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2人の令嬢~婚約編~ 12

ノアールに友人からの手紙を示されたリリアナは、立ち上がって本棚に駆け寄った。そうして1冊の本を手に取ってまた机に戻ると、植物図鑑と共に本を広げる。

しばらく両方の本と睨めっこしていたリリアナは、紙に調べたことを書きつける。


そんなリリアナの様子をじっと見守る黒猫に、リリアナは笑いかけた。


「ありがとう、ノアール。貴女のおかげで良い案が出せそうよ!」


返事をするように「ミャ」と鳴く愛猫に、夢で出会った精霊の姿が重なって見える気がする。優しく喉を撫でてやりながら、リリアナはひとりごちた。


「貴女のことや、貴女の属性のことは・・・お父様にご相談した方がいいのかしら・・・」


一見したところただの黒猫だし、精霊と名乗る少女に会ったのも夢の中の話だ。まだわからないことが多すぎるし、リリアナ自身もきちんと説明できる自信がない。

でも、リリアナはこの黒猫が『ノアール』だと確信していた。


「貴女と、またお話ができたらいいのに・・・」


呟くリリアナに、黒猫は小さく首を傾げてみせるのだった。




その日の夜の夢でもまた『ノアール』が出てきてはくれないかと期待しながら眠りについたリリアナだったが、残念ながらあの午睡の夢以降、彼女が夢に現れることはなかった。


午前の勉強の休憩をしながら、リリアナはぼんやりと自分の精霊のことを考える。


(何か、ノアールが夢に出てくるための条件があるのかしら)


図書室で精霊についての本を読んでみても、書いてあるのは一般的に知られていることばかりで新たな情報は見つけられなかった。そもそも、精霊とその愛し子との関係性がわかるような書物がないのだ。


(王宮や神殿の書庫なら調べられる・・・?)


そう思いはしたが、そもそも自分が精霊の加護を授かったこと自体を秘匿しているのに、それらを調べたり問い合わせたりしたらおかしく思われるのではないか。

父や大司教の事を思えば、そんな危険を冒すわけにはいかない。


「うーーーーーーん・・・」


どう考えても、現状ではこれ以上打つ手は思いつかなかった。

唸るリリアナに、このところは日中も起きてリリアナに寄り添っている黒猫が頭を摺り寄せてきた。慰めるような仕草に、少し心が落ち着く。


「焦っても、仕方ないわよね・・・」


(また、会えたらお話しようね?)


心の中で呟くと、黒猫は目を細めて喉を鳴らした。




「それで、リリアナは良い案は思い浮かんだ?」


案を持ち寄る事にした数日後に母の部屋を尋ねると、やんわりとーーーそれでいて期待に満ちた目で問いかけられた。


「一応、いくつか考えたものを紙に書いてきました。見てみてください」


リリアナは幾らか緊張した面持ちで、そっと手にした紙を差し出した。あれから少し書き直したり、思いついた事を追加した覚え書きだ。

娘から受け取った紙を、公爵夫人はじっと見ている。


(何だかすごく緊張する・・・)


リリアナが何とも言い難い緊張を感じながらじっと息を潜めていると、母はほぅ、と息を吐いた。


「リリアナ・・・」


「はい」


「とても、とても素晴らしいアイデアだとわたくしは思うわ・・・!」


セリーヌはリリアナの書いてきた紙に再び目を落とす。リリアナは自分が最も気に入っている案を示した。


「この中だと、カスミソウとハーデンベルギアをモチーフにしたものが好きなんです。その2つの花を刺繍したドレスに合わせて、ハーデンベルギアを模したアクセサリーをしてたらステキじゃないかと・・・」


母が頷いてくれるので、更に説明する。


「カスミソウの花言葉は『幸福』や『感謝』でお祝いごとに相応しいと思いましたし、ハーデンベルギアは『運命的な出会い』『奇跡的な再会』なので、懇親会の意図から外れないのではないかと思ったのです」


セリーヌは娘の言うことにいちいち頷いていたが、ふふ、と笑った。


「花言葉を含めたモチーフにするのはとても良いと思うわ。セシリア嬢のおかげね?」


リリアナは少し恥ずかしそうに笑った。


「はい・・・セシリア嬢からの手紙の香りが、とても心に残ったので」


「そうね。社交デビュー前で香水を使うのはまだ早いと思うから、こういう風に花をモチーフにするのはとても良いと思うわ」


「お母様は、どのようなお花を使おうと思われていましたか?」


興味津々といった様子で聞くリリアナに、公爵夫人は肩をすくめた。


「わたくしは、ガーベラやマリーゴールドなんかの可愛らしいお花をイメージして、ドレスの袖や裾を花の特徴に寄せたデザインはどうかしら、と思っていたの」


「とてもステキです・・・!」


リリアナはドレスを想像して目を輝かせる。


「困ったわねぇ・・・どれが良いか、選べないわ」


母は苦笑しているが、選べないのはリリアナもおなじだ。母の案であるガーベラの花言葉は『友情』や『前進』、マリーゴールドは『真心』『友情』であることから、母も花言葉を念頭に入れていたのがわかる。

リリアナの案は少しおとなしめで大人っぽいドレスになりそうだし、母の案だとデビュー前の女の子らしい初々しいドレスが出来るだろう。


母子はその後もしばらく2人で頭を悩ませることになったのだった。


2人の令嬢〜婚約編〜第12話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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