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 訓練室──。

 無機質な壁と床が静寂を抱えるその空間で、陽暈はひとつ深く息を吐いた。目の前に立つのは、冷静さと余裕を纏った教官の零士。

 陽暈はいま、前回の任務中に解放された、自身の新たなバーストアビリティ──触式に関するレクチャーを受けている。


「さてと、まずは触式というアビリティがどういうものかを知るところからかな」


 軽く腕を組みながら、零士がいつもの調子で口を開く。


「前に零士さんが教えてくれたけど、正直よく分からないっす」


 陽暈は小さく肩をすくめ、後頭部をかく。笑ってごまかすその仕草に、未だ自分の力に戸惑いが残っていることが滲んでいた。

 そんな彼の様子を見て、零士はふっと目を細める。


「あー懐かしいね。ワイラーに襲われた時に少し教えたっけか」


 その一言に、陽暈の脳裏にはあの日の戦闘がよみがえる。冷たく張り詰めた空気、皮膚を撫でるような殺気。零士とワイラーの高次元の攻防は、いつまで経っても鮮明に覚えている。


「っすね。脊髄反射がどうのって」


「そうそう。触式の真骨頂は脊髄反射。とりあえず、アビリティ解放してみて」


「うっす!」


 気合を入れるように返事をすると、陽暈はゆっくりと目を閉じた。意識を全身の皮膚へ、神経の隅々へと集中させていく。わずかな空気の動きすら拾い上げようとするかのように。

 そして、声を絞り出す。


「バーストリミット・オフ」


 直後、身体中の体毛が一斉に逆立ち、皮膚が周囲の情報を貪るように反応し始める。神経がむき出しになったような鋭敏さとともに、青いオーラが陽暈の身体から立ち昇った。


 その瞬間、彼の脳裏によぎったのは──紫のオーラを纏った、ファウンドの姿。敵として相対したその男が放っていた、あの異様な気配。


「そういえば! ランペイジ? ってなんなんすか?」


 陽暈が思い出したように問いかけると、その場の空気が一瞬だけ止まった。


「え……」


「へ……?」


 零士と陽暈、二人の声が妙な間で交錯する。


「あれ、そんな大事なこと教えてなかったっけ」


 あっけらかんとした口調に、陽暈が眉をひそめる。


「教わってませんが!?」


 しばしのフリーズを経て、零士は何事もなかったかのように、人差し指をピンと立てた。


「説明しよう!」


 指先を掲げたまま、お馴染みの博士キャラを憑依させ、エアメガネをクイッと上げる仕草を加えた。


「ランペイジとは、身体的に死に直面した時、理性を失って見境なく人を殺してしまう、いわば凶暴化するという意味なのです」


 その調子に陽暈は戸惑いつつも、興味を隠せない様子で首を傾ける。


「死に直面って……リリースやバーストとは違うんすか?」


「素晴らしい質問ですねえ」


 やけに上機嫌な声色で、零士は頷いた。


「混同しがちですが、似て非なるものです。リリースやバースト、そしてオーバーに関しては、精神的な臨死体験プラス、生への執着が基本です。極端な話、屋上から突き落とされた人が本気で死ぬかもって思って、なおかつ死にたくないって強い意志があれば、地面に叩きつけられる前にリリースしたりすることもなくもないのです」


「なるほど……ですね……」


 零士につられて敬語がこぼれるが、その語尾に自分でも少し腹立たしさを覚える。だが、ここで口を挟むと長くなりそうなので、ぐっと我慢する。


「ランペイジはその後の話。地面に衝突して瀕死の状態になり、あと一歩で死ぬって時、ごく稀に起きる奇跡なのです」


「そういうことだったのか……」


 陽暈が唸るように呟くと、零士はさらに付け加えた。


「ちなみに、ランペイジ状態になった人間の脳の制限解除率は限りなく100%に近づくらしい」


「え? じゃあバーストとかオーバーの壁を一気に越えられるってこと?」


「ノーノー。あくまでも一時的な制限解除だから、ランペイジ状態じゃなくなれば、元の解除率に戻る」


「ま、そんな簡単な話じゃないか」


「だね。あと、ランペイジ状態になると、脳じゃなくて脊髄で体が動くから、なかなか意識を奪うのが難しい。脛椎でも背中に近いところをピンポイントで叩いて、脊髄震盪を起こさないといけないんだけど、これがなかなかどうして、上手くキマらないんだなー。じっとしてくれないし」


