綺麗にならない?
こんにちは。桜が咲いてきましたね。近所では桜祭りなるものがありました。某検索サイト様に登録しようと考えていますが、パソコンに疎いため軽くパニックです....絶対なんか間違ってそうです(^^;)
ではお楽しみください。
「ごちそうさまでした」
テレビで今日のニュースをチェックしつつご飯を食べ終え、すでにご飯を終えた子猫を膝の上に乗せ紅茶を飲んでいる。
今日の紅茶はミルクたっぷりの「アッサム」で、それにすりおろしたショウガを少しとハチミツもいれてある。
子猫はお腹いっぱいになったのかゴロゴロと喉を鳴らしている。時折、ジッと見つめてくる。
「どしたの、にゃんこ?私が美人だって?」
一人暮らしならではの独り言をいいつつ肉球をムニムニする。
ただお腹いっぱいで眠いのかそれが気に入らないのかわからないけど、「なん」「んにゃっ」など鳴いている。てしっとパンチされても痛くも痒くもない。
その時携帯にメールがきた。差出人は.....過去の人。
嫌いになって別れた訳じゃない。ただ遠距離恋愛になってしまってうまくいかなくなり、向こうから別れを切り出された。
ーーーーー
『ごめん、やっぱり離れるとだめだ』
付き合って3ヶ月目。なんとなくそんな電話だろうと分かっていたので、強い女を演じるしかなかった。
引き止めるなんてことできなかった。なんだかむなしくなる気がするし、何より相手がそういう女の人を嫌がる人だった。
『いーよ、そろそろそんなこと言ってくるのわかってたしね』
『うん。ごめんな』
『ハイハイ、まぁ友達に戻ろう。あんまり私のことは気にしないで大丈夫だからね』
精一杯声だけでも元気なふりで大丈夫と言い強がった。友達というポジションだけが唯一の橋だ。好きなのに別れた。それがつらい。だから何年もしこりになってる。別れて以来会ってないのに友達として存在してる私は一体....
この前久しぶりに届いたメールは共通の友人が入籍したということ、ヘッドハンティングにより転職したことの報告だったのでとても楽しくメールできた。入籍の話はおめでたい上に嬉しいものだし、仕事先の件も頑張ったんだなということが分かる日本最大手の証券会社だった。そう、こんな風に何ヶ月かに1回はメールが送られてくる。
しかし今届いたメールには彼女がよくわからないという恋愛相談だった。それに適当にアドバイスなど返信をしてメールを終えた。
何だか無性に泣きそうになった時、下から視線を感じた。
私の顔を観察してる。膝の上で丸まってる猫の金色の目が私の情けない感情を読み取っているように見えた。
アッサムをぐいっと飲み干し、猫をソファの上に乗せて頭をぶんぶん振る。
「さ!明日のお弁当の準備して食器洗ったら猫も一緒にお風呂入ろうねー」
「にゃうん?」
何を言われたのか分からないからか、私のテンションの浮き沈みを不思議に思ったのか、猫は小首をちょっと曲げてソファの上でお座りしていた。
明日のお弁当は、今日の残りの菜の花の和え物と唐揚げと卵焼き。
卵焼きは毎日朝につくる。気分によって砂糖だったり、ダシ巻きだったり、醤油マヨネーズだったり、青のり入りだったりする。
唐揚げの下準備をして完了!このストレス解消兼節約の趣味は本当に最高だ、と自負している。
お風呂の準備が整い、洗面台の前に立つ。
最近忙しかったからかなり痩せちゃったかな。肌荒れはないみたいだけど....と、ブツブツつぶやいていた。
実際、真由子は痩せている訳ではなくスレンダーなだけだ。大学時代の友人や会社の同僚からは「真由子はなにを食べても太らない」となぜか怒られていた。
身長165cmでスラリとした腕と脚、そして色白の肌とぱっちりした目と紅い唇、腰までのちょっとだけ内側にくせ毛がかった漆黒の髪の存在は、彼女を強くも見せ、また儚くもみせていた。
それに加え、笑っていても何を考えているか読めない、また謎の私生活などから一部の男性から「深海の黒百合」とささやかれていることを、本人は知らない。
まぁ特に進んで恋愛をしようと思っていない真由子は自分にあんまり興味がないようだが.....
