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2人の令嬢~婚約編~ 9

リリアナが手紙を読み終わって、まだ見ぬ他領の景色やセシリアに思いを馳せていると、乳母がリリアナの部屋へ顔を出した。


ソファに腰かけるリリアナに微笑んで声をかける。


「ずいぶん嬉しそうなご様子。なにかいいことがございましたか?」


「こないだ話したお友達からお手紙が届いたの」


にこにこ笑いながら大事そうに持った手紙を乳母のマーサに示すと、なるほどと納得した様子で頷いた。


「北の辺境伯家のご令嬢でございましたね」


銀の髪に紫の瞳を持つとてもキレイな子と友達になったのだと興奮した様子で話していたリリアナを思い出す。マーサはただの乳母なので辺境伯家がどういう家なのか、どんなところなのかもわからないが、大切なお嬢様が初めての友人との友誼を喜んでいるのはとても微笑ましい。


「シアも・・・ええっと、セシリア嬢も、今度の懇親会に出席なさるんですって」


「まぁ、ではお会いできるんですねぇ。良かったですこと」


「ええ!とっても楽しみになってきちゃった」


ふふ、と笑うリリアナの愛らしい笑顔を見て、マーサは言った。


「その懇親会に着ていくドレスの相談を奥様がなさりたいそうですよ。午後のお茶の後に時間はあるかと尋ねておいででした」


今までは母やマーサがリリアナのドレスを見立てていたが、これからはリリアナの意見も取りいれてくれるという。もし学園に行けばドレスの着付けも含めて身の回りの事は基本的に自分で出来なければならないし、ドレスを見立てることは淑女教育の一環でもある。


「もちろん、時間を空けるわ!」


午後のその時間は勉強に充てようと思っていたが、その分は今これからやっておけばいい。

そう思ったリリアナに、乳母は笑顔で告げた。


「お嬢様は、これから1時間だけ午睡なさってくださいね」


「・・・・・・」


むぅ、っとリリアナはむくれてみせたが、その程度でこの乳母が折れてくれるはずもない。


「今日も朝早くからお勉強されて、ダンスの練習もなさっていたのです。頭と身体を使われたのですから、きちんと休まれることも必要ですよ」


「・・・わかったわ」


抵抗を諦めたリリアナの膝にノアールが飛び乗ってきて「みゃーん」と鳴いて頭を摺り寄せる。


「良い子ですね、ノアール。お嬢様の夢の番人をよろしく頼みますよ?」




渋々ベッドに入ると、メイド達がカーテンを引いて部屋が薄暗くなる。黒猫はリリアナの枕の横に丸くなっていて、そこは夜眠る時にもこの黒猫の定位置だった。

大して眠くないのにと思っていても、日々の習慣になっているので目を瞑っているとリリアナは程なく眠りの世界に旅立つ。


短い午睡の夢の中で、リリアナは見知らぬ少女に出会った。


その少女は、艶やかな黒銀の髪に藍色の瞳をした、まるで人形のような無機質な印象を与える少女だった。


(ーーー貴女はだれ?)


人間離れした美貌の少女だが、初めて会うはずなのに不思議と親近感が湧く。

リリアナの問いに小首を傾げた少女は、無表情のまま桜色の唇を開いた。


(私は、貴女の片割れ)


(片割れ?)


今度はリリアナが首を傾げる番だった。

間違いなく初めて見る顔だ。でも何故だか懐かしいような気持ちが胸にある。


(名前は?私はリリアナよ)


自己紹介したリリアナに、少女の目が呆れたような色を映した。


(知ってる、リリアナ。私の名は貴女が名付けてくれた)


私が名付けた?

驚いて目を見張るリリアナに、少女はさらに言う。


(私は貴女だけの片割れ。思い出して)


思い出せと言われても、と困惑しながらリリアナは少女を見つめる。わずかに銀色の光を弾く艶やかな黒い髪・・・自分によく似た藍色の瞳。


その色彩が、自分が名付けた黒猫と重なる。


(まさか・・・ノアール?ノアールなの?)


その名を呼ぶと、少女はにこりと笑った。


(そう。やっと会えた、リリアナ)


その笑顔は本当に嬉しそうで、でも黒猫のノアールがこの少女だなんてまだ信じられない。


(ノアール・・・)


呟くと、黒髪の少女はなに?と返事をする。


(貴女は、誰なの?)


少女は答えた。


(私は貴女の精霊。貴女だけの)


(・・・!!)


リリアナは驚いて目を見開いた。大司教様の見識を以てしても、その属性を推し量ることが出来なかった自らの契約精霊。


驚き過ぎて、リリアナの口から無意識に漏れたのは


(・・・はじめまして?)


という間抜けた台詞だった。




初めましてと言われた精霊の少女は、小さく笑った。無機質なイメージが強い少女だが、そうして笑うと花が開くような鮮やかさがあった。


(こうして会うのは初めて。だから、初めまして、リリアナ)


その笑顔を見て惚けていたリリアナだったが、驚きが通り過ぎると彼女に聞きたいことが山ほど思い出される。どれから聞いたらいいかわからない程だ。


(あの、ノアール。私貴女に聞きたいことがたくさんあるの)


黒銀の髪をさらりと揺らした精霊は、不思議そうな顔をした。


(聞きたいこと?)


(うん。まずは・・・貴女は、何の精霊なの?)


何の、と聞かれた精霊は首を傾げる。


(何、って?)


(火とか水とか・・・貴女は?水の精霊?)


(水は近しいもの。私は違う)


水と近しい?リリアナにはさっぱりわからなかったのだった。


2人の令嬢〜婚約編〜第9話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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