2人の令嬢〜婚約編〜 25
兄と2人、椅子に座って周りをさりげなく観察している間にも、続々と人が入場してくる。
広い庭園の会場なので窮屈さはなく、色とりどりのドレスを纏った令嬢の姿が増えるに連れて場の華やかさが増していくようだった。
皆社交デビュー前なので、このような場は初めてだ。初めて王宮に入った興奮が伝わってくる。
キョロキョロと周囲を見回す令嬢の姿が多いのは、知り合いを求めているわけではなさそうだ。
(きっと、皆様王太子殿下のお姿を探しておられるのね)
令息達もさりげなく周囲の様子を見ているようだから、皆王太子殿下にお近付きになる機会を逃すまいとしているのだろう。
リリアナとレオンも、王太子殿下のお姿が見えたならご挨拶に向かうつもりだ。筆頭公爵家の子女としてそれは当然だし、必ずやらねばならないことだから。
でも、リリアナ個人としては王太子殿下へのご挨拶はただのついでである。(大きな声では言えないが)
(シアはまだかしら・・・)
紅茶の入ったカップを傾けつつ、入場してくる人達の中に友人がいないか目を凝らしていると、不意にリリアナのいるテーブル席に近づいてくる令息達が現れた。
「やぁ、レオン!」
「2日ぶりだな、レオン」
兄に明るく声をかける2人は、そのまま兄の背中をバンと叩いて肩を組んできた。
大仰な再会の挨拶に、レオンは苦笑する。
「たかが2日だろう。どうせまた明後日からは顔を合わせるのに大袈裟だな」
驚いてきょとんと目を丸くしているリリアナに、令息達は礼をとった。
「突然お騒がせして申し訳ない、レディー」
「友人の姿が見えたもので、つい。ご無礼お許しください」
軽く頭を下げた友人達から『さっさとこのご令嬢に自分達を紹介しろ』という無言の圧力を感じる。
レオンは内心ため息を吐きながらリリアナに向き直った。
「リリアナ、こちらはロイド・アルフォンス侯爵令息とアラン・グッドフェロー伯爵令息。学園で同期の友人達だ」
ロイドは明るい金茶の髪に緑の瞳を持った快活そうな少年で、アランは青みを帯びた黒髪に黒い瞳の穏やかそうな雰囲気の少年だった。
リリアナは椅子から立ち上がって礼をとる。
「お初にお目にかかります。アラモンド公爵家が長女リリアナ・アラモンドと申します」
令息達はやはり、と頷いた。
「レオンの妹君のお噂は予々伺っておりました」
「ええ。レオンときたら口を開けば妹君の自慢ばかりでしてね。聞いていた通りの可愛らしいレディーで・・・」
ロイドが調子のいいことを言いながらさりげなくリリアナの手を取ろうとしたが、レオンが瞬時に叩き落とす。
「断りもなく妹に触れようとするな」
レオンの絶対零度の眼差しに怯むことなくロイドは両手を上げる。
「可愛らしいレディーへのちょっとした挨拶じゃないか。なぁアラン」
「お前のような痴漢が同意を求めるな」
「こんな風にいつも友から虐げられているんですよレディー!酷いと思われませんか?」
大仰に嘆いてみせるロイドと、彼を冷たい目で見る兄とアランの様子をぽかんと呆気に取られながら見ていたリリアナだったが、やがてクスクスと笑い出した。
「とても仲がよろしいのですね」
笑うリリアナを見てレオンも令息達も苦笑した。
「騒がしくてすまなかったな、リリ」
「いいえ、お兄様。お兄様のお友達にご挨拶できて嬉しいです。アルフォンス侯爵令息様、グッドフェロー伯爵令息様。良ければ同席致しませんか?」
リリアナが2人の令息に笑いかけると、2人も笑ってもちろん、と頷いてくれた。
「レディー、どうか私のことはロイドとお呼びください」
「私のことも、アランと」
右手を胸に当てて礼をとる彼らは先ほどのふざけた様子から一変して、とても洗練された居住まいだった。リリアナも頷いてみせた。
「では、私のこともどうぞリリアナとお呼びくださいね」
4人はそれぞれ椅子に腰掛けると、給仕を呼んで紅茶を頼み、適当な茶菓子も持ってきてくれるように言いつけた。
「改めて、先程は失礼しました。リリアナ嬢」
アランが軽く頭を下げ、隣にいるロイドの頭に腕を回して無理矢理下げさせる。
「いいえ、お気になさらないでください。お兄様のお友達に会えてとても嬉しいです」
「私達もですよ!レオン自慢の妹君に会えるのがとても楽しみでしたから」
乱れた髪を直しながらロイドが明るく告げる。
自慢自慢と言われるが、一体兄は普段何を吹聴しているのか・・・
兄の方を見ると、紅茶を飲みながらしれっとした顔をしている。
「私の妹は世界一可愛いとしか言ってないぞ」
「お兄様ったら・・・」
まさか真顔でその台詞を連発しているのか。それなら友人達に興味を持たれても仕方がないが、明らかに言い過ぎだ。顔が赤くなるのがわかって、リリアナは頬に手を当てる。
「そうそう、冬季休暇明けなんて、リリアナ嬢が手ずから作ったというクッキーを自慢されましたよ。見せつけてくるからこっちにもくれるのかと思いきや自慢するだけだし」
「ですがあのクッキーはとても美味しそうでしたね」
「そうだよな。1枚くらいくれてもいいと思うよな?」
よく喋るロイドと静かだがちゃんと反応して返事をするアラン。
「絶対にやらん。特にロイド、お前にはやらん」
「なんでだよ?!」
「日頃の行いじゃないのか?」
兄も加わってテンポ良く会話が進んでいく。きっと学園でもこんな感じなのだろうと思うと、リリアナまで何か楽しい気持ちになったのだった。
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