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2人の令嬢〜婚約編〜 8

兄が学園に戻った日以来、リリアナは自室で黙々と勉強をこなしていた。


兄から貰った辞書と教本を元に、ノートにひたすら書き込んでは兄のノートを見て確認する。まだ試験勉強のための家庭教師が着任していない今、リリアナの教師は兄のノートだ。ところどころ赤インクで但し書きがしてあるのを注意深く読み、頭の中で噛み砕いて自分のノートに記していく。


「お嬢様、そろそろ休憩なさっては?」


メイドから声をかけられて時計を見ると、勉強を始めてから2時間が経っていた。


リリアナはうーんと伸びをすると、差し出された果実水に口をつける。


「なかなか進まないのよね・・・」


グラスを片手に教本から目を離さないリリアナに、メイドが困ったように笑う。我らがお嬢様は集中するとなかなか手を止めてくれないのだ。


「まもなく昼食の時刻でございます、お嬢様。一度机から離れられませんと」


「わかったわ。でも、あと1問だけ」


再び羽ペンを手に取るリリアナに、メイドは苦笑しながら引き下がったが、そんなリリアナの手元に黒い塊がじゃれついてきた。


「ぁ、ノアール!もう、だめよ?」


机に寝そべって腹を出しながら羽ペンにじゃれつく黒猫にリリアナは注意するが、もちろん仔猫はそんなことはお構いなしだ。

とうとうリリアナは勉強の続きを諦めて、羽ペンを手放すと黒猫を抱き上げた。


「悪戯っ子なんだから」


黒猫はリリアナと同じ藍色の眼を細めて喉を鳴らしている。

猫の定位置である暖炉前のスペースに行って、クッションの上に猫を下ろす。すぐさまお腹を出すのは『撫でて欲しい』の合図である。

「甘えん坊ねぇ」と言いながら仔猫と戯れるリリアナの様子を、メイド達は内心で(可愛いぃぃ!!)と悶えながら見守っていた。




猫と戯れているうちに昼食の時間となり、ノアールをメイドに任せて食堂へ向かう。

お昼は母と二人きりだ。兄レオンは学園だし、父は仕事で日中は留守にしているので仕方ないが、一抹の寂しさを感じる。


食前の祈りを捧げて母と昼食を摂る。婦女子2人の食事なので、内容は軽めだ。香りのよいバターロール、温野菜のサラダ、白身魚のムニエルにスープが本日の昼食だった。


「お勉強は進んでる?リリアナ」


食後のお茶を飲んでいると、母がおっとりと微笑みながら問いかけてきた。


リリアナは少しため息を漏らす。


「頑張ってはいるのですけど、なかなか・・・お兄様が教本とノートをくださったので、毎日睨み合いです」


「まぁ・・・でも、焦ることはないわ。もうじき家庭教師が来てくれるのだし、積み重ねた努力は決して無駄にならないわ」


母の柔らかい励ましに、リリアナの表情も緩む。


「はい。一歩ずつ、ですね」


そんなリリアナに、母はその悪戯っぽく笑いかけた。


「頑張ってるリリアナに、お待ちかねのお手紙が届いたわよ?」


ばぁぁっとリリアナの表情が輝いた。


「お手紙?もしかしてセシリア嬢からですか?!」


執事長が手に持った手紙をリリアナに渡してくれた。まだ封が切られていない手紙だ。


「その封蝋はヴェルリンド辺境伯家のものよ。宛先が貴女だから、きっとセシリア嬢からのお手紙ね」


兄に友達ができたと話した日の夜、両親にも同じことを話したのでリリアナがセシリアと友誼を結んだことは母も承知している。何より楽しそうに友のことを話すリリアナは嬉しそうだった。良い出会いがあって良かったというのは公爵夫妻の共通の思いだ。


大事そうに手紙を胸に抱くリリアナに、公爵夫人は言った。


「お茶を飲んだら、お部屋で読むといいわ」


「はい、そうします!」


いそいそと、それでも品良くお茶を飲むリリアナを見ながら公爵夫人は温かく眼を細めた。




部屋に戻ったリリアナは、急いでペーパーナイフで手紙の封を切る。

取り出した手紙からはふわりとコデマリの花の香りがして、今は遠い領地にいる友人の姿が脳裏に蘇った。


ソファに座ったリリアナは、手紙を開く。


『拝啓 リリアナ・アラモンド公爵令嬢様


お元気ですか?我がヴェルリンド領はそちらより寒さが厳しいのですが、私も変わらず元気でいます。


洗礼の後、お母様と馬車で帰路についたのですが、その時ーーー』


セシリアからの手紙には、自領に帰るまでの旅の様子や、その時に感じたことなどが書かれていて、他領どころか公爵邸の周辺のことしか見たことがないリリアナは夢中になって手紙を読み進める。


『馬車での長旅ではあんまり身体を動かせなくって、すっかりあちこち凝り固まってしまいました。家に帰ってからマッサージを受けたら死ぬほど痛かったわ』と書かれているのを読んだ時は思わずクスッと笑ってしまった。確かにマッサージは痛い。


『ーーーそれで、今日リリからのお手紙が届いたので、私もお手紙を書いています。リリがお手紙に書いていた王家主催の懇親会の招待は、我が家にも届いていました。その時にお会い出来るのを、私もとても楽しみにしています。それまでの間、私も学園入学のための勉強を頑張るね。リリも頑張って!

では、またお手紙を書きます。 セシリア』


どうやら3ヶ月後の懇親会でセシリアに会えるらしいことがわかって、リリアナの胸は嬉しさでいっぱいになったのだった。

2人の令嬢〜婚約編〜第8話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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