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それぞれの存在

 静かな薄暗い部屋に何かを叩く音が響いていた。1人の若い男が眉間にしわを寄せ書類を手にしていたところ、扉の向こうからバタバタと音がしてきた。さらにしわを深めた瞬間、バンッ!!という騒々しい音と共に白髪まじりの小太りの男が転がり込んできた。



「夜分遅くに申し訳ございません!なにぶん急なことで.....」


「あぁ挨拶はいい。で、ギル、どうだったんだ?」



 コツコツと机を叩いていた指を止め、両手を組み顎をのせ目線を向けた。ギルと呼ばれた男はまだ興奮した様子であったが、息をととのえつつゆっくりと話し始めた。



「やはり殿下の仰る通り、扉で異界へ行ったと思われます。扉はまだエリック様の部屋にあることはあるのですがエリック様しか通れないようになっていまして、魔術研究員も右往左往している状態です。しかしまさか創り出すのではなく、クローゼットの扉にあんな高度な異界渡りをかけるとは思ってもいませんでした」


「そうか。いつもすまないな。エリックが迷惑をかけて」

いつもいつも自分を悩ます存在に頭を抱えたくなった。



「とんでもない。エリック様はまだ12歳ですし若い頃は何にでも挑戦してみたくなるものです。私もはるか昔研究長になるまでは無茶ばかりしましたよ。まぁ今回の件は度が過ぎますが....それにあななたち兄弟の迷惑を数えていたら指が何本あっても足りませぬぞ?オルベルト殿下」



 ギルはニヤリと笑い反対にオルベルトは苦虫をつぶしたような顔になった。今では執務室の机に座って雑務をこなすが、昔はずいぶん”やんちゃ”をしていた。



「この件は俺が直接解決しよう。扉を通らずとも血がつながっていればたぶんどうにかなるだろう」

オルベルトは重い腰を上げ、ギルとともに弟のエリックの部屋へと向かった。



ー*ー*ー*ー



 真由子は以前から、あるプロジェクトの企画チームに参加していた。チームの筆頭は名川部長であり、真由子はこのプロジェクトのために仕事をしつつ語学の勉強や資格取得など並々ならぬ努力をしてきた。



 そのプロジェクトとは「貿易会社でありながら、貿易関連会社にフェアトレードを推奨する国際プロジェクト」だ。フェアトレードとは、途上国の生産者に公正な賃金や労働条件を保証した価格で商品を購入することで、途上国の自立や環境保全を支援すること。


 もともと、不正貿易などの見直しについてのプロジェクトに関わりたいと昔から望んでいた。今その一歩を踏み出せるかもしれない、と強く感じているのだ。







「片岡すげぇな、その歳で抜擢かよ!」「真由子先輩すごいですっ!」

 何人かはそう声をかけてくれたので私は「ありがとう。企画コンペとか頑張ったかいがあったわぁ」とか「調査に協力してくれたおかげだよー」と喜びを素直に受け止めた。



 その一方で嫉妬による理不尽な誹謗中傷を受けることもある。でも私は毅然としていた。常に飄々としていたし、負けたくもなかった。

 

 しかし最近、「片岡真由子は上司たちを誘惑しプロジェクトチームへ入った」という噂が流れたため、現在はチームメンバーと共に社長室にいる。



「片岡さんは正義感が強くそんなことをする子じゃない」

「ひがんだ奴らがそんな噂を流しているだけです」


などと、部長や先輩たちが必死に言っているので私は不覚にも泣きそうになった。



 そうなのだ、話が飛び火しすぎたのだ。一緒にプロジェクトを行う他企業などへの我が社の信用が失われてしまう可能性が出てくるまでに肥大してしまった。



 私はプロジェクトを抜けバックアップにあたることを決めた。

 みんな必死に引き止めてくれた。だけど自分だけが侮辱を受けるならいいけど、我が社のイメージダウンになったりお世話になっている上司や、なにより厳しくも優しい名川部長に迷惑をかけたくもなかった。それにまた次の機会もやってくるかもしれないからその時を待とうと思った。



 噂で人間の信頼関係や家族が壊れたりすることが多くあることを真由子は知っていた......









「かまぼこーただいま」


”ぼふん!”


ん?ぼふん???大きくて不思議な音が居間から聞こえたような?まさかかまぼこのお、おなら....?など考えていると、



「ニャうん!」


 かまぼこはトトトッと軽く足音をたて玄関まで迎えにきてくれた。

 拾ってきてからもう3日間一緒に生活しているが、この噂で気がめいりそうになってもかまぼこがいたからどうにかやっていけていた。


「んにゅぅぅ?」

何だか泣きたい気持ちになり浮上出来ないまでに気分が沈みそうになっていたら、下から心配そうな、そして何か心の奥深いところまで見透かしたように見つめてくる視線が絡みついてきた。側にいてくれてありがとう、かまぼこ。



「いい子にしてた?今日の夕ご飯はおでんだよ。たまご、ちくわ、大根、あ、かまぼこも入れるよ。鶏肉もいれるから、最後は鶏肉の和風リゾットで〆ね」

 かまぼこが大好物なかまぼこは、しっぽをピン!とたてにゃうにゃぅ鳴きながら脚に擦り寄ってきた。まるで言葉がわかってるみたいでなんだか笑えてくる。



 

 人に話したり泣くことが得意じゃない私は、行き場のない怒りと悲しみを心に閉じ込めた。





理不尽なことは誰しもが直面すると思います。その中で、何を考え誰を相手にどんな方法で戦っていけるかで人間は大きくも小さくなるような気がします。


私は小さくなってる気がしますね。ボーン


携帯で読まれている方が多くいますので前書きは書かないことにしました。読みやすいかな、と思って(^^;)


今回は説明的ですみません。次回はふんだんに面白くしようと思っています!また次回もよろしくお願いします。


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