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逆行令嬢 25

その後、大司教は公爵との話し合いを元にリリアナの洗礼の記録版を作成していった。記録版は水晶板で出来ており、これは神殿に保管され、その写しが国に提出される。


リリアナの記録版に、保有する魔力が膨大なものであること、水の魔力に最も適正があることが大司教の神聖力によって記されていく。


その作業を終えると、大司教は洗礼の時にリリアナが触れた魔石板に手をかざした。神聖力に包まれた魔石板は白金の光を放ちながらみるみる姿を変え、やがて小さく丸い水晶のような石に変化する。

大司教はその石を手にとって、リリアナへ差し出した。


「こちらはお嬢様の守り石です。生涯身に付け大切になさってくだされ」


リリアナは渡された守り石をそっと握り締める。洗礼後に皆が持っている守り石が自身の洗礼の魔石板だったなんて知らなかったが、そうであるからこそ皆大切に持っていたのだ。


「これにて、お嬢様の洗礼の儀は恙無く終了致しました。どうかお嬢様の未来に幸多からんことを」


『ありがとうございました』


公爵とリリアナは、最大限の敬意と感謝を以って大司教に頭を下げたのだった。




公爵とリリアナが洗礼の間から出ると、扉から少し離れた廊下に神官が待機していた。


「お疲れ様でございました。ご家族が待たれている控えの間までご案内致します」


礼をとる神官に礼を述べ、公爵とリリアナはその後ろに続いて歩き出した。

父と並んで歩きながら、リリアナはこれからの事に思いを馳せる。どうやら自分は、父や大司教に重大な決断をさせてしまうほどに大きな力を得てしまったようだ。そのお陰で、つかの間かもしれないが自由な時間を与えてもらった。ならば、その時間を無にすることのないように、しっかりと研鑽を積まなければならない。家族のためにも、大司教のためにも、自分のためにも・・・


「おとうさま」


隣の父に声をかけると、父は歩きながら目線をくれた。


「どうした?リリアナ」


「わたし、がんばってべんきょうするので、おにいさまとおなじがくえんにいかせてほしいのです」


「それは、かなうものならそうして構わない」


学園に入るためには入学試験に合格しなくてはならず、その結果にはいかなる権力も介入できないので、リリアナは自分の力だけで臨まなくてはならない。だから父も『かなうものなら』と言うのだ。


「もしかしたら、おかあさまはさみしいかもしれないとおもって・・・」


心配そうに言うリリアナにふっと笑いかけて、公爵は言った。


「リリアナが本当に行きたいと思っているなら、お母様も反対はしないさ。リリアナが学校に行っている間は、私もお母様も家の皆も寂しい思いをするだろうが、その分休暇のときに会えるのが楽しみになる。リリアナも、レオンに会えるのが楽しみだったろう?」


「はい」


「それに、時々学園でのことを手紙に書いて送ってくれると皆安心するだろう。心配せずとも大丈夫だとも」


「では、おかあさまにはわたしがじぶんでがくえんにいきたいですとおはなしします」


「そうだな。では、学園の入学試験に備えて家庭教師を増やす手配をしよう」


「よろしくおねがいします、おとうさま」


洗礼式でのことは本人の中でなんとか消化した様子をみせるリリアナに、公爵は内心安堵の息をもらした。突然『大いなる力を持つ精霊の加護がある』やら『膨大な魔力を有する』と言われても、臆する様子や驕り高ぶる様子もない。我が娘ながら、大した胆力の持ち主である。だからこそ、この事態になったとも言えるのかも知れないが・・・こんなことは、どちらが先かの話ではない。


気になるのは、リリアナに加護を授けているという精霊のことだ。属性は不明ながら、大きな力を持つ存在だという。間違ってもその力を暴走させないためにも、リリアナには人よりも自制が求められる。精霊についても、より深く学ぶべきだろう。入学試験の勉強もさることながら、この件も急務だ。その知識を学ばせるための算段もつけなくてはならないな、と公爵は思考を巡らせる。


リリアナにとっては、これからの1年は大変なものになりそうであった。




家族用の控え室に入ると、レオンがソファから立ち上がってリリアナと公爵を出迎えた。


「お帰り、リリ。洗礼おめでとう」


「ありがとうございます、おにいさま」


公爵夫人も立ち上がって娘と夫に微笑みかける。


「無事に終わったようで何よりですわ」


「うむ。リリアナの洗礼内容については、邸に戻ってから話すとしようか」


父は、きっと兄と母にも正確な内容は伏せるのだろう。リリアナの洗礼については、あの場にいた3人だけの秘密だから。

少し複雑な気持ちになったリリアナの内心に気づかぬ様子で、母はリリアナの髪を撫でた。


「少し休んだら、邸に戻りましょう。今夜はご馳走ですよ」


きっと邸の皆が張り切ってお祝いの準備を整えてくれているのだろう。

そう思うと心が温かくなったようで、リリアナはふんわり笑って、はいと頷いたのだった。

第25話を読んで頂き感謝申し上げます!

このお話で逆行令嬢リリアナのお話は一旦終わりで、次からはもう1人の主役、転生令嬢のお話が始まります。

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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