 そう語る頃には、いつの間にかエアメガネを外していた零士が、素の表情に戻っていた。


「それは危ないっすね……」


 陽暈がやや引き気味に返すと、零士は肩をすくめる。


「でもまぁそう簡単に引き起こせるもんじゃないよ。いまのところバーストしてる人にしか起きてないから、一般人はもちろん、リリースしてる程度の捜査官ですら起こせないと思う」


「それならいいっすけど……」


「ささ、触式の話に戻そうかな。ほら、目を瞑ってて」


 軽快に促す零士の声に、陽暈は素直に従い、ゆっくりと瞼を閉じる。


 その直後──。


 頬に何かが触れた感触と同時に、世界がスローモーションに沈んだ。音が遠のき、空気が重くなる。


 次の瞬間、陽暈の身体は無意識に反応していた。首が捻じれ、背中がのけ反る。意識の届かないところで、肉体が勝手に動いたのだ。


「うぉあっ!」


 思わず声を上げて目を開けると、視界には赤いオーラを纏い、拳を振り抜いたあとの零士が映った。


「お見事」


 零士はニカッと笑い、拳を引いて軽く拍手を送る。


「いまのが脊髄反射っすか?」


 息を整えながら尋ねる陽暈に、零士は誇らしげに頷いた。


「そうだね。陽暈くんのほっぺたに俺の拳が触れたのに、避けられた。これは視式を扱える俺が言うんだから間違いないよ」


「これが触式……」


 陽暈は思わず呟いた。自分の体が、自分の意志よりも先に動くという奇妙な感覚。だがそれは、確かに本物の力だった。


「言ったっしょ? 自動的に攻撃を避けてくれるチート級のアビリティだって」


「言ってたっけ。でも確かに、これは自分でも怖くなるレベルの力っすね……俺、零士さんにも勝てるかなあ!」


 陽暈の顔に浮かぶのは、冗談とも本気ともつかない笑み。だが零士は、嬉々とした口調で返す。


「いいねぇその威勢! いい波乗ってんねぇ!」


「なんすかそれ」


「……あ、いや、死語かも……まぁま! そんなことはどうでもいいから! 触式の弱点を教えがてら、俺に勝てるかどうか試してみよっか!」


「弱点っすか。とにかくやってみるっす!」


 陽暈が拳を握ると、空気が一段と張りつめた。


「さぁ、構えてごらん!」


 促されるまま、陽暈は両の拳を軽く握り、胸の前に据える。力まぬよう、けれど集中を切らさぬように──呼吸を整えた。


 それまで終始笑みを浮かべていた零士の目が、その瞬間、まるで氷の刃のように鋭さを帯びた。冗談も余裕も、そこには一片もない。

 陽暈の背筋に、冷たい汗が一筋、流れ落ちた。


「いくよ」


 零士がいつもより低く囁いた。


 次の瞬間──。


 数メートル先にいたはずの零士の姿が、時間を飛び越えたかのように陽暈の目の前に現れた。何かが迫る気配に反応するよりも早く、胸倉を掴まれた感触が全身に走り、足が地を離れる。


「やべっ……!」


 飛翔。いや、投擲だった。


 その事実に気づいたのは、視界が天井を滑り、床が急速に近づいてきた時だった。顔面から激突する寸前、コマ送りのように、時の流れが鈍化する。思考より先に身体が反応し、腕が地を掠め、脚が巻き込むように回る。完璧な前転──無意識の受け身だった。


