第2章 said 沙菜2/3
「・・・・な・・さな!」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
「なにやってんだか。つくぞ。学校」
「あ・・・うん」
今日も学校へは昂の後ろにのって登校。
何も変わらない朝。
何もかわらない昂。
学校。
みんな。
昨日までそうだったのにな。
あのあと・・・
「なにそれ?」
ドアを開け、2人に言った。
「沙菜・・・」
「転校?東京?なにそれ。あたし行きたくない」
「沙菜・・・」
父が心配そうにあたしをみる。
母はうつむいて何もいわない。
「あたしは・・・お父さんとお母さんといる時間より、昂や学校の子と一緒にいたい!なんで、あたしなんか生んだの?!」
そうお父さんとお母さんに言い放って部屋にこもった。
そのまま泣きながら寝てしまい、朝お風呂に入ろうとしたらもちろん、あの人たちはいなくて。
いつも通りリビングの机の上には朝ごはん。
今日は置き手紙なかったけど。
「なんかあっただろ」
「え?」
こうやってあたしのこと気づいてくれる昂が好き。
「なんにもないよ?」
「・・・そうか」
少し歩く速度を落として昂の背中を見る。
(もう、こんなことがなくなるのかな・・・)
昂はあたしが遅いのにのに気付いたのか、昂も歩く速度を落とした。
昂は本当に・・・
「おにいちゃん!」
あたしたちの背後からの声に2人で振り向く。
「どーした?」
この子は昂の妹だ。
昂と同じ青い目。
昂と同じ黒髪。
すごく似ている。
2人並ぶと本当に美男美女だ。
「お母さんが、今日沙菜ねえ呼んで夕飯食べようって!」
「え!?悪いよ」
この子はあたしのこと沙菜ねえって呼んでくれる。
本当の妹みたいだ。
「いいんじゃね」
「ちょ、昂まで!」
「沙菜ねえ、いや?」
「いやなわけないけど・・・」
昂のほうを少し見る。
「・・・来いよ」
「うん!じゃーおじゃましようかな」
「やった!じゃーお母さんに言っとくね!じゃー、沙菜ねえ、おにい、いってらっしゃい」
「いってきます!」
今日は振替休日らしい。
本当にかわいい。
教室に行くと一番最初にあたしのところに来てくれたのは、千里・・・じゃなくて水樹。
「この前のCD返すよ!ありがと!ちょーよかった!」
「いえいえ!あたしは三番がすきだった!水樹は?」
「あーね!でも5番も・・・
ドスッ
あたしの頭の上に昂の腕が乗ってきた。
「ん?」
「・・・なんでもねえ」
プッ
水樹がなんかわかんないけど、笑い始めた。
「え、なに!?」
「昂・・・おこちゃまだな笑」
「・・・うっせ」
あたしだけ頭の上に?マーク。
少し頬が赤い昂。
まだ笑いがとまってない水樹。
そこに千里が加わり、いつもの4人。
なにも理解できないまま学校が終わった。
「沙菜、ばいばい!」
「ばいばい!」
帰り道、高校の友達からあいさつされ、それにかす。
今日はやけに多いと思ったら、そーいえば隣に昂がいるからだ。
今日は家には帰らず、そのまま昂の家に向かう。
だから、廊下でも帰り道でも女の子にあたしが声をかけられる。
きっと目当ては昂だけど。
少し昂を見上げる。
無愛想だなあ。
本当。・・・かっこいいなあ。
昂の家につくと一目散にお迎えに来てくれたのは昂の妹。
「お帰り!」
「・・・ただいま。」
「おじゃまします!」
「どーぞ!」
奥から聞こえたのは昂のお母さんの声。
・・・元気そうでよかった。
昂にもいろいろあったのだ。
今、昂のお母さんは専業主婦をしている。
とてもきれいな部屋。
おいしそうなごはん。
うちとは全く違う。
「・・・どーした」
「ん?なんでもないよ!」
昂は心配そうに聞いてくる。
(今、これ以上顔があっていたら、泣いてしまう)
あたしは昂を抜いて先に上がらせてもらった。
昂の家に来たら、手を洗わせてもえらい、昂の部屋でゲームをする。
まあ、相手は昂じゃなくて昂の妹だけどね。
昂は寝てるか、本を読むかのどっちかだった。
のに・・・
「・・・やるぞ」
「え!?昂、やるの!?」
「・・・悪いかよ」
「そんなこと言ってないけど」
「・・・あいつ、今母さんの手伝いしてるから、当分来れないからな」
あいつは、昂の妹のことだろう。
前にも一緒にやったことあるけど、やっぱり・・・
(強い!)
