表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

拾った成猫

 猫を拾って6日目ーーー


 プロジェクトを降りバックアップにまわったことで会社での風当たりはすぐに弱まった。最近ちゃんとご飯も食べていたので胸もDカップへ戻った。ちなみに私は太ると上半身(主に胸)に肉がつくという体質だからいつもDかEカップだ。



 書類と格闘し終えべっ甲のバレッタで一つに束ねていた髪をきれいに直した時、後輩が声をかけてきた。


「先輩!お昼ご飯行きましょー」

 明るくてお仕事頑張る後輩の美佳ちゃん、オフィスではお財布振り回すのはやめましょう....ほら課長がジトッと睨んでるわよ?



 近くのイタリア風バールで生ハムとルッコラのパニーニとオレンジジュース、美佳ちゃんはベーコンとほうれん草のキッシュとアップルサイダーを注文し席に座った。


 私がプロジェクトへ決まった際と辞退した際に、びっくりするほど喜んで、そして怒り悲しんでくれた。少し茶色の肩までのボブとプニッとしたほっぺたがかわいい、人の気持ちを思いやれる本当に優しい子だ。


「先輩が完全にプロジェクトから抜けなかったんで、翻訳が必要なものや案の構想のまとめが早く出来そうだって斉藤先輩が言ってましたよ。しっかし真由子先輩を叩いてたやつらホントにムカつきますね!今では素知らぬ顔じゃないですか!?あんだけ書類にハンコ押し渋ってたり必要な時にわざといなかったりして真由子先輩の伝達ミスのせいにしたりしてたのに!」


 美佳がキッシュをぱくぱく頬張りながらキーキー言ってるのを見て、真由子は密かにハムスターみたいだと思った。


「いいよ、もう。そんなことがあって仕事にスムーズにいかなくなったら大変だもの。このプロジェクトは集中的に行うから一つの案にあまり時間がかけられないからね。」


「う、そうですけどぉ」


「それより、斉藤先輩とはどうなの?ご飯くらい誘えばいいじゃない」



 そう、美佳ちゃんはプロジェクトに加わる営業部の斉藤先輩に恋をしている。そして斉藤先輩もまんざらじゃないみたいなのだ。企画部へ来た際にチラッと美佳ちゃんを見ているのを私は密かに知っている。こういう時、いいなぁ恋愛って...って思う。落ち着いた先輩がキーキー言う美佳ちゃんをなだめている所を想像するとプププと笑ってしまう。


 お互いを思いやれるなんてすごく素敵なことだと思う。



 突然しどろもどろになる後輩との楽しい食事を終え、またパソコンにかじりついた。今日中にエクセルで途上国数ヶ国と主要な日本企業の貿易グラフを作らなきゃ。






 出来ることをやる。機会はまたやってくる。そう信じていなきゃ......悔しくて泣きそうだもの。








 アパート近くの小道で、私は立ち止まっていた。暗闇でよくわからないがベージュのような色の猫が横たわっている。かまぼこよりもだいぶ大きいから成猫だと思う。


「猫、大丈夫....?」

 死んでるんじゃないかと恐る恐る声を掛けるとうっすら目を開き「みゃぅ....」と弱々しげに鳴いた。こりゃ危ないと私は猫を抱きかかえ家へ急いだ。



「かまぼこただいま!猫拾っちゃった」

 ドアを開け、居間へ入り猫を新聞紙の上に横たえさせた。するとおかえりーと小走りでやってきたかまぼこが猫を見て「みぎゃっ!にゃう!んにゃぅぅ」と鳴き出し猫をたたき始めた。目を開けた猫にホッと安心したようにかまぼこはソファへ飛び乗った。


 私はとりあえずご飯だと思い、ミルク粥とかまぼこ用に買った栄養剤をスプーンで与えた。私はあとでご飯食べよう。

「だいぶ動けるようになったわね。かまぼこと知り合い?なんだか目が恐いけど」


 ご飯を食べ力が出たのか猫はさっきからジーーーッとかまぼこを睨みたまににゃあにゃあ言っていた。かまぼこはソファに寝そべりしっぽをユラユラ余裕の表情だ。子猫なのにふてぶてしい。




 拾ってきた成猫は明るい場所で見ると驚くべき美猫だった。シャンパンゴールドのような毛色で、瞳は濃い紫色だった。こんな毛色の猫いたっけ?と思いつつもかまぼことおなじく気品あふれる猫には違いなかった。


「さて、少し汚れてるからお風呂に入ろうか?かまぼこはゆっくりしててね」



「にゃ?」

 猫はいきなり抱えられ驚いたようで、手足をバタバタさせていた。


 まぼこは「ぅにゃぅにゃん、なふっ、んにャァ」など奇声をあげていた。まるでニヤニヤと笑っているように見える。







 そして先に猫を浴槽近くへ放り(まだ若干暴れている)、服を脱いでガラス戸を開けた。


 すると浴槽を眺めていた猫は振り返り......



「みゃ....みゃ!?」


 ぴょーん!


 カシカシッ!


 鳴いて飛んで床を蹴るという、全く同じ反応に笑ってしまった。しかし猫なのに裸を見て飛び上がるなんてかわいい。


「さぁ汚れたとこを洗ってあげましょうかね」


 かまぼこの時のように、床にぺたんと足をつけ暴れる猫をガっと膝のところでおさえた。「フーフーッ」言ってるけど気にしない。いい子だからひっかいてはこないみたいだし。猫は私に背を向けてお座りして観念したように静かに石鹸で洗われている。たまに「....んにゃ」など聞こえてくるから気持ちいいんだろう。どうだ私のテクは。


 少しするとかまぼこがガラス戸の前に来ていた。なので逃げようとする猫を押さえかまぼこを浴室へ入れた。まだニヤニヤしているようだ。気品があるのに.....。猫はさっきよりも激しく「フーッフーッ」と鳴きかまぼこを威嚇し始めた。



 そして猫をひっくりがえし向かい合わせにした瞬間、やはりちょっと驚き視線をうろうろとさまよわせていた。猫に私のDカップの柔らかくて形もいい美乳を見られてもなんともないのにな?と思いつつ、猫を持ち上げた。


「あ、君も男の子なんだね」


 そしてやっぱり......ぱっちり目を見開きチロリと少しだけ舌を出してカチンと固まった。









「ウにゃんにゅ、うにゃにゃにゃゥ」


 かまぼこ、その鳴き声気持ち悪い。言っとくけどあんたも同じ反応だったんだけど....と心の奥で呟いた。




この猫の名前は何になるのかはもう決めています。


ご覧になった方も多くいると思いますが、かまぼことのお風呂を詳しく書いた話を「活動報告」のお礼小話のところにおいています。よかったらぜひ

(あ、ストーリー的には読まなくても全然問題はないです)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