「猫ーお風呂入るよ、綺麗にしてあげるー」
私はまず脱衣所にいた猫を先にポイッと浴室へ放り込んだ。そして自分も服を脱ぎ髪を一つにまとめ浴室へ入った。すると、水がたまった浴槽を不思議そうに観察していた猫が振り向き、ぴょーん!と飛び上がった。私もビックリだよ。
「に.....にゃ!?」
わたわたと地面を掻きながら前へ進もうとするがタイルが滑ってうまくいかないみたい。びっくりして爪が出てるからなんじゃないのかな?思わずクスリと笑いが漏れてしまう。
「さぁにゃんこ様、お身体洗いましょうね」
しかし捕まえようとすると、
「んなっ!にゃう!にぎゃうぅぅ!」フーッと怒られてしまった。
ムンズ!と捕まえ、ぺたんと女の子座りをしていて付いていた両足の太ももに猫をはさみ、向こうを向いていた猫の背中からゆっくりとお湯を掛けた。
一瞬ビクッとしたが、次にはトロンとした目で「んみゃウー」と何とも気持ち良さそうな声で鳴いていた。
こっちをむかせた際に再度ビクッとして目が泳いでいたが結局おとなしくなってくれた。
「ふんふん、ふふーん」
鼻歌を歌いながら猫を無添加ハーブ石鹸で洗った。動物用シャンプー買わなきゃね。
しばらくじっとしていた猫だが突然、てっちてっち、むにむにと私のお腹や胸をペチペチと肉球パンチしてきた。
「あっ、やっ、猫!なんて失礼なの。女の子のお肉はやわらかいんだから。もー」
しばらく私の邪魔にならない程度に私の胸を中心にたたいていたので放っていた。だって猫だしね。爪さえたてなければいいしね。
「ぁんっ、そこはくすぐったいからダメ」
しばらくして泡を落とす為にお湯を掛けようとしたらパンチを断念したみたいだ。今はプルプルと身体を震わせ水はじいて毛並みを整えている。
私は自分の身体を洗い、浴槽へ入る。
どうやら猫も入りたいみたいなので体育座りしてお腹と太ももの間に入れてあげると、またトロンとなっていた。
しばらくお互いにジッと見つめあっていた(ちなみに私が見ていた理由は、猫ってぬれてる姿はまぬけだから面白い)けど、猫はフッと顔をそらし私の首に付いた水滴を舐めてきた。
「やっ!猫っ舌痛い!」猫の舌はザリザリする。
すると猫はショボンと項垂れ、でも気持ち良さそうに私の肩や胸に身体を預けてきた。
これからはたまにお風呂へ入れてあげるねーと話しながらあることに気付いた。
「にゃんこ様、お名前なんにしましょう。男の子だから強い名前がいいよね」
「なっ。にャうん」
そう、猫はどうやらオスだった。洗っている時に「あ、男の子なんだね」というと、なぜかカチン、と猫は固まってしまった。
う〜ん....ファラオ、権兵衛、バンジー、ポン吉、ヘラクレス.....色々と男の子っぽい名前をあげたけど、この猫にはどんな名前も合わない気がした。
漆黒の毛並みに月と黄金を合わせたような色の強い瞳、歩く姿だって猫のくせに何者にもとらわれない品格を携えてるように感じる。
「ダメだ!決まらない!こうなったらもうあなたの名前は”かまぼこ”ね!」
真由子のネーミングセンスが爆発した瞬間だった。
真由子は出会いの思い出の品を名前にしました。まだ全然R15じゃない...。ちなみにうちの実家の猫は拾った場所の名前をいじりました。
読んで下さる方がいらっしゃるみたいで嬉しいです(*^^*)飛び跳ねました(事実)
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