「っぶねぇ……」


 体勢を立て直し、思わず肩を撫で下ろす。心拍は早鐘を打ち、足元はぐらついているというのに、なぜか、身体は勝手に動いた。


「おぉー。大したもんだね、触式ってのは」


 理解が追いつかないまま顔を上げると、視線の先にいるはずの零士の姿は──十メートル以上も向こう。どうやらずいぶん投げ飛ばされたらしい。


「いま俺、どうなったんすか……?」


 床に着地した衝撃がまだ残る身体で、陽暈は呆然としたまま問いかけた。呼吸は浅く、鼓動だけが無意味に騒いでいる。


「いまのはワイラーとの実戦で見せたやつだね。触式における脊髄反射は打撃に対して本領を発揮する。つまり、衣服や腕、足なんかを掴まれることに関しては、危機じゃないから、脊髄反射は起きない。だからいまのは、陽暈くんの純粋な反射神経と戦闘スキルが求められた。ちなみに、顔から着地する時は脊髄反射が起きて、上手に受け身を取れたって感じだろうね」


「な、なるほど…………」


 視線を手のひらに落とす。自分の肉体でありながら、まるで誰かに操られているような不気味さが指先を這った。支配ではなく、共存とも違う。本能が理性を追い越して先に行ってしまった感覚だった。


「あ、そういえば、なんか時間の流れが遅くなるっつーか、そんな感覚って普通なんすか?」


 思い出したように尋ねると、零士は頷いた。


「それは時の遅延って俺らは呼んでるんだけど、いまのところ視式、聴式、触式、の三つのアビリティでのみ確認されている現象だね。フリーズとは違って、周りからすると時間の流れは遅くならないけど、主観的に遅く感じるんだ」


「へぇ。でもこれが起きるとすげぇ助かるっすね」


 さらりとこぼれた所懐だったが、よく考えるととんでもない力だ。触式があるだけでも、敵の攻撃をほぼ無効化できるのに、回避しながらも冷静に次の一手を思案する時間の猶予が与えられる。まさにチート級の異能。


「正直これはズルいよね」


 零士は笑いながら肩をすくめた。


「てか、どうして零士さんってそんなに触式に詳しいの? 局には触式を使える人がいないって碧が言ってたし」


 陽暈はふと思い立ったように尋ねた。零士は、軽く息を吐いて目を伏せる。


「あぁ……前までいたかな──任務で死んじゃったんだ。言ったら俺の師匠だったんだけどね」


「そうだったんすね……なんかすみません」


「ま、気にしないで。別に引きずってないから」


 柔らかく笑ってみせる零士だが、その笑顔の奥に浮かぶ影を、陽暈は見逃さなかった。過去の喪失は、時に無言のまま現在を縛ることを、知っている。


「とりあえず、今日は触式に慣れることを目標として、俺との模擬戦を繰り返そうじゃないか」


「おなしゃーっす!」


 それからの日々は、触式に慣れることはもちろん、その限界や弱点の克服も視野に入れた、密度の高い訓練の連続だった。柳生の計らいで当面の任務が外され、時間のすべてを鍛錬に費やすことができたのは、何よりの幸運だった。

 零士が他任務で不在の折は、尋芽や碧を相手に訓練を重ねた。だが、両者ともまだバーストに至っていない。おのずと陽暈との間に生じる力の差は、もはや気まずさに近いものがあった。零士の視式という規格外の能力と対峙し続けたことで、自身の感覚が、常人のそれとはかけ離れてしまったのかもしれない。


 それでも、彼らとの稽古は無駄ではなかった。むしろ、バーストアビリティという力の異常性を再認識する機会となった。

 あまりにも強すぎるその力は、ときに人の心を歪める。もしもそれを悪意ある者が手にすれば、取り返しのつかない事態を招くこともあるだろう。訓練の最中、何度となくそんな想像が陽暈を冷や汗へと導いた。


