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散々な日々(改稿)

R15です。ご注意ください。


 小さい頃、私はグリーンピースが大嫌いだった。だからいつもシチューやハヤシライスに入っているのを取り除いては怒られていた。


 でも大学生になって一人暮らしを始めた頃、某デリカテッセン(サンドイッチや持ち帰り用の西洋風惣菜を売る飲食店)でグレープシードオイルで炒められたベーコンとビーンズの中に入ってのを気付かずに食べて気付いた時には好きになっていた。無性にグリーンピースご飯が食べたくなったこともあるくらいに。




<嫌いなものはいつか好きになる>そんな夢を見ていた。




 なんだかあったかいものに包まれている。



 目の前のものに頬ずりすると背中をギュッと抱きしめられた。グリーンピースご飯に塩をふって大事におにぎりにしてるようにギュッと。


 優しく頭を撫でられている。最後に綺麗なおむすびの形に整えるように。



 でも私はおむすびに食べられたみたい。だって口が塞がって息が出来ないから。

 息をしようと唇を少し開くと柔らかいものが深く入り込んで私を貪ってる。おにぎりに食べられるのはおかしい。私が食べるはずなのに、と頑張って私も口を開けて舌を絡ませる。チュッと吸って逃げられないようにするともっと深くまで貪られてしまう。


「んぅ、ふぁ....」

 

逃げようとしてももっと強く抱き込まれてしまう。

「はっ、む.....ぁっ」


 この心地よさが現実か夢かわからないまま、また何も見ない世界へ漂って行った。








 ちゅんちゅん。バサバサ。ピーチチチ....



 目の前にさらさらとした金色の毛並みが見える。社長だ。ぎゅっと両手で温かい毛並みを抱き寄せスリスリ頬ずり。



 むぎゅー。かわいいな社長。


 その時くぐもった低い声が下から聞こえた。私は目をうっすら開けたまましばらく社長を撫で回していた。


 が、もぞもぞさわさわと腰やお尻を撫でられているような気がする.....。


「え!」

 慌てて社長を引き離した。私は見知らぬ部屋で人間であるオルベルト殿下を抱きしめていた.....。うわ、すっごく怒った顔してるよ。起き上がった社長から睨みつけられた。


「う!頭いっったぁ....」

 思わず二日酔いの頭をかかえる。ゆっくりと起き上がると白いシーツがハラリと落ちる。私昨日はどうしたんだっけ?記憶がない。


「しゃちょ、いえ殿下。すいませんがこれは、ここは一体.....」

 あぁ、頭が痛いぃ。


「ふっ、絶景だな。言っておくが未遂だ」

 ほどよく筋肉が付いてしなやかな上半身をさらしている。絵になりますね。そんな殿下は目を細め私を眺めていた。


 未遂?絶景?嫌な予感がして自分を見ると、ハダカ!!


「な、なんで!?私昨日、えっと?や、やってないですよね....」

 胸を片手で押さえシーツを引き上げた。どうやらパンツははいてたのでハダカではない。とはいえ不安は拭えない。


「お前は飲んだくれた後、服がキツいと自分で脱いだんだ」


 こんな悪酔い一度もなかったので自分でもビックリした。

「....わかりました。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。服を着ますので少しあちらを向いてていただけますか」


 バサッとバスローブが投げられたがこれを着ろってことだろう。殿下はさっさと同じものを羽織りスタスタ歩いていった。



 私はあることに気付いて声を荒げた。

「ちょ、ちょっとおぉぉぉ!!」

 だって赤い斑点、いわゆるキスマークが胸元や二の腕にくっきりとついている。嫌な予感がして思わずシーツを捲ってみると何故か太もものき、きわどいところまで!ひいっ!足首にまで!鏡を見てないからわからないけど、恐らく首にもつけられているだろう。


ん?しかもなんか口内や唇がぷっくりとしてたり違和感があるような.....



 唇に手を当てていると、クックッと笑い声が聞こえた。


「お前はどこも柔らかいな」

 そう言い置いて肩を震わせるやつの姿は扉へ消えた。


「このヘンタイ殿下!!!」




 しばらく怒りとパニックでベッドにもぐっていたが、迎えにきたミリアに連れられ部屋へ戻った。なんだか微笑を浮かべている。


 お風呂が隣室にあるのでさっさと逃げた。が、魔力がないとお湯がでないためミリアに入れてもらう。そしてドレスの着付けの際は必然的に裸を見られる訳で.....


