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アイノカタチ  作者: Cat noir
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第9章

仮退院1日目は初めてお酒パーティをしたり、初めて大学に行ったりして楽しかった。

・・・いい事ばっかりじゃなかったけど。

私にすごい似てる昂君の彼女の存在。

友達なのに、昂君に彼女がいるって知った瞬間いろいろ痛くなった。

頭も・・・心も。

もしかしたら・・・でも、認めちゃいけない。

昂君を私の人生に巻き込めない。

そう、考えた瞬間に浮かんだのは先生の言葉。


「沙菜さんなりのアイノカタチを作ればいいと思います。」


私なりのアイノカタチ。

そんなものは存在していいのだろうか。

もし、存在するとしたら、それは・・・


「沙菜。行くぞ。」


「え、どこに!?」


「歩きやすい靴にしろよ。千里と水樹はあろ1時間くらいでくるらしいから。」


「え・・・あ、うん」


急な遊びの誘いに戸惑いながら支度を始める。

今日はいつもより少し寒いからパステルピンクのニットワンピに高さのない黒のブーツ。

軽く髪をまいて、ナチュラルメイク。

白のコートで、バックはワンピと似た色のショルダーバック。


「よし、できた!」


ピーンポーン


「昂ーきたよー!」


ドアの外から聞こえる千里ちゃんの元気な声。

私と昂君は部屋を出た。

アパートの下には一台の車が止まっていた。

その車の運転席に座っていたのは水樹くん。


「免許持ってたんだ!」


「高校出るときにとったんだ。」


「すごーい!」


「そうかな?」


「うん!今日ってどこ行くの?」


「昂から聞いてない?」


「うん。教えてくれなかったー」


「今日はね、遊園地にいこーって!」


「遊園地!?初めていく!・・・と思う」


「・・・じゃあ、楽しみだね!」


「・・・うん!」


そっから水樹くんの車に乗って1時間後・・・


「「ついたー!」」


私と千里ちゃんは大はしゃぎ。

最初はメリーゴーランド。

結構混んでて、馬が2台しか空いてなかった。

千里ちゃんがどーしても馬車に乗りたいって2人にお願いしてくれたから、私と千里ちゃんは馬で、昂君と水樹くんは馬車にのった。

それも、すごいピンクの馬車。

私たち女子はそれを見て大笑い。


2番目はジェットコースター。

以外にも千里ちゃんが嫌がってたけど、他の2人が無理やり乗せた。

千里ちゃん、水樹くんペアと私、昂君ペア。

私たちは運良く(?)一番前だった。

いやとは言わなかったけど、私もジェットコースター初めてだから、少し怖かった。


「大丈夫だから。」


昂君はそれが分かったらしく、そう言いそっと私の手に重ねて握ってくれた。

それだけで恐怖心なんてものはどこかへ行ってしまった。

終わったあと、千里ちゃんは今にも泣きそうで、時間もちょうどよかったしお昼にすることにした。


遊園地内にあるレストランはメニューがすごく豊富だった。

千里ちゃんはハンバーグ。

水樹くんは和食の定食。

昂君はパスタ。

私はオムライス。

千里ちゃん、あんなに気持ち悪そうだったのに、よくハンバーグ食べれるなあ。

私たちはお昼を堪能してから、また、乗り物に乗ることにした。


私たちが3番目に乗ったのは空中ブランコだった。

これに関しては水樹くんが怖かったらしい。

らしい。というのは最後まで水樹くんは怖いとも言わなかったから。

誰も気が付かなかった。

ある意味才能だ。


「はい。」


「ありがと!」


そのあと、コーヒーカップやも一回メリーゴーランドに乗った。

他にもいろんな乗り物に乗った。

現在、午後6時。

ここは結構夜遅くまでやっているらしく、暗くなってからのイルミネーションも楽しめる。

冬の午後6時はもう真っ暗だ。

特に観覧者はとっても素敵だ。

外から見るのも、乗って上から見るのも素敵だと思う。

昂君と見れたら・・・なんて、また考えてしまった。


「・・・沙菜さん?観覧者にのらない?」


「あ・・・うん!」


観覧者には4人で乗った。

私と昂君が奥に向かい合わせで座り、私の隣に千里ちゃんが座る。

昂君の隣には水樹くん。

観覧者のてっぺんからみる夜景はすごく綺麗だった。

この景色、また見れるんだろうか。

3人と。昂君と。

そう思うと泣きそうになった。

記憶があるうちで、初めての友達。

そして・・・好きな人。

もう、認めなきゃいけない。

ちゃんと、正面から昂君と向き合いたい。

そう、思った。

手術前にちゃんと伝えなければ。

・・・好きって。


観覧者は15分くらいで終わってしまった。

千里ちゃんが降りて、水樹君が降りる。

その次に私が降りた。

昂君は・・・中から私を見る。

待ってても、昂君がなかなか出てこない。


「昂君?」


「・・・水樹」


「・・・おけ。」


「もう一回。」


そういって昂君は水樹くんに合図したと思ったら、私の腕を掴んで中に引っ張った。

そのままドアは閉まり、この小さな回る箱の中に2人きりになった。

5分ほど沈黙が続いた。

その長い沈黙を切ったのは昂君だ。


「・・・ごめん」


「え?」


「・・・写真のこと。」


「あ・・・」


「お前はいつも俺のこと正面から受け入れてくれるのに・・・


「そんなことない。私はいつも臆病になってなにもできない。」


「私ね、ときどきある夢を見るんだ。・・・いつも、記憶が消える前。なんだか、少しの間、幸せが訪れるとき。私の病気はいつも私の幸せなことばかり奪っていく。あの、夢光と同じように。」


