第75話【実家】
それからマーニと共に朝ごはんを食べ終えた後、
根本的に何故俺たちの周りの人間や自分自身にしか惨劇が起きないのか、デスティニーレコードは関係があるのかという疑問や、何故俺ともうひとり、マーニもデスティニーレコードを読めるのか等の疑問を解決する為、ふたりで俺の母親が住んでいる実家へ向かった。
ちなみに、もう知っているとは思うが忘れていた時の為に一応補足、父親は元冒険者でもう死んでいるから実家に居るのは母親ひとりだ。
コンコン
時刻が昼に近付きだし、段々と暖かくなって来た中で俺は実家の扉を軽くノックする。
すると、しばらくして、
「はい、どちら様――って、ハヤトじゃない!それに――へ!?まさかマーニちゃん!?大きくなったわね!!」
少しづつ頭髪に白髪が混ざりだしている母親が姿を見せた。
「ただいま、顔を出すのは久しぶりだな。母さん。」
「最後に会ったのは確か2歳くらいだったはずだが、覚えていてくれて嬉しいぞ。」
「当たり前じゃない!!さあさあふたりとも入って入って!!」
俺が久しぶりに家に帰ってきたのが嬉しいのか、それともマーニと一緒に来たという事もあり「俺がガールフレンドを連れてきた」と勘違いしているのかは知らないが、そうして母親はノリノリで扉を大きく開く。
……久しぶりに会ったが、相変わらず元気な人だな。
レイバーの様にガハハとよく笑っていた父親に、今もこうして元気な母親。全く、俺はうるさい夫婦の元に生まれたのだと改めて実感するぜ。
「じゃあお言葉に甘えて――というか実家どから当たり前だが、上がらせてもらうぞ。」
「お邪魔しますだ。」
そうして俺とマーニは母親の住む実家へと入って行った。
それから数十分間、俺、マーニ、母親の3人で様々な思い出話や最近どうかという話をした。
もちろん、1番最初に母親がニヤニヤしながら「で、ふたりはどこまで行ったのかしら?」なんて聞いてきたからすぐに否定したぜ。
母親はそれを聞いてすっごくガッカリしていたみたいだが――いや、当たり前だろ。というか絶対お似合いじゃないと思うんだが。
そして 、そろそろ話題にも尽きてきたという頃、俺はそろそろ本題に入る事にした。
「――あ、そういえばなんだが、実はひとつ気になっていた事があったんだ。」
「ん?どうしたのハヤト。」
俺は母親の顔色を伺いながら言葉を並べていく。
よし、大丈夫そうだ。
「今更かもしれないが、俺と――いや、俺たちとマーニは血の繋がった親戚なのか?」
「あぁ、なんだそんな事なの。ええそうよ。って言うか、マーニちゃんから聞かなかったの?」
「いや、聞いていたんだが――」
「聞いてくれよ、ハヤトのやつ小生が何度そう言っても中々信じてくれなかったんだぞ!」
するとそこで俺がセリフを言い終わる前にマーニがそう被せてきた。
「あらあら、良くないわねハヤト。人様を疑ってばかりいると、誰からも信じてもらえなくなるわよ?」
「……ッ!、そんなの、分かってるよ。」
ただ最近、周りを疑わないといけない様な場面が多いだけだ。
「――でも、もう一度言うけどマーニちゃんはちゃんと私たちと親戚よ。母さんは嘘つかないからね。」
「あぁ、知ってるよ。」
よし、じゃあ次は、
「まだ気になる事があるんだが、良いか?」
「なに?」
続いて俺は腰から持ってきていたデスティニーレコードを取り出すとページを開く。そして、
「この本になにか書かれているか?内容は読まなくて良いから。」
そう、これは俺とマーニが親戚で血が繋がっているからデスティニーレコードを読めるという仮説を本当にする為の行為だ。
血が繋がっていて読めるなら、俺の母さんだって読めないとおかしいだろ?
すると、母さんはデスティニーレコードを数秒凝視した後、
「え、えぇ。書いてるけど、これがどうしたのよ。」
「「……ッ!!」」
やっぱりだ……!!
という事は――デスティニーレコードをマーニも読める理由、それは血が繋がっているからで、繋がっていばおそらく誰でも読める事が出来る。って事だな。
「そうか、まぁこれはもう忘れてくれ。」
「?分かったわ。」
ふぅ、なんか予想が当たってた時は安心するぜ。
「じゃあ、俺たちはそろそろ帰るか。マーニ。」
「あぁ、小生は構わんが――ハヤト、まだ聞きたい事があるんじゃないのか?」
「え?聞きたい事?」
俺、なんか忘れてたっけ――って、!!そうだファブリスの事!!
デスティニーレコードが何故俺以外にマーニも読めるのかという疑問ばかりここに来てから考えてたから忘れてたが、1番大切だよなこれ。
まぁ、俺の母親がこれまで様々な惨劇を引き起こしてきた犯人の口から出てくる「先生」の正体であるファブリスの事を知っているとはとても思えないが。
「あ、そうだ。聞きたい事が最後にひとつあったんだ。」
「なに?言ってみなさい。」
「母さんって、ファブリスという名前を聞いたり、それがどんな人かとかって知ってたりするか?」
ダメ元だが、俺はそう母親に問う。
しかし、次の瞬間予想の遥か上を行く言葉が帰ってきた。
「あぁ、知ってるわよ。先生の事でしょう?」
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