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逆行令嬢 21

⭐︎週末限定⭐︎朝・夕2話更新!

雪の精霊のような儚く美しい容姿をした令嬢から飛び出す思いもかけない言葉にしばらく呆けてしまったリリアナだったが、驚きが通り過ぎるとなんだかおかしくなってきた。


「フ・・・フフ!おうちのほうがたいへん、って・・・!」


思わず笑ってしまったリリアナに、セシリアはわざと腕組みをして難しい顔をしてみせる。


「わたしをりっぱなしゅくじょにしたいおかあさまと、ヴェルリンドのでんとうだ!ってぶじゅつをおしえたいおとうさまがいると、わたしもなかなかたいへんなのよ」


「まぁ・・・おんなのこに、ぶじゅつを?」


この国には女性騎士も存在しているが、その数はやはり男性に比べると少なく、騎士団所属の女性騎士ともなると全体の1割もいないくらいの珍しい存在だ。女性王族の身辺警護など、女性騎士の活躍が求められる場は意外と多いのだが、そのなり手は少ない。危険も多い騎士職にわざわざ可愛い娘を就かせたいと思う親も少ないのだろう。貴族の令嬢は護身術を嗜むことすら珍しいことを考えると、『ヴェルリンドの伝統』というのがどういうものなのかリリアナには想像もつかなかった。


そんなリリアナに肩をすくめて笑ってみせたセシリアは、「あちらにすわっておはなししない?」と誘ってきた。ふたりでソファに並んで腰かけると、セシリアがリリアナの顔を上目遣いで覗き込むようにして、


「しりあったばかりなのに、なれなれしくしてごめんなさい。けいごもくずれちゃうし・・・」


と言ってきた。そんなことは全く気にしていなかったリリアナはにっこり笑う。


「ううん、きにしないで。おはなしできてうれしいわ」


「わたしもうれしい!おなじとしのおんなのこと、おはなしするのははじめてなの」


「まぁ、わたしもよ!」


すっかり意気投合したふたりは、お互いのことを色々と話す。どんな勉強をしているかや、家族のこと。自分の家の中のことしか知らないリリアナに比べると、セシリアは自分の領地の外のこともよく知っていて、話す内容に興味が尽きなかった。


「セシリアさまは、とってもものしりなのね」


リリアナが感心しながら言うと、セシリアはとんでもない、と首を振る。


「せかいはもっとひろいのよ。6さいのわたしがしってることなんてほんのすなつぶくらいだわ」


それよりも、とセシリアはリリアナに向き直る。


「もし、よければなんだけど・・・わたしとおともだちになってくれないかしら?」


それはリリアナにとって願ってもいない言葉だった。嬉しくて頬を紅潮させながら、リリアナはぶんぶんと首を縦に振る。


「もちろん!わたしでよければよろこんで!!」


「よかった! じゃあ、わたしのことはシアってよんで?」


「わたしのことも、リリってよんでほしいわ」


にこにこと笑うセシリアは綺麗で可愛くて、リリアナの胸は喜びでいっぱいになる。


(はじめてのおともだちがシアでうれしい!)


せっかく手に取った本を読むのも忘れて、リリアナは友人との会話に夢中になったのだった。




「ねぇ、シアはグランディスがくえんににゅうがくをめざしてるの?」


ふと思いついたように問いかけてくるリリアナに、セシリアは首を傾げた。


「うーん? あんまりかんがえたことなかったなぁ。おとうさまははんたいしないとおもうけど、おかあさまはいやがりそう」


「そうなのね・・・」


貴族の子女は皆、7歳から教育機関に行くことが義務付けられているが、選択肢は兄のレオンが通うグランディス学園だけではない。淑女教育に特化した女学校や、騎士団が運営する騎士学校、大商家が国と共同で運営している経済学に特化した商科学校などもある。グランディス学園はこの国で一番の教育機関であることは間違いないのだが、身分に拘らず門戸を開く姿勢や、実力主義のやり方に反発を覚える貴族も多いのだ。


「ほら、おかあさまはわたしのしゅくじょきょういくだいいちだから。がくえんだとほかにやりたいことがいっぱいできて、しゅくじょきょういくをわたしがサボるってわかってるのよ」


手をひらひらと振っておどけたように笑うセシリアを見て、リリアナは自分の勘違いを悟った。


(へいみんがかようのだいやだから、じゃなくてシアがサボるからなのね)


「リリはがくえんにいきたいの?」


紫の瞳を興味深そうに輝かせたセシリアが問いかける。


「うん。おにいさまもいるし、いろんなべんきょうをしてみたいの」


セシリアは、ふむ・・・と考えると、「じゃあ、わたしもがくえんにいけるようにがんばってみようかしら?」と言ったので、リリアナは手を打って喜んだ。


「シアもがくえんにかようのなら、きっととってもたのしいわ!」


「そうよね!リリがいるならとってもたのしそう」


「わたしもがんばって、きっとがくえんににゅうがくしてみせるわ」


「うん、ふたりでがくえんにいこうね!」


ふたりが手を取ってお互いを励まし合っていると、部屋の扉が開いて神官が現れた。


「リリアナ・アラモンド公爵令嬢様。洗礼のお時間です」


神官の言葉はリリアナの洗礼式の始まりと、初めて出来た友人との時間の終わりを告げたのであった。

第21話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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