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2人の令嬢~婚約編〜 21

「さっきまで、試験のための勉強をしていたんです。それで少し疲れてしまって」


精霊に教わりながら魔法の練習をしていたとは言えないが、試験のためなのはウソではない。

兄は心配そうに顔を曇らせた。


「一生懸命なのはわかってるが、あまり無理はするなよ?」


「はい、お兄様」


まもなく両親も食堂にやってきて、皆が席に着く。

兄は「自分の好物を頼んでしまった」と言っていたが、実際は家族がそれぞれ好きなメニューがテーブルに並べられた。まるでちょっとしたパーティのような豪華な食事だ。せっかく家族が揃うこともあり、厨房が腕を振るってくれたのだろう。


祈りを捧げて食事を始めると、リリアナはお腹がとても空いていることに気がつく。


(魔法を使うとお腹も減るのね・・・)


妙なことに感心しながら、好物の鶏肉を口に運んだ。しっとりと焼き上げられた鶏肉に、チーズクリームソースがとても良く合う。母の好物である海老と野菜のテリーヌは色鮮やかで食べやすい。父と兄には好物である仔牛のブランケットが振る舞われていた。クリームソースで柔らかく煮込まれた仔牛肉料理はとてもボリュームがありそうだった。


食事を楽しんだあと、お茶を飲みながら母が口を開いた。


「明日は朝から衣装合わせをしますからね、レオン」


「朝からですか?」


「そうよ。お針子が寸法を直す時間も考えたら、この後すぐにでもいいくらい」


日々絶賛成長中のレオンは、少し見ない間にも背が伸びているのだ。普段の服なら多少大きめのものを仕立てて着回しているが、礼服となるとそうもいかない。


レオンも休みの間の課題を寮から持ってきているが、明日の午前がつぶれてしまうのは仕方ないと諦めて、苦笑をもらしながら頷いた。


「わかりました、母上。明日の朝食後でよろしいですか」


「えぇ、大丈夫よ。リリアナと並べて見るのが楽しみだわ。ね、リリアナ?」


「はい」


ふふ、と公爵夫人は楽しそうに笑う。母と2人でレオンの衣装を考えたリリアナも、兄が衣装に袖を通した姿を見るのがとても楽しみだ。


「学園でも懇親会の話題でもちきりでしたよ。かなりの人数が招かれているようでした」


レオンが言うのを聞いて公爵も頷いた。


「そのようだな。上位貴族で該当する年頃の令息令嬢のいる家には、ほぼもれなく招待状が届いたらしい」


「セシリア嬢に会えたら、お兄様に紹介しますね」


リリアナが兄に笑いかけると、兄も笑って頷いてくれた。大切な友人に会えると思うと心が浮き立つようだった。




食事を終えて自室に戻ると、リリアナの黒猫はベッドの枕元に丸まってすぴすぴと寝息を立てていた。愛らしいその姿にリリアナの頬が緩む。

きっとリリアナの魔法のサポートをして疲れたのだろう。そっと頭を撫でるとうっすら目を開けたが、またすぐ眠りに落ちたようだった。


窓際の椅子に腰掛けて窓の外を見ると、塀の向こうに他の家々の明かりが見えた。公爵邸と違って、塀の向こうにも邸が立ち並んでいるのがなんだか新鮮に思える。

セシリアも今頃は、辺境伯家のタウンハウスに到着していることだろう。お互いに自領ではなく、同じ王都内にいるのだ。近いのにすぐに会えないのがもどかしいが、明後日には会える。


しばらく窓の向こうを眺めていたリリアナは、やがて机に向かって教本を開いた。明日、明後日と出来ない分を少しでも埋めておくべく、羽ペンを片手に勉強に没頭していったのだった。




リリアナが友との再会に思いを馳せている頃ーーー


王都のヴェルリンド辺境伯家のタウンハウスの地下では、長兄エルドウィンとセシリアの魔法授業が行われていた。


この地下は有事の際には避難シェルターとして使われるもので、代々の当主達が念入りにヴェルリンド伝来の防護魔法を重ねがけしている場所である。

魔法攻撃による多少の損傷など瞬く間に修復してしまうほどの防護魔法がかけられたこの場所は、ヴェルリンド家の訓練場所としても優秀なのである。


「いいか?シア。魔法はイメージと体力と根性だ。理屈なんぞ後でいい。まずは小さな魔法を反射で放てるようになれ。頭で考えるな」


魔法学校の教師が聞いたら目を剥きそうな台詞を堂々と吐きながら、エルドウィンは風魔法で無数の礫を操り、セシリアへ向けて放つ。


四方から飛んでくる礫を視認してから対処するのでは到底間に合わず、兄から魔法を教わるようになった当初は全身傷だらけになってしまっていたが、今回こそは・・・!


セシリアは無数の小さな炎の塊を呼び出し、礫を迎撃する。その間に魔力を練って、細い槍状の炎を生成して兄に向けて放つ。


「おっと」


初めて攻撃に転じたセシリアの魔法を水の盾で防いだエルドウィンはニヤリと笑った。


「甘いぞ、シア」


ハッと気づいた時には、シアの足下がとぷんと液状化してバランスを崩してしまった。次の瞬間には、目の前に氷の槍が浮いている。


肩で息をしながら、セシリアは両手を上げた。


「・・・参りました」


すると氷の槍は跡形もなく消え去り、足の自由も取り戻したセシリアは、その場に大の字に寝転がったのだった。




2人の令嬢〜婚約編〜第21話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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