「光?」


「その夢でね、光がでてくるの。私は暗闇を出口を探しながら走ってる。その間に小さいけどとても輝いてる光を見つけるの。その光は届きそうで届かない。いつも、届きそうなところで目が覚める。」


「光・・・」


「その光ね、最近、前より近くなってる気がするんだ。昂君たちに出会ってからだよ。これが、いい意味なのか悪い意味なのかはわからないけどね・・・。

それに、最近薬の副作用に耐えられたのも昂君たちのおかげ。私、初めて光が見えたよ。昂君。私に光をくれて、出会ってくれてありがとう。もう、後悔はないよ!」


「・・・なあ・・・


「ついたよ!今度こそ降りよう?」


私はドアが開くとすぐさま降りようとした。

そのとき、私は昂君に引き寄せられ、昂君の腕の中にいた。


「・・・ごめん


昂はそういって私を離し先に降りた。

私もびっくりしながら昂に続いて降りた。

なんだったんだろう?


私、決めたよ。

昂君には告白しない。

手術も黙ってうける。

昂君には迷惑かけない。

先生。これが私のアイノカタチです。


水樹くんが昂君の家まで送ってくれた。

私は最後の夜だから、夕飯を作った。

昂君は笑って食べてくれた。

そして、気づいてしまった。

あの夢。

あれは記憶が」なくなるときに前兆。

きっと、この昂君との記憶がなくなるんだ。

そのまえに・・・


朝、私は黙って昂君の家を出た。


said 昂


朝、起きたら沙菜はいなかった。

起きて少しゆっくりしたら送ってくつもりだった。

机の上に何通かの手紙が置いてあった。


千里ちゃんへ


水樹くんへ


昂君へ


俺は、その3通の一番下にあった俺充ての手紙をあけた。


{昂君へ

 私の病気は記憶のなくなる病気。

 そしてあの夢のおかげで大抵はなんの記憶が消えるかわかるようになったよ。

 きっとすぐにこの手紙を渡す時がするんだろうって思ってました。

 きっとあと2、3日で昂君のことを忘れてしまうと思います。

 もう、私のことは忘れてください。

 もう、病室にはこないでください。

 昂君。幸せになってね。

 それが、私の最後のお願いです。

 ありがとう。さよなら。

                     沙菜}


沙菜はまた、俺の前からいなくなろうとしている。

また、忘れろ。

沙菜は何度出会ったらわかるんだ。


「・・・沙菜・・・」


俺は、部屋でうずくまり、声を出さず泣いた。

沙菜。まだ、俺は沙菜に何も伝えていない。



said 沙菜


仮退院から1週間。

・・・なんにも覚えていない。

どこに泊まって、何を食べて、何をして、誰といたのか。

きっと、また記憶がなくなったんだろう。

私は、なくした記憶を取り戻すということはしない。

でも、なぜか今回だけはどうしても引っかかっている。

約1か月分の記憶は、もしかしたら、手術で思い出すかもしれない。

もちろん、それ以降のことも・・・。

手術は明日。

昨日、先生から手術の話をされた。

私が記憶をなくしていることを言っていなかったためだ。

先生は私が手術を拒否するかと心配になったらしい。

今回の手術は失敗するともう2度と目を覚ませないらしい。

でも、成功する確率は1割。

私の人生は理不尽すぎた。

そして、なんの役にも立てず、そのまま消えていく。

誰にお世話になったかさえも覚えていない。

確かに覚えている。

屋上から見える空は忘れない。

また明日、手術の前に屋上に行こう。

あの空を目に焼き付けよう。


said 昂


会えると思った。

ここ、病院の屋上へくれば会える。

そう思った。


エレベーターから降り、屋上のコンクリートを踏んだ。

何個かあるベンチを確認した。

屋上には誰もいない。

そう、思った俺は引き返そうと思い、後ろを振り向いた。

そのとき、


「~~~~~♪」


鼻声が聞こえた。

聞いたことのある、いや、聞きなれた声。

改めて屋上を見渡す。

一番奥のベンチ。

そこに腰かけた少女。

その少女は沙菜だった。


俺はその子の近くのベンチに腰かけた。

その子・・・沙菜は俺に気づいたらしく病棟ないに戻ろうとした。


「まって!」


つい、引き留めてしまった。


「・・・?」


不思議そうな顔をしている。


「もう、行ってしまうんですか?」


「・・・はい。手術に間に合わなくなってしまうんで。」


「!」


「あの・・・会ったことありましたっけ?」


「・・・いえ。・・・引き留めてしまってすいません。」


沙菜がまた行ってしまう。

手術、今日だったのか。

俺はこのまま後悔しないのか?

だめだ。

きっと後悔する。

そう気づいた瞬間、俺は沙菜を呼び止めていた。


「沙菜!俺、待ってるから。お前が目覚めるまでまってるから。だから・・・がんばれ!」


「・・・ありがとう」


沙菜はそうつぶやいて病棟へ入っていった。

これでいい。

俺は決めたんだ。

もう離れないって。

なにがあっても、離れないって。

沙菜が何度忘れてくれって言っても。

沙菜。

君が目を覚ますまで何度でも言うよ。


沙菜。愛してる。









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