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2人の令嬢〜婚約編〜 16

「礼を言われる事は何もないよ。僕はセシリアの精霊だから」


あっさり答えた精霊に、辺境伯は破顔し夫人は困ったように笑った。


「俺達はシアの親だからな。有り難く思うのは仕方ないんだ。そこは諦めてくれ」


「あなた、もう少し言い方を・・・!いえでも、それはその通りなんですのよ、精霊様」


流石我が両親。相手が初めて見る高位精霊だろうと態度が変わらないのは流石としか言いようがない。


「・・・そうなの?」


ルミエは少し困惑したような声を出した。こんな風に接してくる人間は居なかったに違いない。


「ルミエ、貴方にも関係があるから、相談したいことがあって呼んだの」


このままでは困惑するルミエを置き去りにしかねない両親の会話に割り込んでセシリアは言った。


「今のところ、貴方と私の事を知っているのは、大司教様と私の両親。だけど、今後の事を考えて、お兄様にも知らせようかと思うのだけど・・・どう思う?」


精霊はやはりあっさりと答えた。


「セシリアがそうしたいなら、いいんじゃない?」


「ルミエは嫌じゃないの?」


問われて、今は光の玉に見える精霊はゆらゆらと揺れる。


「僕の望みは、君と共に在ることだけだ」


言葉の意味が、人間同士のそれとは微妙に違うような違和感を感じるのは、やはり精霊と人の有り様が違うからなのだろうか。思えば、ルミエからは願望や希望を聞いたことがない。

それはなにか少しさみしいことのような気がして、セシリアは相棒に声をかけた。


「ルミエ・・・私は、前世からずっと一緒にいてくれる貴方がとても大切よ。だから、貴方が嫌がることはしたくない。貴方が喜んでくれたら嬉しい。貴方もそう言ってくれたじゃない?」


「・・・・・・」


光の球は僅かにちかちかと明滅する。


「・・・僕は、今も昔も君を守りたいのが一番の願いなんだ」


まるで迷子の幼子のように困ったように呟かれた言葉に、その場にいるセシリアも辺境伯夫妻も微笑した。


「そっか、わかった。ありがとうルミエ。私も貴方を守りたいわ。だから、そのためにお兄様の理解と協力が必要だと思うの」


辺境伯も言葉を紡ぐ。


「ご心配召されるな、精霊殿。我がヴェルリンド家は、必ずやセシリアと精霊殿を守りましょう」


精霊であるところの光の球ははふわりと浮かび上がった。


「うん、わかった。よろしくね」


そう答えると、光の球はするすると解けてその場から消えたのだった。




精霊の姿が消えると、辺境伯は太いため息を吐いた。


「とりあえず精霊殿の了解も得られたし、夕食後にエルドに話をしよう。シアも来るか?」


「はい、もちろんです」


返事をしながらも、やや疲れた様子を見せる父が心配でセシリアは声をかける。


「お父様、お疲れですか?」


辺境伯は苦笑いを浮かべた。首をコキコキと鳴らしながら肩を竦める。


「精霊を自分の目で見たのは初めてだったからな。存在することは知っていても、いざ目の前にすると緊張で震えの一つもくるってもんだ」


とてもそうは見えなかったが。


母も隣で頷きながら言う。


「えぇ、本当に。声が震えずにお話出来たのが自分でも不思議ですわ」


とてもそんな感じはしませんでしたが。


懐疑的な目で両親を見つめるセシリアに、辺境伯夫妻は苦笑する。


「本当だぞ?戦でもあれほど緊張したことはない。自分じゃ絶対に力及ばない相手と相対するっていうのは、腹に力が入ってくたびれるんだよ」


「もちろん、貴女の精霊様がわたくし達になにかをするつもりがないのはわかっているのよ?けれど・・・なんというか、本能的な恐れが胸の内に沸いてしまうのよ」


わかるような、わからないような複雑な気持ちでセシリアは言った。


「ルミエは、そんなに危ない存在に感じられたのですか?」


そりゃあ、やる気になればこの邸なんて簡単に消し飛ばせるであろう存在が危なくないとは言えないかもしれないけれど、ルミエはセシリアが望まないことは決してしない。


父は頭を振った。


「違う違う、危ないなんて思ってないさ。単に俺がまだまだ未熟だって話だ」


「そうね、その通りだわ。わたくしもまだまだ修行が足りないと痛感しましたもの」


うんうんと頷きあう両親は、決意を決めたように告げた。


「俺は精霊殿のことも守ると誓ったからな。鍛えなおすとするわ」


「セシリアの精霊様がセシリアと一心同体だと仰るなら、精霊様も我が子みたいなものだわ。わたくしも非力ながら尽力します」


兄にルミエのことを話すかどうかの相談だったはずなのに、ルミエを我が子と思って守る話になっている両親に、セシリアは呆気にとられた。が、次の瞬間噴き出した。




笑いあう自らの契約者とその両親の様子を、界を隔てた次元の狭間からルミエは眺めていた。

セシリアもそうだが、その両親も自分のことをまるで一人の人間のように接してくるのが不思議だった。ただひたすらルミエが自分のそばにいることを願い、時折癒しの力を貸してほしいと求めてくるばかりだったルーナと、そばにいるために、自分のために頑張ると言ってくれるセシリアは本当に違う。でも、その違いはルミエにとって不快なものではなかった。両親の「守る」という言葉もだ。


今まで感じたことのない温かいものが自分のなかに生じたのを感じて、ルミエはひっそりと目を閉じた。

2人の令嬢~婚約編~第16話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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