利益と冒険のブリゲージ1
傭兵旅団B.S.F.のストーリー
利益と冒険は切っても切れないモノだ。
冒険しない人は、最低限の利益、または利益の一つも得られないかもしれない。
決められた枠組みの中を越えた冒険者には大きな利益を得るチャンスを得る。
でもそれはチャンスであって確実なモノではない。
不確かで曖昧なチャンス。
だから、この世界には二つの人間、
最低限の利益で不足だが満足する人と
大きな利益を得ようとする人が現れた。
……たまに異端者がいたりもするけどね。
まぁ、そんなことも引っくるめて
キミはどっちを選ぶ?
定められた領域の中で窮屈に生きるかい?
それとも、
ちょっと冒険をしてみるかい?
ん?そう言う自分はどうかって?
もちろん、僕は『冒険』を選ぶよ。
理由なんてものは無いさ。
だって僕は冒険者だから。
___利益と冒険の旅団の、旅団隊長だから。
3月08日
AM 11:47
___BSF施設内 旅団隊長室
「……旅団隊長?」
ん…?誰だろ。
「いい加減、起きて下さいよ。旅団隊長なんですから、少しは…」
「やぁ、おはよ」
「人の話聞いてましたか?」
空気を読まない台詞にピッタリのセリフを入れてくれる。
どうやら大量の仕事を前に二度寝してしまっていたみたいだ。
「ん?まぁいいじゃないか、旅団隊長なんだしさ」
「そういうのを職権乱用と言うんですよ?」
「はは…鋭いなぁ、少尉さんは」
上下関係という立場を利用するも、あえなく失敗する。
階級は上なのになんとも情けない……
まぁ、いつもの事で慣れちゃったけどね。
「大佐さんはもう少ししっかりして下さい。あなたは仮にも上官で旅団隊長なんですから」
仮か…あはは、こりゃ参ったね……
完璧に名前だけになってる気がするのは僕だけだろうか?
「おい、シグ入るぞ?」
「お、中尉様のお出ましだ」
「その呼び方やめろ、普通に呼べ」
「君は上官に対しての礼儀はないの?」
言葉の集中砲火に流石にヘコみかける。
イジメ禁止、ダメだよ?
「お前がそれらしいことをしたら、礼儀の一つや二つしてやるよ」
そんな無茶苦茶だなー、僕がそんなに働き者じゃないこと知ってるはずなのに。
「みんなヒドイねー」
『それはお前が不甲斐ないからだ!』
『それは隊長が不甲斐ないからです!』
「二人ともほんとヒドイね」
二人とも同時に同じ事を口にする。
それにしても、驚くほど息が合ってるなー。コンビでも組めそうだ。
「ふん……とにかく、普通に呼べ。中尉なんてわんさかいるだろ……」
「そんなことないと思うよ?この旅団内に中尉階級は…あれ?何人だっけ?」
とっさに人数が出ずに悩んでる所を先読みで資料をめくって代わりに少尉が答えてくれる。さすがだね。
「旅団登録人数約2500人のうち、50人程度です」
「そうらしいよ?」
「お前、働く気あるのか?」
「ほら……、僕は事務が苦手だからさ。あ、でも大切な書類はちゃんと読んでるよ?」
なんとも逃げ場のない言い訳だけど、実際これしか言えることがない。
「そういえば、キミまた大尉に昇進するの拒否したの?」
「いいだろ、別に。俺は中尉でいい…」
「んー、キミがそれでいいならいいけどさ」
僕はいいけどね、放任主義だから。本人が思うがままに。旅団のモットーだね。
それに彼にも何かあるんだろうしさ。
ゆっくり着実に足を進めていければ、そのうちに物事は途中で立ち往生しながらでも前進する。
そのまま進むもよし、あきらめるのも一つの前進。
でも、時間は止まることなく進む。嫌なことでも、楽しくても、時間を戻したくても。
僕には分かる。ここにいる人たちと接していればおのずと分かってしまう。
「旅団隊長、依頼整理終わらせましたか?」
「うっ…」
「そうですか、今回は逃がしませんよ?」
話がずれていて、いい感じだったのにすぐに戻された。二度寝の原因が蘇ろうとは……
うぅ、めんどくさい。やりたくないなぁ……
「いや…ほら、さっきも言ったように事務は…」
「これ以上仕事溜めてどうするんですか!」
正当なこと言われた…
ここは少し場を和ませようか。
「えーと、貯金だよ貯金」
「そっちの『貯める』じゃないですよ‼」
上手いこと言ったつもりだったけど、逆効果だったみたいだ…もはや誤魔化しは効かないみたい。
「いやー参ったなーあははー…」
だったら………
「ん?ミナキ!耳と目塞げ!!」
「えっ?!」
「とうっ!」
実力行使だ!
「クッ…」「うっ……」
ポケットに入っていた閃光弾のピンを抜き、地面に叩きつける。その瞬間、部屋中が高周波と爆音に包まれ聴覚と視覚の感覚を奪う。
そのうちに僕は退散っと……
「ぅうっ…また逃げたっ!?もうっ!逃がさない!捕まえて縛り上げるしか……」
「上官を縛り上げていいのかよ…あぁクソ…耳鳴りが……」
「ゼノさんも手伝って下さい!私は先に行きます!」
「は?おい……」
「はぁ…」
「どうしてこうなるかな…」
「おいアマネ、聞こえるか?ちょっとした依頼……いや、ボランティアだ」