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関への戸  作者: 鈴祓
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わかりにくく、そして読みづらい文章ですが最後まだ読んでいただけたら幸いです。

血の臭いと火薬と…屍の臭い……

此処は一体、誰が望んで誰が何のために私は…何のために…



「戦っているの…?」



少女の声が聴こえてくると、一人の青年はか細く微笑んだ。





真っ青な空に同じく真っ青な少女の顔が首を上げる。文月の頃によく聞く蝉の鳴き声が森をかきたて、蝉時雨となる。少女の服装はそれとはまったく似合わない冬服の制服に黒のカーディガンを羽織っていた。

気温26度、昼には最高30度をまわるであろうというのに少女はひどく真っ青で弱弱しい顔つきで、たらりと流れる長髪の黒髪はその姿をいっそう病人のように見せあげた。もちろん少女の表情は色が無く、ただただ後悔だけが取り付いているかのような暗く深刻な顔をしていた。

少女の名は、「硲 四季(はざま しき )」といい、この国の春夏秋冬をあらわす色彩のある名だ。しかし当の本人は色が無く、今年で17の年が経つ、いわば「青い春」といわれる年頃の女であった。

彼女の身の回りでは多くの少女達が色恋のために華やかに顔を仕立て、髪を明るくする。この歳で言うとそれらが「伝統」のようなもので、己そのものを美しく、魅力的に見せる一つの方法であった。しかし、四季にとってはそんなモノはどうでもよかったのであった。

「うちの髪、最近枝毛めっちゃくちゃ見つかってマジ大変なんだよね~」

「あっ、ワタシもワタシも!しかも最近色落ちてきてさ~」

つかつかと歩く音、少しヒールがある靴を履く娘たちはその向かいにいる四季を見ると、ボソボソと呟く。

「あの子、またあんな暑そうなカッコしてるよ~。もしかして病気とか?」

「でも最近ああいうタイプの変な子とかいるよね~」

「ああ、そうそう。なんか不思議っ子を演じてますぅ~、的な???」

「あはは!!!なにそれ~。」

「マジそういうのキモいよね、てか真面目に本当に暑そう…ちょっとヤバくね?」

「ちょい急ごうよ、あやり~。結構時間もヤバいしさぁ~。」

「ええ!?もうこんな時間~???よ~し走るぞ紗弥!!!」

四季のことを散々言った挙句、少女たちは走り出した。顔を日の向こうに差し出し、彼女たちは今まさに青春をしていた。

カツカツとなるローファーの音は若々しく彼女たちにあう軽快なステップの音でもあった。

そんな中でも四季はただ一人孤独に立っていた。

四季は学校に向かう、ただ一人忙しく歩く。

この年代の一般の少女たちは仲間を作り、トイレに行こうが用があって職員室などに行こうが一時も仲間を離そうとしない。彼らは一心同体化のようにいつまでも一緒にいる。しかしそれがこの世の中では普通のことで、大人になってもこのような行動が続く。

これはこの社会が作った一つの常識であり、変えることはない人間的行動である。

しかし、四季は別だ。

彼女はいつ、どこで、なにがあろうと仲間はいない、人を寄せ付けない、それが彼女の常識であるからだ。

彼女が学校でとる行動もいつも一人、そして異常なまでに静かであることだけであった。

もともと引きこもり名性格で、友達も作りにくく中学校までは男子たちには気味が悪られ、女子たちにはオタクと勘違いされ差別のような扱いを受けてきた。

現在通っている学校では差別、いじめなどはされてはいないが夏でも長袖、そしてカーディガンを羽織っていてとっても静か、彼女は周りからは嫌でも浮く「物静かな少女」として周囲から認知されていた。

その「物静かな少女」の日常は、学校に行くこと。なんの不思議もないごく普通の女子高校生である。

しいて人と違うところを上げるとすれば、彼女の祖父はアメリカの警察官であって、そして彼はライフル射撃の名人であったこと。

四季は幼少のころから祖父からライフル射撃の練習に付き添われた。もちろん彼女もライフル射撃に関しては一般人以上の知識、そして実技力もあった。

ウィンチェスターM70 、レミントン 700… 小さい頃の四季の頭には祖父の教えとライフルのことで頭がいっぱいであった。

しかし、彼女が小学4年生になった時、彼女の祖父は他界した。

祖父の棺の中には彼の人生であったとも言える大事な、ライフルの時に使う祖父のグローブが入っていた。

この時彼女は思った、「自分は一人大切な人を失った。」と…

そして同時に彼女は祖父との思い出をも忘れようと、ライフル射撃をやめた。

たったこんな、簡単にやめられるようなものではなかったというのに。

17歳になった今でも彼女は心の奥底で尋ねる

だってこれは… こんなに大切だったのに……、と

こんな小さなものに束縛される四季には本当になにも、それ以上のモノは無かったのであった。


四季は思った、「なんでこんなことになっちゃったんだろう…?」と。

もっと誰かと仲良くなれたらな、もっと誰かと普通に喋れたらな、なんで私にはこんなに問題を抱えているのだろう、と。

彼女はいつも自分に問い詰める。過去の自分に、未来に向かう自分に、そして今の自分に。


空を見続ける、空っぽになりたいと何回願いつづけてきたのだろう…

それでも彼女は空っぽにはなれなかった

これからも慣れないだろう


空っぽに


まだ


まだ…?




『おいでませ、おいでまして下さい…』


「っ!!?」

遠くから聞こえる美しい声に四季は驚く。

何故ならこの美しい声の主の姿何処にもなく、そして眺めていたあの青い空から聞こえたからである。

『おいでなさい。彼の方が貴女様をお呼びになっています…さあ、来てくださいまし。』

暑さが突然、寒さに変わる。

目はこれでもかというぐらいに開き、体は麻痺してるかのように全く動かない。

冷や汗が体を駆け巡る

目まいに似た症状

なにかを感じさせるような

不思議な、そして波乱のような


美しい声がまた聞こえる


『戸を、開きに参りましょう。』


~この戸を開く、その意味は彼の男と会うためであったことを~

~この戸を開け、彼の男にこの思ひ伝えるため~


(暗闇に飲み込まれるようだ)

四季はそう感じた。

体中の力が抜けていく。

コンクリートに膝を乗せる、傷ができて血が出ようともそんなのどうでもよく感じた。

ふと感じる。

暗闇の中から懐かしいような、そして見たこともないような風景、感じたこともない音たちが。

川の音が聞こえる、草の香りがする、戦っている者たちが見え、そして目の前に『戸』があって…

(戸…?なんで戸があるの……?)

不思議な力を感じる、そして波乱の予感を感じる、そんな戸を見つめ続ける。

そして四季は思い始めた。

「この戸を開けないと…」

四季の腕は勝手に伸び始め、そして戸を開けようとした。

(この戸を開けたら何が待ってるのだあろう…)

好奇心なのか、それともただの興味範囲なのか?それについては彼女はどうでもよかった。

ただ体が勝手に動き「開けてみたい」と、そう感じたまでである。

しかし伸ばす手は下に垂れ下がっていく。何故なら四季はこれまでにない強烈な眠気に誘われたからである。垂れさがり、そして動きを止めた。

彼女の眼は焦点を留められなくなり、そしてついには目に蓋をしてしまった。


四季は目を閉じる、そしていつの間にか倒れていたのであった。


これから始まるは彼女の運命と、彼の方の運命が交わる

戸の奥に眠る一つの物語である



一応連載物ですが、気の向いたときにしか書かないのでだらだらと続くと思います…

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