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逆行令嬢 3

レオンが屋敷の玄関ホールに姿を現すと、きれいに整列したメイド達が一斉に頭を下げる。


『お帰りなさいませ、お坊ちゃま』


うん、と頷きながらもレオンの内心は複雑だ。


セバスから皆に、坊ちゃま呼びを止めるように伝えてもらわねば・・・


後ろのセバスから感じる苦笑をかみ殺す気配がちょっと腹立たしい。

振り返って睨みつけようかという時に、中央階段から母と妹が降りてくるのが見えた。

母と妹の元へ歩み寄り、帰宅の挨拶をする。


「ただいま帰りました、母上」


学園入学前までは「お母様」と呼んでいたし、一人称も「僕」だったが、入学を機に「母上」「父上」に変え、一人称は「私」に変えた。公爵家の後継として学園で学ぶにあたっての意識改革だ。


子をふたり産んでもなおたおやかで美しい母は、ふわりと微笑んで息子を抱きしめた。


「お帰りなさい、レオン。馬車での移動は疲れたのではない?」


「王都から領までの様子を観察しながらなので、あっという間です」


母の腕から抜け出して、にこりと笑う。


「また少し背が伸びたのね。休暇明けまでに制服を新調したほうが良いかしら?」


「それは明日以降セバスに相談します」


そんな会話の区切りがついたのを見計らったように、母の後ろから妹の声がした。


「おかえりなさいませ、おにいさま」


見ると、つたないながらもカテーシーを披露する妹の姿があった。




おにいさまがかえってきたわ・・・!!


兄が帰ってくるまでに、キングストン夫人とお母様とメイド達にも手伝ってもらって、お茶会の準備をした。小さめの応接室に、温室から花を摘んできて飾ったし、料理長に頼んで甘さ控えめのクッキーとカヌレを焼いてもらった。メイドに教えてもらいながら、紅茶の淹れ方も練習した。セッティングはばっちりなはずだ。

それから、お気に入りの若草色のドレスに着替えて、髪も可愛く結ってもらった。髪飾りには応接室に飾った花と同じ生花を使ってもらった。


そうしている間に、あっという間にお兄様が帰ってきたのだ。


久しぶりに見るお兄様は、なんだか背が伸びたみたい。お父様の髪の色とお母様の瞳の色を受け継いだお兄様は、見た目はお父様のミニチュア版だ。


お母様とのお話が終わったら、次は私が挨拶する番。


キングストン夫人に教わった通りのタイミングで、お兄様にカテーシーを披露する。


足を引いたときに少しぐらついてしまったけど、頑張って我慢する。


そして顔を上げると、びっくりしたみたいに目をまん丸にしているお兄様がいた。


「おにいさま?」


なにか失敗しただろうか・・・


ちょっと小首をかしげてしまった私に、お兄様は破顔した。


「ただいま、リリ」


私の頭を撫でながら、お兄様が笑顔で言う。


「セバスからリリの淑女教育のことを聞いたばかりだったんだが、本当に頑張っているんだな」


「はい!だってわたしはもう5さいのりっぱなしゅくじょですから!!」




自室へ向かうレオンと一旦別れて、リリアナはメイド達と共に応接室へ急ぐ。

待機してくれていたメイドがお茶の準備を整えてくれていたので、「ありがとう!」と笑顔で礼を言うとにこりと笑って「とんでもございません」と答えてくれた。


あとは、お兄様と部屋に向かった執事長セバスが頃合いをみて応接室へ誘導してくれるはずだ。


茶葉を確認したり、並んだクッキーやカトラリーを確認したり、ソファのクッション位置を直したりしていると、お母様が応接室に顔を出した。


「まぁ、リリアナ。とっても素敵な準備ができたのね」


ふんわり微笑んで褒めてくれるのが嬉しくなって、リリアナは母に抱き着いた。


「みんながてつだってくれたのです!おにいさま、よろこんでくださるかしら?」


「えぇ、こんなに素敵なお茶会の準備を見たら、きっと大喜びよ」


優しくリリアナの髪を撫でると、公爵夫人はふふ、と笑った。


「今度はお母様もリリアナのお茶会に招待してくださる?お父様も一緒に」


「はい!おとうさまがおかえりになったら、またおちゃかいをします!」


張り切って頬を赤くするリリアナを再度撫でて、


「とっても楽しみね。きっとお父様も喜んでくださるわ」


そう言った公爵夫人は、頑張ってね、とエールを残して応接室を後にしていったのだった。




そうして待つことしばし

自室で少し楽な服に着替えたレオンが執事長の誘導で応接室にやってきた。


「ようこそいらっしゃいました、おにいさま」


「リリ?これは?」


セバスが上手く隠してくれたらしく、なにも知らずに応接室に訪れた兄は見慣れない装飾がなされた部屋を見回している。


「おにいさまがおかえりになったので、おにいさまのためのおちゃかいをしたくてじゅんびしたんです」


「私のために?リリが?」


「はい!どうぞそちらにおかけになってください、おにいさま!」


執事長が引いた椅子に腰かけたレオンは、状況を飲み込むと嬉しそうに笑った。


「ありがとう、リリ」


兄の笑顔にうれしくなったリリアナは、むん、と気合を入れる。

なにせこれから、紅茶を淹れるという一大ミッションが待っている。

お湯をポットに入れるのはメイドが手伝ったが、ここから先はリリアナの練習の成果の見せ所である。

たどたどしい手付きで紅茶を淹れる様子はいかにも危なっかしく、レオンも執事長もメイド達もハラハラしながら真剣な顔のリリアナを見守り・・・

無事にカップに紅茶が注がれるまで皆が呼吸を忘れていたので、「できました!」とリリアナが声を上げると同時に誰ともなく ほぅ・・・と息が漏れた。


「おにいさま、どうぞめしあがってみてください!」


こうしてリリアナのお茶会は無事に開催の運びとなったのである。

第3話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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