 およそ二週間が経過した頃──。

 陽暈の技量は、バースト前とは別人といっていいほどに成長していた。いまや、零士との戦闘でも互角に渡り合う場面が珍しくなくなっていた。もっとも、フリーズを強制発動されれば勝ち目はない。だが、それすらも条件付きの敗北に過ぎないと感じられるだけの自信が、いまの彼にはあった。

 そして訓練の最終日、零士は言った。いまの陽暈なら、オーバーアビリティを持つヴェルマと、いい勝負になるかもしれないと。


 輸送車襲撃事件──全身黒尽くめの悪夢のような男。

 当時の陽暈は、零士とヴェルマのやり取りは、ただ立ち尽くして眺めることしかできなかった。彼にとって次元の異なる現象だった。


 だが、いまは違う。

 波留の言葉も、幻陽の最期も、無為にはしない。その誓いを果たす舞台に、ようやく自分も立てる──そう思えるほどには、強くなれた。


 零士にも認められた翌日、新たな任務が発足。指定された会議室へ足を運んだ陽暈。


「それでは僭越ながら」


 静かな一声で会議の幕を開けたのは、進行役を務めるのはもちろん、之槌だ。


 今回召集されたのは、陽暈をはじめ、気心の知れた碧と尋芽、そして真壁と零士を加えた五人。顔ぶれは親しいが、内容は穏やかではない。


「この度、ブラックドッグに拉致された方々の捜査を進める中で、物騒な情報を掴みました。今回皆様に依頼したいのは、とある賭場の調査ですな」


 スクリーンが点灯し、そこに現れたのは、上質なスーツに白髭をたくわえた、如何にも金と権力を纏った老人の姿だった。


赤羽(あかば)正吉(しょうきち)。ご存じの方も多いとは思いますが、日本三大財閥の当主ですな。ここ一年、彼の邸宅にて、なにやら物騒な催しが行われているという情報が入りました」


 続いて映し出されたのは、思わず陽暈が眉をひそめるような写真だった。トラックの荷台に無造作に積まれた子供たち。血と泥に塗れ、無言で横たわる彼らの姿は、人形のように命の気配を失っていた。


「これは、赤羽氏の邸宅から運び出された子供たちです。いまだ身元が判明していない子もいますが、ほぼ全員が、日本の各都道府県で行方不明となっていた子供たちです」


「この子たちは、死んでんすか?」


 おずおずと口を開いた陽暈に、之槌は無言で頷いた。沈痛な動作に、全員が息を呑む。


「現段階で判明しているのは、この子供たちを使ったレフテリアと呼ばれる催しで、赤羽氏がずいぶんと稼いでいるということ。警備は固いですが、我々にとって潜入は容易い。ただ、懸念点が一つ」


 画面が切り替わり、仮面を被った黒い犬の姿が映し出される。赤羽と密やかに接触するその写真には、見覚えのある不気味さが。


「赤羽氏がブラックドッグと取引していることを鑑みると、護衛なども任せているという可能性があります。もしそうだったとすれば、我々だけで潜入するのは……」


「危いっすね……」


「いかにも。我々はあくまでも一般人ですから、相手がニュークとなると、たとえバーストしていなくとも歯が立ちませぬ」


「でも警備が固いんですよね。どうやって潜入するんですか?」


 碧の疑問に、之槌は口元を緩める。


「正面突破でございます」


「かちこむってこと!?」


 当然、碧が声を上げた。陽暈と尋芽も同様に顔を見合わせる。


「それもいいかもしれませんが、今回は穏便にお願いしたいですな。赤羽邸に招待されるのはグループ会社の会長や社長。他にも多くの資産家が声をかけられるようです」


 映し出されたスクリーンには、名だたる企業名とともに、錚々たる顔写真がずらりと並んだ。


「レフテリアに参加できるのは、招待状を持つ者のみ。招待状は赤羽本人、もしくは参加経験のある人物からの間接的な招待時に発行されるとのことです。ちなみに、谷内(やない)三郎(さぶろう)というフードデリバリー事業を展開する企業の代表から、九頭殿が招待状をすでに受け取っております」


