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転生令嬢 3

楽しかった宴の余韻に浸りながらセシリアが自分の天幕に戻ると、侍女が出迎えてくれた。


「湯浴みの準備を整えておきました」


「まぁ、おふろ?わざわざ?」


何せ旅の最中なので、普段はお湯に浸けて絞ったタオルで身体を清拭し、残りのお湯で髪を洗うのが精一杯だ。移動中に水を補給するにしても、運搬の事を考えると水は貴重だからだ。

天幕の隅に目をやると、夕食前には無かった天蓋付きの仕切りが設けられていて、隙間から湯気が漏れてきていた。


侍女がにこりと笑って言う。


「副騎士団長様からの心付けでございます。せめて洗礼の前に身を清めて頂きたいと」


「そうなの…あした、おれいをいわなくちゃ」


限られた物資の中からわざわざ宴を開いてもらい、お風呂の準備までしてもらったのだ。気を遣わせてしまったことが申し訳なかったが、久しぶりのお風呂は嬉しい。

お風呂とはいっても、大きなタライに湯が貯められて、冷めないように火の魔石が沈められている簡素なものだが、こんな旅の最中には十分な贅沢だ。そのお湯に香油を垂らして香り付けをしている侍女に、ふと思いついて声をかけた。


「これまで、わたしにつきそってくれてありがとう。よかったらあなたもおふろにはいらない?」


2人いっぺんには無理だが、1人ずつ入れば問題ない。侍女も仕事とはいえここまで大変だったろうし、自分だけ入るのももったいない。


「まぁ・・・!よろしいのですか?」


「もちろんよ!」


喜色を浮かべる侍女に頷くととても嬉しそうにしているので、セシリアも嬉しくなる。


「ありがとうございます、お嬢様!さぁまずはお嬢様からお入りになってくださいまし。私は着替えを用意して控えておりますね」


「うん、よろしくね」


セシリアが仕切りの向こう側に行くと、侍女は中が見えないようにさらに衝立をして、そこにタオルを掛けてくれた。

服を脱ぎ、下着も脱いで髪を適当に結い上げたセシリアは、手桶でお湯を汲んで身体にかけて汗を流し、タライで作った湯舟にゆっくりと入った。深さはさほどないので半身浴になってしまうが、それでもやはり気持ちいい。天蓋があるので蒸気がこもって、簡易の浴室は蒸し風呂のようだった。


抱えた膝に顎を乗せて、ふー、っとため息をもらす。じわじわ汗が滲んでくる感覚を楽しんでいると、衝立の向こうから侍女が声をかけてきた。


「よろしければお髪を洗わせて頂きますが・・・」


「ううん、じぶんであらうからだいじょうぶよ」


「では何かございましたらお声がけください」


茹だる前に一旦簡易の浴槽から出て、自分なりに念入りに髪を洗い身体を擦る。清拭するだけでは落ちきれなかった身体の汚れが垢と共に落とされて、改めて副騎士団長の心遣いに感謝した。せっかくの洗礼式に小汚い身体で行かずに済んだのだ。そもそもそういう事は父である辺境伯が指示すべきではないかと思うが、あの父では無理だと思い直す。適材適所とはこのことかと思うと可笑しくなった。


全身磨き上げて再び風呂に浸かりながら、セシリアは明日の洗礼式に思いを馳せる。明日になれば、洗礼を受けたら、ここのところ感じている胸のざわめきは晴れるのだろうか。


セシリアはふるふると銀の頭を振って、浴槽から立ち上がる。わからないことに頭を悩ませるのは時間の無駄だ。それより早く眠って体調万全の状態で洗礼式に臨もう。身体を拭き、用意されていた寝着を身につけて衝立の向こうに出ると、侍女が冷たい水を差し出してくれたのでありがたく受け取る。

水を飲んで、侍女が肌と髪の手入れをしてくれる間大人しく待ち、ある程度終わったところで侍女にも入浴を勧めた。


「きがえをもってきて、あなたもおふろにはいるといいわ。おゆもまだたくさんあるとおもう」


セシリアにそう言われて、いそいそと自分の天幕から着替えを持ってきた侍女は、恐縮しながらも嬉しそうに衝立の向こうに姿を消した。


侍女が入浴する水音を聴きながら、セシリアは寝台に腰掛けた。お日様の匂いがする藁で作られたこのベッドとも今夜でお別れだ。枕元に置いておいた、今回の旅の間ずっと身に付けていた短剣と騎士団から贈られた小柄をそっと撫でる。この2つだけは、家に帰っても大切にしたい自分だけの大切な宝物だ。母は渋い顔をするだろうが、私の意思を無視するような人ではないので大丈夫だと思いたい。


お風呂で温まったせいか、トロトロと眠気がやってきて、宝物を触りながらベッドに横たわった。


(あした、せんれいかぁ・・・)


何が変わるとも思えないが、それでも何故かざわつく胸を押さえたまま、セシリアの瞼が落ちていく。


やがて入浴を終えた侍女が出てきた時には、セシリアは健やかな寝息を立てており、小さく笑った侍女はそっと幼い主人に毛布と布団を掛けた。


「お休みなさいませ、お嬢様」


眠るセシリアを起こさないように侍女は静かに天幕を出て、明日に迫ったセシリアの晴れの日のための準備をする事にしたのだった。


転生令嬢編第3話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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