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空色空想ネスト  作者: グレーミー
Chapter1「傭兵」
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ココロの欠けた者たち2

3月8日

___BSF施設内 旅団隊長室



あーー……ヒマだなぁーー


机にどっさりと積もった山積み書類達。

その三分の二ぐらいを消化してとうとう精根尽きてしまった。


溜めなきゃ良かったなぁーと後悔するけど、そんなのは宿題を出される学校の生徒同様、改善されることのない永久の後悔と失敗だろう。


おっと、誰か来たかな……?


足音が近づいてくるのに気付き、仕事をしているかのような雰囲気を作り上げておく。

地下施設なだけあってか、物音がよく響く。

さらに突貫工事の甲斐あって相乗効果が生まれ、よく響いてよく聞こえるプライバシーのカケラも無い空間が実現!


おまけに付け加えれば、大雨が降った時に天井から水が染み出し、雨漏り祭りになったこともあったね。

もちろん今は改修工事を重ねてそんなことも起こらなくなったから安心だと思うけど。……たぶん。


足音はドアの前で止まり、コンコンとノックの音が響いたので、どーぞーと言う前に一足早く一言頂いた。


「旅団隊長?また逃げてませんよね?」


うーん、我ながら素晴らしい少尉だなぁーと痛感する。

普通だったら、はかどってますかー?とか大丈夫ですかー?とか、仕事の支えになる心優しい一言を期待してるんだけど……幾度となく逃走を繰り返して行った結果、そんな一言よりまずは身元の確認が先らしい。


いやー…慣れって恐ろしいなぁ~


「入りますよー?」

結局、入室許可を出す前に扉を開き、そこへ前髪に髪留めを二つ付けて、後ろ髪をリボンで留めた女の子が入ってきた。


この子が我らが旅団の誇れる少尉こと、『梨亜 三奈木(なしあ みなき)』だ。

彼女には主に僕の補佐や事務的な仕事をしてもらっている。ゼノから言ったらアマネみたいな立ち回りかな。

アマネについてはそれはまた後ほどってことで。


僕について話をすれば、少尉と同じく事務的な仕事が多い。偶に任務に出ることもあるんだけど……

『旅団隊長に何かあったらどうするんですか!』って度々止められて怒られる。傭兵という本業を全うさせてくれないのだ。

僕も一応傭兵なんだけどなぁーとは思いつつも、見ての通りよくサボるので言い返すこともできず。


……とまぁ、かなり話がズレちゃったけどみんなそれぞれ役割を持って生きている。冒険者としてね。


「……旅団隊長?」

「ん、あぁ…えーと何の話だっけ?」


どうやら知らない間に話が始まってたみたいだ。

人の話はちゃんと聞かないとね。

「ですから、この書類の山です!今日中ですよっ?」

「えー…」やっぱ聞かなきゃ良かった。


終わりそうのない書類の山の期日を再び告げられ、半ば諦めて机に突っ伏していると再び足音が聞こえて来た。

「えーじゃありません。今日中です!」


少尉がしゃべっている後ろでドアノブをひねる音が響く。こちらはミナキさんより直球にノックの「ノ」の字もせずに慣れたように部屋に入る。


「戻ったぞシグ」

「やっほーシグ!」

やっぱりゼノだよね。それにアマネも。


「やぁゼノ、それにアマネ。みんな集まるなんて珍しいね」

「あっ確かに…何日ぶりでしょうか?」

首を傾げて指で数える少尉。なんだか所々可愛い仕草をするなぁー…


「敬語やめろよ、堅苦しい……」

「えぇーいいじゃん!わたしはミナキらしいと思うよっ?」


それぞれが久しぶりに仲間に近況や挨拶を交わしている所に僕もちょっと気になったので交ざって話をした。


「あ、ゼノ。少しでも何か自由について分かったことはあったかい?」

僕が気になっていたこと。

もし、さっきのことでまだ悩んでいたらと少しだけ心配していた。悩み過ぎは逆効果だし深く考えてしまうタイプだったからアドバイスをしておこうと思ったんだけど…


「あ、あぁ。外の風に当たってたら何と無くスッキリした…ような気がした……」

「えぇーーーっ!ゼノがたそがれてぇひゃぁ!!」


視線を下に逸らし相変わらずの無表情だったけど、気持ちが少し軽くなった。そんな顔でゼノは答えた。


「これが自由ってヤツなのかは俺には分からんが……」


悩み過ぎは僕の方だったかな…?

そんな心配はいらなかったみたい。でもちょっと不安そうだったから、


「いいんじゃない?キミが自由だと思ったのなら、それは自由だよ」


わざとちょっと投げやりな感じに答えておいた。その方がゼノもラクだと思ったし、


「大丈夫ですよ中尉。感覚は人それぞれですから」


ミナキ少尉も続けてフォローしてくれた。さすが少尉殿。


「そうか…」

不安ながらも少しでも理解してくれたみたいだ。

たとえ今は難しくても、いつかきっと。

それに……


「わたしはいつでも自由だよっゼノ!」

「お前は自由過ぎんだよ。コノッ……」


アマネもいるし大丈夫かな。ははは……


しばらく楽しい時間が過ぎていった。


旅団という小さな枠組みの中の一つの空間で起きたちっぽけな出来事。

でもそんなちっぽけも、一つの冒険。一つの利益。

依頼では得ることのできない利益の大切さを知ってくれれば幸いだよ。ゼノ……。






___BSF施設内 某所


会話ログ No.2**69*

___Huyuta

_____Kai



「なぁ、今日はどうだった?」

『・なかなかだったよ?』

「まじかー…こっちは駄目だったよ」

『・なら今度また組まない?』

「おっ、いいねー」


『・いろいろあってさ、今度『特殊危険任務』を受けようと思うんだ』

「まじか!?命の保証はないぜ?」

『・あれ、もしかしてビビった?』

「はは…まさか、むしろ歓迎だぜ」


『・あ、旅団隊長だ』

「ん?おっ隊長じゃねぇか」

『・他にもいる…シグ中尉にアマネ上級曹長まで…凄いな』


「アマネ?誰だそれ」


『・知らない?中尉のオペレータだよ。ハックとか情報収集とか凄いらしいよ?最強のベストタッグって言われてるんだよ?』

「ひぇー、どうりであの驚異の任務達成率を持つわけか…」

「あー…で、話戻るんだけど、どこから受けるつもりなんだよ?」


『・あぁ、『グラディオ』だよ』

「…訳ありか?」

『・まぁね』

『・ある人を守らなくちゃいけない。……いや、守りたいんだ』

「人を助ける、ね……お前らしいや」



「それにしてもグラディオか……」

『・ああ、危険任務の大御所さ』

「なんにしてもついてくぜ?チーム「アビス・シィー」のリーダー?」




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