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アイノカタチ  作者: Cat noir
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第1章 said 沙菜

ピピピッピピピ


「んー、はいはい」


だるそうに目覚ましのアラームを切った。

一度布団の中で丸まり、いっきに起き上がる。


ガバッ


「んーーーーーー!よしっ」


アイロンをつけ、いつもの制服に着替える。

ひざ下のスカート丈。

丸襟のブラウスに袖を通しおえ、ドレッサーの前に座りアイロンで髪を整える。

母がストレートだったおかげで、髪にはあんまり気を使わずともツヤのある黒髪。


「もーそろそろ肩についちゃうかな・・・」


と独り言をつぶやきながら部屋を出る。

現在時刻7時。

階段を下り、リビングに向かうと机の上には1人分の朝ごはん。

その上には1枚の置き紙。


{さなへ おはよう。

     今日はお母さん、帰るの遅くなりそうだから夕飯てきとーにやってちょうだい。

     今日も勉強がんばるのよ。

                               お母さんより}


「今日も1人。」


またぽつんと独り言をつぶやく。

松永マツナガ 沙菜サナ

1人っ子。

父は名古屋に単身赴任中。

なかなかかえってこないどころか、ここ3年ほどろくに口をきいた覚えがない。

母は朝6時に家を出て帰りは夜の1時。

仕事は今では有名なある会社の社長。


置いてあったスクランブルエッグを温め、そのうちに食パンを焼く。

なんの音もないこの家にひとりで食事というのはとても孤独になる。

この時間がとても嫌いだった。


歯磨きをして家を出る。

家から学校までは徒歩10分。


学校まであと半分ってところで、少し先のところに“アイツ”を見つけた。

小走りで駆け寄る。


「おはよ!」


「お!おはよ」


松村マツムラ コウ

中1~中3まで同じクラスであたしの初恋。

(また・・・笑)


「はねてるよ、後ろ」


「うわ、まじか」


こいつには短所がない。

朝の髪の毛のはね以外は。

これはきっとあたししか知らない。

些細なことだけど、とっても嬉しかった。

グダグダと話しながら、靴箱、教室と一緒にいく。

これはあたしの1日の大切な時間の1つ。

昂はなかなかモテる。

教室に入れば、2人で話すなんてなかなかできることじゃない。


朝の会が始まり、1限が終わると昂が急にあたしのところに来た。

なんとなく言いたいことはわかってしまう。

さっき戻したばかりのノートをもう一度机からひっぱりだし、昂の目の前へ。


「さすが。3年一緒だとわかっちゃうな」


「さっきの授業、結構大事らしいからちゃんと復習しないとだって」


「おう。ありがと」


昂は授業の半分は寝てるくせに毎回学年1位。

あたしは、3年間2位。

こんなに努力してるあたしとは反対にもとの頭のよさから、一度も勝てたことがない。


3限は体育。

男女合同のバスケではもちろん、女子の歓声をあびる。

あたしはといと・・・

どーすれば昂を抜けるか葛藤中だった。

右手でドリブルするあたしと、ボールを取ろうと目の前にる昂。

勝者は・・・

もちろん、昂だ。


「もらってくよ」


そう、あたしだけに聞こえるように捨て台詞をはいた瞬間でボールはあたしの右手から昂の右手へ。

そっからダンク。

かっこよくないわけがない。

あたしの身長をはるかに超える身長といい、ジャンプ力といい。


(昂には勝てないな)


ガッツポーズをしている昂を見て少し微笑んだっていうのはあたしだけの秘密だ。


体育が終わり、友達と教室に帰る途中、


「松永さんっ」


その声に後ろを振り向くと、隣のクラスの男の子。


(誰だっけ・・・)


「ちょっといい?」


「・・・うん。ごめん、先いってて」


そう友達にいってから、その男の子についていった。


「・・・」


体育館裏。

なかなか話を始まらない。

沈黙が続く中、それを破ったのはあたし。


「・・・あの・・・何か?」


「あの、俺、松永さんのことスキなんだよね」


「あ、えっと・・」


「返事、きいてもいい?」


「あ、あの・・


「返事?そんなの決まってる」


あたしの後ろから聞こえた声。

この聞きなれた声の持ち主。

それは・・


「昂・・・」


「もちろん、Noだよ。こいつ、俺のだから」


「「は?」」


その子も、もちろんあたしも?マークが頭の上にうかぶ。


「・・・松永さん。松村くんと付き合ってるの?」


「え?あ・・いや、そーなった覚えがないけど・・・」


「付き合ってないよ」


「「は?」」


本日2回目のハモリ。


「でも、こいつはおれのだ。人のもんとんなよ。」


「・・・」


「いくぞ」



呆気にとられていたあたしの手をひき、前を歩く昂。

あたしはうつむきながら、微笑んだ。

嬉しかった。

来てくれたこと。

「俺のもんだ」

そう、言ってくれたこと。

昂に少し近づけた気がしたこと。



初めての告白。

それは、振った罪悪感ではなく、昂が来てくれたことの嬉しさのほうが大きかった。


中3の冬の出来事だった。


~☆~☆~☆~


大切な人がそばにいる。


それだけがあたしの幸せ。


こんなにも短い間だったなんて。


誰も思わなかった。


~☆~☆~☆~



         

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