テレビの画面にはあたしの方にGAEM OVER。
昂の方にはWINの文字。
「昂、強すぎ!」
あたしは昂を見て頬を膨らます。
昂はそんなあたしを見て笑った。
昂の笑顔を見れるのは貴重だ。
この笑顔が大好きだ。
「おにい!ごはんだよ!」
「・・・行くか」
「うん!」
テレビの電源を切り、リビングに向かう。
机の上にはあたしの大好きなクリームパスタにサラダとコーンスープ。
「おいしそう!」
「あら。ありがとう」
とてもきれいなお母さんの笑顔はやっぱり昂に似ていた。
そのうちに昂のお父さんも帰ってきて、5人でご飯を食べた。
昂の妹はよう話をするから、とても盛り上がる。
あたしと昂のお母さんと2人で片づけをしている間、昂は昂の妹とこうのお父さんと3人でテレビを見ている。
そんな3人をながめるのはとても好きだ。
「沙菜ちゃん、あたしやるからいいのよ」
「いえ、やらせてください!」
「・・・昂のこと、よろしくね。」
昂のお母さんが急に真剣な話をし始めた。
「昂って、無愛想でしょ?小学校のときとか、あんまり友達とかできなかったから、中学でもちょっと心配だったのよ。でも、中学に入ってからはあの子、私とも話すようになって、表情が柔らかくなったっていうか・・・。それは、沙菜ちゃんのおかげ。わたしたちを救ってくれたのは沙菜ちゃんなのよ。ありがとう。これからも、昂のことよろしくお願いします。」
昂はちゃんとお母さんと、家族と向き合ってる。
あたしも、向き合わなければいけない。
「・・・こちらこそ。昂には助けてもらってばかりです。昂のこと、育ててくれてありがとうございます」
「まさか、沙菜ちゃんにこんなこと言われるなんて思ってなかったわ」
「そうですか?」
「ええ」
そういい、昂のお母さんは微笑んだ。
そんな話をしてると、時計はちょうど9時を指していた。
「昂、沙菜ちゃん送ってきてあげて?」
「・・・いくぞ」
「え、あ、ありがとう」
昂はあたしの鞄を持って玄関に向かった。
それについていくと、昂の妹、お母さん、お父さんが玄関まで送ってくれた。
「沙菜ねえ、また来てね!今度はゲームしよ!」
「沙菜ちゃん、またきてね」
「はい!ありがとうございます!」
「・・・いくぞ」
「うん!」
昂は急に立ち止まり、
「・・・母さん。パスタうまかった。」
「「「・・・・」」」
あたしと昂の妹とお父さんは放心状態。
昂のお母さんは、目に涙をためて今までで一番の笑顔で微笑んだ。
「ありがとう」
昂は少しうなずくと家をでた。
あたしは昂の家族に一礼して家をでた。
ドアを閉めるとき、昂のお母さんが泣き崩れるのがみえた。
昂は・・・昂のお母さんを母さんと呼んだことがなかった。
そう、昂の妹も言っていた。
それが、今日、初めて呼んだのだ。
(昂も一歩進んだんだ。)
「昂・・・あたしね・・・」
「・・・ん」
言えなかった。
「やっぱりなんでもない!」
「・・・?」
転校になるかもなんて。
大好きなんて。
言えなかった。
今日は荷物が3つもあって持ちきれなかったので、昂が部屋までもってくと言ってくれたので甘えてしまった。
玄関を開けるとやっぱりきこえてくるのは母の怒鳴り声。
「あなたが、なかなか帰ってこないから沙菜も家に寄り付かなくなったのよ!」
「君だって仕事で行くのも帰ってくるのも早いし、遅いじゃないか!」
「あたしは・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
恥ずかし。
あたしたちは部屋のドアの目の前から動けないでいた。
あたしは昂に帰ってもらおうと思って振り向いた瞬間、
「・・・あの」
あたしの抜かし、ドアを開け、2人の口喧嘩を遮ったのは・・・昂だ。
「誰なんだ。君は」
「沙菜さんと中学から仲良くさせてもらっています。松村 昂といいます」
「沙菜はどこなんだ」
あの2人の視界には入らないところにいる。
「・・・沙菜さんが今日1日気にしていたのは、お母さんとお父さんのことだったんですね。」
「「え?」」
昂は少しだけだけど、勘違いをしているようだ。
すると、昂は自分のことを話始めた。
「・・・俺、お母さんがいなかったんです。俺を生んですぐに死んでしまいました。10歳のとき、新しいお母さんができました。でも、あの人のこと、お母さんと呼んだこと一度もなかったんです。俺のお母さんはあの人だけだっておもってたから。でも、わかったんです。生んでくれて、血がつながってる人もお母さんだけど、ごはん作ってくれたり、掃除をしてくれたり、風邪をひいたとき看病してくれたりしてくれた人もお母さんさんだなって。今日、初めて母さんって呼びました。俺、沙菜にも一歩進んでほしいです。お願いします。沙菜の・・・沙菜さんの話を聞いてあげてくれませんか?」
(・・・昂・・・)
昂はあたしのためにあたしのお母さんとお父さんに頭を下げてくれた。
あたしのために・・・
「君・・・・
「あたし、お父さんとお母さんすきだよ。昨日、なんで生んだの?・・・なんていってごめんなさい。」
お父さんの言葉を遮って飛び出しあたしも頭を下げた。
「ごめんな。俺たち、沙菜のことなんも考えてなかった」
「もう一回3人で話し合いましょ」
お父さんとお母さんはあたしの頭をなでた。
その瞬間、あたしの目から涙がこぼれた。
その涙をぬぐってくれるお母さん。
お父さんは昂のもとへ。
「・・・ありがとう。昂君、これからも沙菜を頼むよ。」
「・・・はい。」
涙がとまり、昂を玄関まで送る。
その背中をみるとまだずっと一緒にいたいと思ってしまう。
「・・・どした」
「え?」
あたしは無意識に昂の袖をひっぱっていた。
「あ・・・えっと、ありが
お礼を言おうとした瞬間、昂に包まれ昂の腕の中にいた。
「・・・約束して。俺から離れるなよ。」
あたしは返事できなかった。
約束、できなかった。
何も言わず、昂の背中に腕を回した。
これがどういう意味かなんて関係なかったんだ。
ただ、もう少しだけそばにいたかった。
もう、この時には決めていたからかもしれない。
だからきっと約束できなかったんだ。
~☆~☆~☆~
「スキ」
この一言の重みがどれだけかなんて、わかってた。
だから言えなかった。
でも、言うべきだったんだ。
高校の秋の話だった。
~☆~☆~☆~