「やっぱり!さすが真由子様!」とか「あの殿下が....!」

興奮状態のミリア誤解を解くのが大変でした。




 ー*ー*ー*ー



 それから数日は殿下と会うことはなかった。公務の仕事が忙しいらしく行動の時間帯が違うのだ。


 しばらく会いたくないのでちょうどよかった。いつの間にあんなに.....背中も含め何十個あるんだ。




 私はしばらく自室と中庭で過ごした。

 サンドラ女史にこの国のことについて色々教わるためだ。サンドラ女史は、老舗の香水店の跡を継ぐまで魔術学校に勤めていたという。今回はエリック君の口添えで私の専属教師になってくれた。なんと旦那様はこの城に仕えているんだそう。いつかお会い出来るそうなのでとても楽しみにしている。


 ちなみにエリック君は私の首、腕にあった赤い痣をめざとく見つけると、にっこり笑って消えた。一体どこへ行ったんだろう?






 私にも魔力があるので魔力を表に引き出す練習をすることになった。魔術、財政、法、生活様式、マナーetc。完璧な女性だ、エリック女史。そしてスパルタ.....



<何をどうしたいかを頭に思い浮かべ、力をその一点に集中させる>

 ほぼ全国民はそうやって魔術を使い生活している。簡単なようで難しい。

 害をあたえるような魔力は禁止、もし法を犯せば自身だけでなく家族など関係者にも仕打ちがある。絶対に魔術で犯罪を犯さないため、罰金や牢獄以外にも残酷だったり厳しい刑罰がある。




 が、私はどんなに念じても何も起こらない。何日も何日もやっているのに。女史も困惑気味だ。



「真由子様の魔術はもしかしたらまだ発動される時期ではない可能性があります」

 中庭で女史とお茶をしていた際にそう言われた。


「どういうことですか?」

 紅茶を飲む。今日はレモンティーだ。ほんのりと蜂蜜が入っている。



「魔力は普通なら5、6歳頃の子供は使えます。本当に羽のような軽い物を浮かせる程度ですが。それから初等学校へ通い魔術に付いての法など様々なことを学びます。そこで特に優れていると判断されたものは魔術学校へ移るということです」

 確かに小さい子は手の届かない物をとろうとするけど動けない。だからその時初めて微弱の魔術が発動される。



「つまり、羽も浮かせられない私は6歳児未満なんですね」

 目の前のバタークッキー、紅茶、そして練習用の羽を見つめながら思わず呟く。



「えぇ。そうなります」


 女史、軽く傷つくから目を見てハッキリ言わないで!こう見えても仕事もバリバリしてきたし、この国のこともすごい勢いで吸収してる。なのに魔力がないなんてどうしようもない。




 私はどうなるんでしょうか....。


 たまに一緒に食事をする機会があるエリック君には食後にかまぼこになってもらう。テーブルに突っ伏していると、たしたしっぷにっと頭をたたいて「にゃぁ」と鳴いてくれるんだ。目尻が下がるのは仕方がない。エリック君ももちろんかわいいけど。



 たまに猫の姿になってやってくるから一緒にお風呂に入る。私が日本でお風呂で洗ってあげたらすごく気に入ってくれたみたい。

 マッサージ付きだと尻尾を動かし「んみゃうっ、なーぅ」などたいそうご機嫌だ。湯船で泳ぐ子猫ってかわいらしい。人間の姿だと一緒に入るのは抵抗あるけど猫の姿だしね。





 エリック君曰く、この国や城には猫が多くいるらしい。魔術を秘める動物だから。


 猫と言えば、今度ジンジャーエールを作ろうかな。

 生姜、水、ハチミツ、砂糖、鷹の爪を鍋で煮込む。生姜が透き通ってきたら、レモン汁、シナモン、あればグローブをいれる。あとはソーダで割ったりしてピリッとした辛さを楽しむ。エリック君には猫の姿で飲んでもらおう。ハインラインの小説「夏への扉」に出てくる猫がジンジャーエールを飲むように。


 あと、ここには大きな厨房がいくつかあるようだから使用許可をもらう予定。ストレス解消だ。


 ここへ連れられたことで多くの物を無くしてしまったけれど、こんなにいい待遇をさせてもらってるんだからご飯でも振るまいたい。あの変態にもお裾分けしよう。城のご飯に比べ質素だけど、エリック君にも「また作って!」と目をキラキラさせて言われたしね。私も気付いたんだけど、この国の料理は結構ワンパターンなものが多い。輸入も盛んで食材が多いならもっと活かせばいいのに。



 


 毎日が勉強で大変だけど、こうやって前向きにならなきゃ。

 


 



ヘンタイが出てきました。


ジンジャーエールの作り方や中に入れるスパイスは様々ですのでお好みでどうぞ。


夏への扉 http://ja.wikipedia.org/wiki/夏への扉

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