表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/83

2人の令嬢〜婚約編〜 17

辺境伯と長兄が帰還した夜はなかなかのご馳走が振る舞われた。ひと月振りの領主の帰還を受けて、厨房の者達が張り切って腕を振るった料理は見た目も味も素晴らしい。


メインディッシュは鹿型魔獣のもも肉の香草焼きだ。普通の鹿よりも遥かに大型で素早く、風の魔力を持つこの魔獣は農民や木こりにとっては厄介な害獣だが、その肉はとても美味であることから王都でも需要は高く、高級食材として扱われている。

しかしこの辺境にあっては庶民も口にするタンパク源であり、もちろんセシリアも大好物な食材のひとつである。


(正直、王都よりよっぽど美味しいものが多いわよね、うちの領って)


さすがに菓子類は王都のもののほうが種類も多いし美味しいものが多いが、食事について言うなら辺境領の方が食材が豊富である。特に魔獣関係の肉が。


見事にこんがり焼き上がったもも肉にナイフを入れると、すっと切れた断面から肉汁が溢れ出す。一口大に切り分けて口に運べば、程よい弾力の歯応えと濃厚な旨みが口内を満たした。

ライ麦のパンも肉と相性が良く、じゃがいものポタージュや冬越し野菜のサラダも美味しい。


「そういえば、俺からまだ祝いを言ってなかったな。洗礼おめでとう、シア」


騎士であるエルドウィンは食事を摂るスピードが早く、早くも食後のお茶を飲みながらセシリアに祝いの言葉を告げる。

口の中のものを飲み下して、セシリアは笑顔で礼を言った。


「ありがとうございます、エル兄様」


「洗礼の祝いの品があるんだ。あとで部屋に届けるよ」


エルドウィンにとっても、セシリアは目の中に入れても痛くないほど可愛い妹なので、この長兄は事あるごとに妹に贈り物を贈っている。


「まぁ!楽しみです!」


問題はその贈り物が、兵法書であったり弓矢の一揃いであったり希少なミスリルを使った短剣であったりして、とても貴族令嬢に贈るようなものではないということなのだが、この兄妹間ではなんの問題もない。


過去の贈り物遍歴を知っている母の眉間に少し皺が刻まれたが、辺境伯夫人は軽くため息を吐くだけにとどめた。ヴェルリンドの男どもにそういう期待をするだけ無駄だと悟り切ったため息だった。




夕食を終えたセシリアが自室に戻ると、机の上にキレイに包装された小箱が置かれていた。


「そちらは、エルドウィン様から届けられたものです」


メイドがにっこり笑って教えてくれた。いつもならやたら重いものや大きなものや物騒なものが贈られてきてメイド達もどこに置いておくか悩むのだが、今回はごく普通の贈り物に見える小箱なので心象が良かったらしい。


セシリアが包装を剥がして小箱を開けてみると、そこにはセシリアの瞳と同じ色の石を銀細工が飾っているブローチが入っていた。銀細工は繊細な作りであり、石もかなり大ぶりなものだ。


石にそっと触れてみると、魔力が込められているのがわかった。


(魔法が込められてる・・・)


「まぁ!ステキなブローチですね、お嬢様!」


「エルドウィン様から贈られたもののなかで1番美しい贈り物ではありませんか?」


「洗礼の祝いに相応しい贈り物でございますわね!」


セシリアは苦笑して、「そうね、美しいブローチだわ」と言いながら燭台の灯りに紫の石をかざしてみる。かなり強い魔法が込められていそうだ。


「そろそろお風呂に入りたいから準備をお願いできる?その後は勉強するから貴女達は下がっていいわ」


かしこまりました、と答えたメイド達が浴室の準備をするために退出し、1人になったセシリアはブローチを眺めながら相棒に問いかけた。


「これ、なんの魔法が入ってるのかな?ルミエ」


すると、セシリアの前に光の玉がポゥッと現れて、手に持ったブローチに近づいてくる。


「水の魔力だね。防御の魔法じゃないかな?」


ルミエである光の玉はふわりふわりとブローチの周りに浮かびながら観察しているようだった。


「これは、セシリアのお兄さんの魔力だね」


やっぱりそうか、と納得してセシリアは頷いた。


魔法は、発動してしまえばそれが誰の魔法なのかはわからないが、発動前なら魔力の波長が捉えられる。魔力の波長は人それぞれ違うので見知った人の魔力なら識別できるのだ。もっとも、魔力の波長の違いを認識できるのは、よほど魔法と魔力に精通している者か、精霊との契約によって感知能力が常人とは異なる愛し子くらいだろう。


「魔法かぁ・・・ちゃんと勉強しなくちゃなぁ。あと、魔術も」


セシリアはやるべき事の多さにため息を吐いた。


『魔法』は自身が持つ魔力を詠唱や魔法陣で放つ力であり、大小はあっても誰しもが使える力だ。平民であっても蝋燭に火を付けたりコップ1杯程度の水を呼び出したりできる。

対して『魔術』は大気に存在するマナや精霊の魔力を借りて自身の中に取り込んで放つ。マナはそこかしこに存在するが濃度が均一ではなく、また精霊の力を借りられるのは愛し子だけなので、魔術を使えるのは力ある魔法師を除けば基本的に精霊の愛し子に限られる。


「魔法も剣も弓も使える淑女を目指して頑張るしかないけどね!」


石に込められた兄の気持ちはとても嬉しいが、セシリアは守られるばかりではいられないのだ。

2人の令嬢〜婚約編〜第17話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


少しでも「おもしろい!」「続きが気になる!」と思って頂けましたら、ブックマーク登録!

また、広告下にある【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて頂けたら嬉しいです!


★の数は読者の皆様のご判断次第ですが、★の数が多ければ多いほど作者のやる気ゲージが上がります。


応援よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