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逆行令嬢 14

執事長に先導されて大広間の扉の前にたどり着いた兄妹は、そこに控えていたメイド達によって再度身だしなみを整えられた。


「よろしいですか?」


執事長の問いかけに頷き返すと、扉の前にいた使用人が大広間の扉をゆっくりと開け放つ。


「公爵家令息レオン様、並びに公爵家令嬢リリアナ様のご入場でございます!」


案内係が会場の賑わいに負けないような声量で高らかにふたりの入場を告げると、大広間に集まっている人々の視線が一斉にこちらに向けられたのがわかった。


き、きんちょうする・・・!


思わず顔が固まってしまったリリアナに、兄は小さく囁いた。


「リリ、大丈夫だ。私がいる」


見上げると兄が微笑んでいて、その笑顔を見てリリアナの体から少し力が抜ける。


「我が家の妖精シルフは今夜は一層可愛いからな。みんな見とれているのさ」


「おにいさまったら」


いたずらっぽくそんなことを言う兄に笑って、リリアナは今度こそしっかり前を向いて微笑みを浮かべる。


「さぁ、父上と母上のところへ行こうか」


「はい」


兄のエスコートで、広い大広間の中をリリアナはゆっくりと進んでいく。その様子は幼いながらも優雅であり、その可憐な姿に集まった者達は皆感嘆の息を漏らしているようだった。当のリリアナは周囲のそんな様子には全く気付かず、家庭教師ガヴァネスに教わった通り淑女らしく歩くことに必死であったが。


やがて大広間の上座に父と母の姿が見えて、リリアナは内心ホッとする。兄と一緒に父母の前に立って、礼をとった。


「父上、母上に新年の祝いを申し上げます」


ふたりで声を合わせて新年の挨拶を告げると、両親から声がかけられる。


「そなたたち2人共に、善き精霊の祝福があらんことを願う」


「どうかそなた達にとってよき一年となりますように」


顔をあげると、両親が微笑んでいるのが見えた。こうして公の場で挨拶するのは初めてだったが、失敗せずに済んだようだとリリアナは胸をなでおろした。


公爵がレオンに目配せをして、レオンはそれに従ってリリアナを父の隣にエスコートすると、小声で「頑張れよ」と声をかけてから父に妹を託して、母の隣に移動した。

レオンが自分の場所に移動したのを確認してから、公爵は大広間に響く豊かな声で話し出した。


「皆、今宵は、遠路に関わらずよく集まってくれた」


大広間に集まった人々は公爵の声に耳を傾ける。


「今年は、我が娘リリアナが洗礼式を迎える年でもある。よって、少々早いが今日この機会に貴君らには我が娘を紹介したいと思う」


公爵がスッと差し出した手に自らの手を乗せて前に出たリリアナは、美しいカテーシーを披露する。


「こうしゃくけがちょうじょリリアナともうします。どうぞおみしりおきくださいませ」


やがて誰からともなく拍手が巻き起こり、次第に大きな拍手の音に会場は包まれた。

公爵が右手を挙げるとやがてその拍手もおさまり、


「それでは皆、心ゆくまで今宵の宴を楽しんでくれ」


という公爵の言葉が終わると同時に楽団が音楽を奏で始めて、リリアナのお披露目の挨拶は終わったのだった。




「リリ、立派な挨拶だったな」


大勢の前での挨拶を無事に終えてちょっと脱力しているリリアナのところに兄がやってきた。果実水の入ったグラスを差し出してくれたので、ありがたく受け取って口をつける。緊張していたので喉がカラカラだったし、果実水はとてもよく冷えていて体に染み渡るようだった。


「れんしゅうしたけど、とってもきんちょうしました・・・」


果実水を飲み干したリリアナは、やっと安堵の息をつく。

そんなリリアナに笑いかけてレオンは頭を撫でてやる。


「ちゃんと出来てたから大丈夫だ。母上も感心していたぞ」


「よかったです」


母も褒めてくれているなら大丈夫だろう。安心した様子のリリアナに、


「そろそろお腹が空いてないか?昼は軽食だったろう?」


と兄が聞いてきて、言われた途端にお腹が空いているのを自覚した。緊張状態だとお腹が空いたのもわからなくなるのだな、とリリアナは妙なところに感心してしまう。


「おにいさまもいっしょにたべませんか?」


「もちろんだ。私もお腹がぺこぺこだよ」


片手で腹を抑えておどけたように言う兄の様子に笑っていると、給仕係が皿にいろんな料理を乗せて持ってきてくれた。あらかじめレオンが声をかけておいてくれたのだろう。


宴の場なので、食前のお祈りは簡素に済ませて、ふたりは食事を始めた。その間に、レオンは会場内にいる来客達のことをリリアナに教えてくれた。


「多分、リリがこの後父上と一緒に個別に挨拶を受けるのは、領内の4人の首長達だけだ。あちらにいる青い礼服と緑の礼服のふたりが、南と西の首長だな。それより2つテーブルを離れたところにいる、黄色のドレスのご婦人と一緒にいるグレーの礼服を着ているのが東の首長で・・・」


レオンは会場をさりげなく見渡しながら首長達の場所を確認している。


「あとは、あそこだな。濃い紫色の礼服を着てて、執事長セバスと話してるのが北の首長だ」


兄の説明を聞きながら、リリアナも首長達の服装を確認して記憶しておく。距離があるので顔がはっきり確認出来ないが、父と一緒にいるのだから大丈夫だろう。


「ありがとうございます、おにいさま」


礼を言うリリアナにレオンは笑いかけた。


「大したことじゃないさ。さぁ、まずは腹ごしらえだ。料理を食べたら次はデザートもあるぞ!」

第14話を読んで頂き感謝申し上げます!

この後も楽しんで頂けたら幸いです。


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