・ねえ。教えて。沙菜が今抱えてること。」
「・・・あたし、・・・・・・・。」
「・・・!」
「昂には言わないでほしいの。」
「なんで!だって・・・
「昂は・・・優しいから。」
そういってあたしは立ち上がる。
あたしは海に向かって叫ぶ。
「こうーーーーーーー!だいすきだよーーーーーーーーー!」
きっとこの言葉を口にすることはもうない。
ここに残す。
そう決めた。
そんなあたしを見て水樹は笑ってくれた。
said 昂
あの、沙菜と水樹との不思議なデート(?)から1週間がたった。
あの沙菜の悲しそうな顔はあの日以来みなくなった。
むしろ、無理に笑っているように見えた。
沙菜は前以上にクラスメートと関わるようになった。
なぜか、水樹と一緒に。
ムスっとしている俺をみて千里が声をかけてきた。
「昂、顔怖いよ笑」
「・・・んなことねーよ。」
「あるよ!あ、最近沙菜と水樹一緒にいるもんねー」
「・・・そーだな。」
「・・・やきもちか笑」
「・・・うっせ」
「え、拒否んないんだあ」
「・・・うるせーよ」
「素直じゃないなあ!昂君♡」
「きもいわ」
「ひどー!」
こんな話をしながら時間がすぎ、今日は沙菜に誘われ2人で帰ることに。
学校を少しでて後ろに沙菜をのせる。
「・・・昂。」
「・・・ん?」
「あした、あたしんちきたらポストあけてみて。いいもはいってるから!」
「・・・わかった」
意味はよくわかんないが返事をしておいた。
なんとなくだが・・・やな予感がする。
「・・・沙菜。俺、この前言ったよな。」
「ん?」
「・・・俺から離れるな。」
「・・・ちゃんとそばにいろよ。」
沙菜は返事をしなかった。
もしかしたら、俺を嫌いになってしまったのか。
俺はこの時知らなかった。
沙菜が俺の後ろで泣いてたなんて・・・。
次の日、俺はいやな予感がしていつもよりも早く家をでた。
いつもより早く自転車を走らせる。
沙菜の家につくと・・・
もう、何もなかった。
[MATHUNAGA]と書いてあった看板も。
沙菜の部屋のカーテンも。
沙菜と話をした庭も。
バスケのコートも。
家の中は空っぽだった。
俺は、昨日の言葉を思い出す。
俺はゆっくりポストを開けた。
ポストの隙間から手紙が何百枚という数が落ちてきた。
沙菜の友達の名前ばかりだ。
その中から1つだけ色の違う封筒を見つけた。
俺宛てだった。
俺は、他の手紙をかき集めあらかじめ入っていた袋に手紙を詰め込む。
沙菜の家の階段に座り、封筒を開く。
{昂へ。
何も言わず、いなくなってごめんなさい。
高校では昂が一番付き合い長いよね。
昂が仲直りさせてくれたとき、親との関係もだったけど、きっかけになったのは転校のことだったんだ。
あのとき、きっと親と仲直りしてなかったら、後悔してたと思う。
昂、ありがとう。
・・・でも、もうあたしのことは忘れてください。
あたしなんかのこと覚えていない方がいい。
昂は優しいからきっと、忘れるわけないっていってくれるよね。
でも、駄目だよ。
昂は昂の道を歩かなくちゃいけない。
あたしは、あたしの道。
昂は昂の道。
最後に、あたしにとって昂は光です。
ずっと光続けてください。
沙菜より}
ポタ
いつのまにか俺の目には涙がたまっていた。
俺は、他のクラスメートが来るぎりぎりまで涙をながし続けた。
そして、沙菜が他の人に残した手紙を俺が責任もって手渡しした。
あたしにとって昂は光です。
この意味はきっと俺が一番よくわかる。
俺と沙菜は同じことを考えていたんだ。
俺にとって沙菜が光であり、沙菜にとっておれが光だったんだ。
沙菜はこれがわかっってたからなんだな。
だから、沙菜は俺に転校のこと言わなかったんだな。
わかったよ。
沙菜。
俺は俺の道を歩くよ。
もしも、もしも、俺たちの道がもう一度交わることができるなら・・・
~☆~☆~☆~
結局、スキだって言えなかった。
後悔するかなんてまだわかんないけど、
でも、今の選択は間違ってないって思ってるよ。
もしも、また道が交わることができたなら、
そのときは・・・
また、君に恋をする。
~☆~☆~☆~




