2人の令嬢~婚約編~ 33
セシリアを見送り、レオンとリリアナ、それにレオンの友人ふたりもそれぞれの迎えの馬車を見出した。
「お、うちの馬車が来てるな」
「我が家の馬車も来ているようです」
ロイドとアランが御者に向かって軽く手を挙げた。
「我が家の馬車もあちらに来ている。では、ここで解散だな」
リリアナは、兄の友人達に向けて礼をとった。
「今日はロイド様とアラン様にお会いできて楽しかったです」
家では見られない兄の様子が見られて楽しかったし、学園の様子もいろいろ教えてもらえて感謝しかない。
「こちらこそ、お会いできて良かった」とアランが微笑み、「私もですよ、リリアナ嬢!」とロイドが屈託なく笑う。
「じゃあまた、学園でな」
と言うレオンがエスコートのために差し出した左腕に手を乗せて、リリアナも挨拶をして馬車へ向かって歩き出した。
馬車に乗る前に振り返ると、二人が手を振ってくれているのが見えて、リリアナも小さく手を振り返してから馬車に乗り込んだのだった。
馬車はまもなく動き出し、軽い振動を感じながらリリアナはほぅ、と軽く息を吐いた。
「疲れたか?リリ」
隣に座る兄が気遣わしげに顔を覗き込んでくるのに微笑み返す。
「いえ、大丈夫です。こんなに多くの令嬢や令息が集まっているところに来たのは初めてなので、少し緊張はしましたけれど」
「殿下へのご挨拶も緊張したのだろう?」
「それはもちろん・・・王族の方にお目にかかるのは初めてでしたし」
フレデリク王子殿下は、金髪で見目麗しくまさに『王子様』という感じがした。でも、リリアナにとってみれば個人的な『事情』であまりお近付きになりたくはなかったので、兄がさらりとした挨拶だけで引き上げてくれたのはとても助かった。
「まぁ、なにはともあれご挨拶は無事に出来たし、リリはセシリア嬢にも再会できたし、良かったな」
「はい!お兄様のお友達にも会えて嬉しかったです」
そう言うと、レオンは苦笑した。
「彼らには前々からリリの話をよくしていたからな。彼らにリリを紹介出来てよかったよ」
「私もセシリア嬢を紹介出来てよかったです。きれいで素敵なご令嬢でしたでしょう?」
「そうだな、それにとても賢いご令嬢だと思ったよ。ロイドがあんなに特攻をかけても軽くいなす話術は大したものだ」
はて、ロイド様はいつ『特攻』をかけていらしたかしら?と言いたげな顔をしているリリアナをみて、レオンは微笑んだ。
「ロイドはヴェルリンド家の方々に並々ならぬ憧れを持っているんだ。彼も武門の一族だからね。だから、ご令嬢と知り合えた機会を逃さずもっと親しくなりたかったんだろうが、セシリア嬢は誰か特定の個人と親しくなるのを上手に避けていらしたよ」
「まぁ・・・」
全然気づかなかった。
「では、私とシアばかり話してしまって、お邪魔をしてしまったのでしょうか」
「いや、まさか。リリもセシリア嬢もお互いに会うのを楽しみにしていたんだ。この場合お邪魔だったのはロイドの方さ」
レオンが楽しげに笑いながら言うので、リリアナは胸を撫でおろす。ロイドには少し気の毒なことをしてしまったが、今回は勘弁してもらおう。
「タウンハウスに戻ったら、父上と母上に懇親会の様子をお話ししなくてはな。リリはセシリア嬢のご招待の件もご報告しなければならないだろう?」
「そうですね!会場も素敵でしたし、招かれている皆様も華やかで・・・王太子殿下にも無事にご挨拶できましたし、話すことがたくさんありますわ!」
そうして、懇親会での出会いを語り合う兄妹の乗せた馬車は、公爵家のタウンハウスまでの道のりをゆっくりと進んでいったのだった。
時を少し遡りーーーーー王宮の庭園では、懇親会に招待された子息子女がタイミングを計って辞去していく姿が見られるなか、王太子フレデリクの周囲にはまだなお多くの者が残っていた。
その中心は、東の公爵家のプリシラ・ランディール公爵令嬢とその取り巻きと化したご令嬢達である。
「まぁ、それでは王太子殿下は、王宮での王太子教育だけでなく、学園でもたくさんのことを学ばれているのですね」
「そうだね、その通りだよ。もちろん王太子としての教育は責務なんだが、学園での学びも新鮮だしね」
可憐な令嬢からの控えめな追従に気を良くしたフレデリクは朗らかに笑う。実際、王宮でも学園でも学ぶということは時間的にも内容的にも大変なのだが、これも王太子の務めである。やって当然のことだが、それでもこうして控えめに賛辞を贈られるというのは悪い気はしない。
「・・・わたくしも、頑張れば殿下のご学友のひとりになれますでしょうか?」
自信なさげに小さく呟くプリシラに、フレデリクは頷いた。
「プリシラ嬢は来年、いずこかの学び舎に入学なのだったね?もちろん、グランディス学園に入学できればプリシラ嬢も私の後輩となる」
フレデリクの言葉を聞いて、プリシラはふわっと微笑んだ。
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