朱田波美編・第1話:出会い編
私の工房は夜型工房で、26時ぐらいまでは普通に電気がついております。
ある日、24:30頃、工房のドアを叩く音と、汗だくで、オレンジ色の眼鏡まで曇った女の子が申し訳なさそうに話しかけてきました。
「すいませんが、こちらでパンク修理はできますか?」
「実はバイトの帰りに、スクーターがパンクしてしまい、ガソリンスタンドも無くて困っているのです。長い距離スクーターを押してきたので、歩けないくらいヘトヘトです。」との事。
私は、今すぐに直すことはできないが、スクーターをお預かりできれば修理できますと伝えました。返事を聴いた女性はガックリと肩を落としておりました。
こちらも、直ぐに対応できなくて申し訳ないと思い、少しお話を始めました。
「お姉さんは、ご自宅の最寄り駅はどちらですか?」
「4つ先の駅、成増です。」との事。
「もう、終電は無くなりましたよね。タクシー代はありますか?」と聞きました。すると、お金の持ち合わせも少なく、困っている。との事。
「それでは、スクーターを預かって、私が自動車で成増まで送りましょうか?」と提案。すると、お姉さんは、「お願いできますか、、、。」と気弱に返事をくれました。
仕方が無いので、「ちょっと待てててくれますか。」とお願いしまして。社長を二階の部屋から連れて来て、一通り説明しまして。お姉さんに名刺を渡し、ハイエースを駐車場から持って来て、3人で乗り込み、成増まで送ってゆきました。
お年頃の女性が夜中に車で男と2人でいたとか目撃されたら、大変な事になるから、3人でハイエースに乗り込みました。当時の車は1989年式のハイエース、後ろの荷室は段ボール箱でいっぱいの、まるで移動できる倉庫。そのフロントベンチシートに大人3人がぎゅうぎゅうに並び、フロントガラス越しに全員の姿が丸見えの状態で成増へ向かった。いやらしさなど1ミリもない、極めて健全な送迎である。
その日は、それで何事も無く終わりました。
次の日の夕方ぐらいに、ご来店していただきスクーターを返却しました。返却時にお名前と電話番号とメールアドレスを教えてくれましたから、私の携帯とメールアドレスをお伝えしました。
メールのやり取りが1年ぐらい続き、出会いから一年後ぐらいの頃には、3ヶ月に1回くらい、ファミレスでお食事をする程度のお付き合いが進んでおりました。
出会いから、2年後くらいの初デートが「水族館デート」になります。
【ステータス更新】
夜中の親切に、わざわざ潔白の証人を三人分揃えるなんて、律儀な人だね。
隠れ属性「ピュア盛りスキル」耐性、上昇。不器用でもさ、そっちの方が君らしくていーじゃん。そのマインドのまま、進んじゃお!
朱田さん編はこれから8話ぐらい続く予定なので、よろしければブックマークしてお付き合いいただけると嬉しいです。