 そこでようやく、沈黙を保っていた零士が白いメッセージカードのようなものを取り出し、人差し指と中指で挟んで見せびらかす。


「あぁ、零士さんはこの件でもう動いてたんすか?」


「零士? 陽暈くんはいったい誰のことを言っているのやら。私の名前は田名瀬(たなせ)(ひろむ)だよ」


 ない顎髭を撫でながら、片眉を上げてみせる零士。その態度に、説明する気が皆無であることを陽暈は察した。

 そうして場が止まりかけたところで、之槌が話を再開する。


「以前から九頭殿は田名瀬という名の投資家として、谷内社長に接触していました。その結果、ついに招待状の発行にこぎつけたということですな」


「ま、レフテリアのことは、何回聞いても見てのお楽しみだって言われて教えてくれなかったんだけどねー」


 口を尖らせた零士は、手元のカードをくるくると操り始めた。マジシャンのように、指先で白い招待状を現したかと思えば、次の瞬間には袖に滑り込ませて見せる。


「皆さまには、九頭殿改め、田名瀬殿とその家族という装いで堂々と潜入していただきます」


「そんじゃ俺は長男だな! 陽暈は次男! 尋芽たんはもちろん妹!」


 碧がテンションを上げて騒ぎ出したその瞬間、之槌が苦い顔をして手を上げた。


「申し訳ありません。もうすでに身分証などは作成しております。天若殿が長男で、蓮水殿は次男という家族構成で進めております。なにとぞご容赦ください」


「え、俺、末っ子ってこと?」


「かはは! 碧と尋芽が弟と妹か。おもしれぇじゃん」


「やったぁ! 陽暈くんがお兄ぃちゃんなんてサイッコォー!」


「まぁいいか。尋芽たんがお姉ちゃんってのも、悪くないか……」


「ふぉっふぉっ。元気な子供たちだね、母さん」


 胡散臭い親父役を自認した零士が、心なしかブルジョアに隣の真壁に共感を求める。


「そうですね。あなた」


 思いのほか、真壁もまんざらでもないらしく、乗っかってきた。

 そうして盛り上がる中、之槌が再び苦い顔を見せた。


「大変申し上げにくいのですが、家族構成は皆様の容姿を元に決めております。ゆえに、妻役は仁志殿で、真壁殿は末っ子の長女役でお願いします」


 その一言で、完璧な夫婦設定は早々に頓挫した。年齢相応の見た目──という理由は、誰も否定できない。


「わ、分かりました……では妹として尽力いたします。お兄様方、よろしくお願いいたします」


 陽暈と碧は、思わず言葉を失った。

 普段は冷静で、大人びた言動ばかりの真壁が、対極的な妹属性を獲得したその様子に、奇妙な感覚を覚えたのである。その丁寧な言葉遣いがゆえに、彼女の濃いグリーンスーツがメイド服に見えてしまうという幻覚にも襲われた。


「きゃははっ。陽暈くんが息子ってのも変な感じだけど、なんだか楽しそぉ!」


 いつもの調子で、尋芽のテンションが右肩上がりに上昇してゆく。


「任務は明後日です。皆様の身分証や衣装などはこちらで手配します」


「おいおい。父さんは蚊帳の外かい」


 招待状をゲットした功労者である父は、会話に参加できない。世間の家庭の父もまた、きっとそうなのだろう。


 斯くして、異色の家族が誕生した。

 任務はすでに始まっている。演じるは、偽りの親子。潜入するは、欲望が渦巻く深き闇の宴──レフテリア。

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