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2人の令嬢~婚約編~ 1

久しぶりにアラモンド家の面々が登場です!

忘れちゃったよ!って方は逆行令嬢編を読み返してみてください(汗

リリアナの洗礼式を終えて帰邸した夜、予想通り父である公爵は母にも兄にもリリアナの洗礼の本当のところは話さず、「リリアナには膨大な魔力量があることと、水の魔力に最も適性があるとわかった」とだけ告げた。

それでも、これは大変に大きなことである事に変わりはない。


「まぁ・・・」


母は気遣わしげな目を娘に向ける。兄に至っては言うに及ばずだった。

父も物憂げな顔をしならが言った。


「これから王宮へ向けて各地の洗礼の結果が報告されるだろう。リリアナのことが王家に知れれば、何かしらの打診が来ることも念頭においておかねばならん」


父の言葉を聞いて、リリアナは首を傾げた。何かしらの打診?


リリアナ以外の3人はそれがなにかわかっているらしく、3人とも深刻な顔をしている。


「あの・・・何か、困ることになるのですか・・・?」


恐る恐るリリアナが問いかけると、兄がため息を吐きつつ答えてくれた。


「リリの豊富な魔力量と魔法適性に目を付けた王家が、婚約を打診してくるかもしれない、って話だよ」


現王家には2人の王子と1人の王女がいるが、世継ぎの王子はリリアナより2歳上であり、レオンと同い年だ。

驚きに目を丸くするリリアナに、父も言葉を続けた。


「王家は、より良い血筋と能力を求めるものだ。国の安寧のためには必要なことではある」


公爵夫人であるセリーヌは心配そうな目を夫に向ける。


「あなた・・・リリアナはまだ、6歳です。最早将来の道が定められてしまうのは、あまりにも・・・」


公爵はそんな妻の肩を抱き寄せて頷いた。


「もちろんだ。それに、おそらく王家も早急に王子殿下の婚約者を定めたりはしないだろう。我が家の他にも有力な候補となる令嬢がいるだろうし、各家も自分の娘を推挙するだろうから」


そんな両親と兄の姿を見て、リリアナは洗礼後に固めた決意を話すことにした。自分でなにも出来ないままに将来が決められるなんて真っ平だ。


「お父様、お母様。お願いがあります」


リリアナは居住まいを正した。


「私は、お兄様とおなじく、グランディス学園に行きたいと思っています」


両手を胸の前で組んで、リリアナは訴える。


「私は、大司教様に、お父様に、そして自分にも誓いました。私は自分の力を正しく使う方法を学びたいのです」


国の法に背いてまで、大司教と父が作ってくれた時間を無為に過ごすわけにはいかないのだ。


そんな事情は知らないまでも、兄が加勢してくれた。


「同じ学園ならば、私がリリを気にかけてやることもできます」


高位貴族の女子がグランディス学園で学ぶのはそう珍しいことでは無くなってきている。一種のステータスとして認知されてきているからだ。保守的な貴族の中には婦女子が知識を身に着けることを良しとしない者達も多いが、公爵夫妻は違うはずだとレオンは思っている。


はたして、公爵はレオンとリリアナに頷きを返すと妻の方を見た。


「私は、リリアナが学びたいという気持ちを大事にしてやりたいと思っている」


婚約を回避できずとも、学園にいる間は『学生』という身分がリリアナを守ってくれるだろう。それは王家が自ら定めた法であり、学生はその生活を保障されるものだからだ。


公爵夫人もまた、夫に頷きを返す。


「わたくしも、リリアナがそうしたいと思うことを応援致しますわ。・・・少し、さみしいですけれどね」


そう言って困ったようにリリアナを見て笑った。


「リリアナは、きっとそう言い出すだろうと思っておりましたもの・・・入学試験のための家庭教師の選考は、執事長(セバス)にもうお願いしてありますわ」


リリアナはパァッと表情を明るくして、母に抱きついた。


「ありがとうございます、お母様!!」


夫人は娘の頭を撫でながら苦笑した。


「いいのですよ。これから試験までの1年間、頑張ってごらんなさい。リリアナならきっと大丈夫」


ーーーそんなやり取りをした、僅か7日後に王宮から手紙が届いたのだった。




執事長から手渡された手紙の封蝋は、王家の紋章が押されていた。


(・・・素早いことだ)


内心ため息をつきながら、公爵は封を切る。

手紙に目を走らせる公爵に、執事長が静かに声をかけた。


「王家からは、なんと・・・?」


「3ヵ月後の王太子殿下の誕生日に合わせて、同じ年頃の貴族の子女を集めて懇親の会を開くそうだ」


まだ社交デビュー前の貴族の子ども達が交流を持つことは少ない。親同士が仲がよいだとか、そういう事情がない限りは知り合う機会がほぼないからだ。王家からの手紙には、「早いうちから親交を深め、国の未来を背負う子ども達の人間関係の構築の一助になれば幸い」などと殊勝な事が書かれているが、要するに品定めの機会を設けようという腹積もりだろう。王家からの招待ともなれば、貴族達は断るわけにもいかない。


公爵は手紙を引出しに仕舞い、執事長に言った。


「懇親会は、レオンとリリアナを出席させる。セリーヌの手が空いたら、執務室に来るよう伝えてくれるか」


「かしこまりました」


執事長が一礼して退出するのを見送って、公爵は窓の外に目をやった。リリアナが婚約者と決まったわけではない。だが、打てる手は全て打つべきだろう、と思案に耽るのだった。

2人の令嬢〜婚約編〜第1話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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