2人の令嬢〜婚約編〜 26
「おふたりは、学園では何を専攻されているのですか?」
リリアナが問いかけた。
ロイドがにかっと大きく笑って答える。
「私は剣術と魔法学ですよ」
アランも控えめに答える。
「私は魔法学と薬草学、あとは政治経済学です」
レオンは魔法学と剣術と政治経済学だと聞いているので、それぞれの友人が重なる課程を学んでいるらしい。
きっとそれぞれが将来のために必要だと思われる事を専攻して学んでいるのだろう。
感心したように頷くリリアナを見ながらレオンが言う。
「妹も今、来年の学園入学に向けて勉強しているところなんだ」
それを聞いて令息達はへぇ、と目を軽く見張った。人数は増えたが、それでも高位貴族の令嬢が学園に入学することは珍しい。
「それでは、来年学園に入られたら私が隅々までご案内しますよ!」
ロイドが張り切って言うが、レオンがそれを一刀両断する。
「私の妹だぞ。私が案内する」
その台詞にアランも頷いているのを見て、「なんでだよ?!可愛い女の子を独り占めする気か?!」と大袈裟に嘆いて見せるロイド。きっといつもこんな感じなのだろう。仲の良いことだ。
そのまま、学園生活についてリリアナがあれこれ質問しては、3人がそれぞれ教えてくれたので、だいぶ学園生活がイメージできてきた。
「何せ課題と試験が大変なんですよ・・・」
「課題は多いが、こなせない量じゃないだろ」
「そうだよな。ロイドは剣術に時間を割き過ぎだ」
「すぐ寝るしな」
「うん」
基本的に2対1の構図になるようだが、とても楽しそうだ。クスクスと笑っていると、リリアナの視界の端に銀髪が見えた。
ハッとしてそちらに視線を移すと、そこに見えたのは間違いなくセシリアの姿だった。
思わず立ち上がったリリアナを3人は不思議そうに見たが、レオンがリリアナの視線の先にいる人物に気づいて微笑んだ。
「待ち人がようやくいらしたのだな。行っておいで、リリ」
「はい!・・・あの、すみません、少し失礼しますね」
ロイドとアランに軽く頭を下げて、リリアナは彼女の友人のもとへ急いだのだった。
余裕を持ってタウンハウスを出たつもりが、王宮入場までかなり待たされたセシリアは早くも辟易していた。
案内された庭園は広く、もうかなりの人数が入っているが、遅れたわけではない。同じ年頃の令嬢令息が一同に集まるのは初めてだし、親しげに話しているのはもともと知り合いなのだろう。
(さて、リリはもう来ているかしら?)
歩きながらさりげなく辺りを見渡す。
庭園にやってきたセシリアを見た令息は、涼やかで可憐な姿に皆一様にぼうっと見惚れていたし、令嬢はセシリアの姿を上から下まで素早く目を走らせて品定めをしていたが、セシリアは全く気にしていない。
(ルミエ、リリがどこにいるかわかる?)
心の中で問いかけると、精霊が答えた。
(多分今こっちに向かって来てる子だと思うよ)
その返事があってすぐ、セシリアの左側から呼びかけられた。
「シア!」
振り向くと、急ぎ足でこちらに向かってくるリリアナの姿が見えた。
セシリアの顔にも笑顔が浮かぶ。
「リリ!お久しぶり!」
お互いに歩み寄った2人は両手を握り合う。
「今日のドレス、とっても素敵だわ、シア」
「リリこそ。とても良く似合ってるわ」
この時、少し遠巻きにセシリアを見ていた令息達がいたが、どうやら知り合いらしい令嬢との再会を喜び合う様子を見て頷きあった。ここは懇親の場だ、と思い切って令嬢達に声を掛けようと近づいたのだが。
しかし、2人の令嬢の向こうのテーブル席から放たれる凄まじく冷たい視線に気づく。彼らはその視線の主が誰だか知っていた。学園の同期である公爵令息だ。
射殺されそうな視線にヒュッと喉が鳴った。
リリアナは全く気づいていなかったが、セシリアは令息達の動きにも、またレオンが発する殺気に似た気配にも気づいていた。
(あの方がリリのお兄様かしら?)
妹に近寄る虫は全て排除するつもりらしい。
睨まれている令息達の顔色がどんどん悪くなっている。被害が拡大する前にあちらに合流した方が良さそうだった。
「ね、リリ。どこかで座ってお話ししない?私、喉が渇いちゃって」
そう言うと、リリアナはハッとした顔をする。
「そうよね!あちらに私のお兄様と、ご学友の方達がいらっしゃるの。良ければその席はどうかしら」
「まぁ。リリの自慢のお兄様にご挨拶したいわ」
「私もシアをお兄様にご紹介したいの!じゃあ、行きましょう?こっちよ」
リリアナはセシリアの手を引きながら、兄達がいるテーブルの方へ誘う。
そこまで確認したレオンがようやく無謀な令息達から視線を外すと、令息達は金縛りから解放されたかのようにギクシャクと踵を返してその場から逃げ出した。
「・・・どれだけ過保護なんだよ、レオン」
「何がだ?」
涼しい顔をしてティーカップを傾けるレオンの横で、ロイドは呆れたように首を振り、アランは無言で頷いてみせる。
「リリは私の可愛い妹だ。邪な輩が近づくなら全力で排除するのは私の当然の権利だろう」
兄馬鹿を当然のように遺憾なく発揮する友人に、令息2人は苦笑するしかなかったのだった。
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