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第74話【根本的に】


「――はっ……!?」


 フレイラで年に一度の祭り本番であり、デスティニーレコードに俺が死ぬと記されていた日。

 結局予告通り俺は突如として俺やケティに攻撃を始めた冒険者たちによって殺されかける。


 しかし、なんとかマーニの力により過去へ飛ばされる事が出来た。

 そして気が付いたら俺は自宅の椅子に座っていたのだ。


 すぐに椅子から立ち上がると、まずは時刻を確認する為窓から外を見る。


 小鳥たちはぴよぴよと合唱をしており、気持ちのいい日差しが野原に注ぎ込まれている様子を見るに、朝で間違いないだろう。


「……あ、おはよう。ハヤト。」

「――マーニ……!!」


 するとそこで、いつも通りの寝癖のついたマーニが寝室から出てきた。

 丁度良いところに……!!マーニには色々と話さなければならないが、まずは今日が何日か知るところからだよな。


「なぁマーニ、突然なんだが、今日は何日だ?」

「今日か?昨日が5月11日だから――今日は5月12日だろ?」

「5月12日か、」


 要するに俺はさっきから前日へ戻ってきた訳だな。


 ――と、するとそこでマーニが真剣な声色でこう訊ねてくる。


「あ、分かったぞ。デスティニーレコードにハヤトが死ぬと記された日が今日じゃないか、一応確認を取ったんだろ?」

「あ、いや、」

「確かに心配なのは分かるが、小生が昨日言った通り、誰にもこの事は言っちゃダメだからな。もしこれまで色々な世界線でハヤトが体験してきた惨劇を起こした主にでもこの情報が入ってしまえば危ない。」


 マーニは俺の瞳をじっと見つめながらそう言う。

 いや、分かってるし、実はもう体験してるんだよな、出来れば思い返したくは無いが。


 もう良いか、もう少し時間が経って自分の中でも整理がついてから話そうと思っていたが、この話の流れで出すのが1番言いやすい。


 だから、そこで俺は『先程未来から戻ってきた』という事をマーニに伝える事にした。


「その事なんだが、」

「ん?どうした?まさかまたデスティニーレコードに変化でもあったか?」

「いや、もう一度経験してきたんだ、明日に起こる出来事を。」

「……ッ!?」


 そこでマーニは一瞬目を見開き、驚きをあらわにするがすぐに冷静になり、


「……それでこうして戻って来ているという事は、その『明日に起こる出来事』というのは良い事では無いんだな……?」

「あぁ」

「小生に教えてくれ。ハヤトが明日何を体験し、なぜ小生の力を使って過去に戻ってきたのかを。」


 そうして俺は先程体験した事をマーニに話した。



「なるほど、町に居た冒険者がいきなりハヤトやケティ。そして小生に襲いかかって来たという事だな。」


 とりあえず大体を話し終わると、マーニがそう確認を取ってくる。


「あぁ。それに、襲ってきた冒険者は顔を知らなかったから恐らくこの町所属の冒険者じゃないと思う。」

「なるほど。ちなみにそいつらは、ハヤトやケティ以外の人間に攻撃はしていたのか?」


「それが無差別的な攻撃か」というのを見極める質問だろう。しかし、そうでは無い。


「いや、町全体を瞬時に把握出来た訳では無いから100パーセントでは無いが、少なくとも俺が見える範囲の中では明確的に殺意を向けられ襲われたのは俺たちだけだな。」

「……うーん、実は前から思っていたんだが、」

「なんだ?」


「今までの話を聞くに、ハヤトが体験している惨劇は、何かしらハヤトと関係のある人や本人に降り注いでばかりじゃないか?」

「……ッ!!確かにな、」


 実はそれは俺も思っていた。

 水の都ナビレスがゴブリン・ロードで襲われた時もそこにはウェイリスさんの両親が居たし、サンボイルで冒険者同士の大規模な殺し合いが行われた時もそこにマーニやイザベルの両親が居た。


 そしてそれが原因で後々惨劇に繋がっている。

 そう、実は俺と全く無関係の人が死ぬ、という事はほとんど無いのだ。(別に俺が知り合い多いという訳でも無いしだぞ。)


 これは、やっぱり何かしらがあるんじゃないか、実は少し前からそう思っていたのだが、今のマーニのセリフを聞いてそれが確信に変わったぞ。そして、


「もし、俺たちに他の冒険者とは違う「襲う理由」があるとするならば……考えられる原因はひとつだ。」


「「デスティニーレコード」」


 そこで俺とマーニのセリフがピッタリと揃った。

 まぁ、そりゃそうだよな。


「やっぱりマーニもそう思うか。」

「逆に、これ以外に何があるのかが思い付かないしな。」


 ごもっともなセリフだよ。


「でも、仮にこの一連の惨劇に関係していると思われる人物、ファブリスがデスティニーレコードを本当に狙っているのであればだぞ?いざ手に入れた時、読めるのか問題が出てくるだろ。」


 そう、デスティニーレコードは俺以外が見ても何も書いていないただの白紙の本に見えるのだ。

 ――何故かマーニだけは問題無く俺と同じ様に読めているらしいが。


「だが、小生も読めるぞ?」

「それは――なんでかよく分からん。」

「血が繋がってるからとかか?」

「本当に……?そんなので――」


 ――いや、でも確かにマーニと俺の共通点は「血が繋がっている」というところくらいか(後は互いに時間逆行(タイムリープ)で過去に戻っても記憶を維持し続けられる能力と人を過去に飛ばせる力――時間逆行(タイムリープ)を所持している。というように特殊能力を持っている点か)


「とにかく、まずは少しでも確率の高そうな可能性から潰していくべきじゃないか?小生はそう思うぞ。」

「確かにそれは俺も思うぞ。」


「よし、じゃあハヤトの両親に会いに行くぞ。」

「あぁ分かった。――――って、!?はぁ!?なっ、なんでだよ!?」

「なんでって、血筋の事なら家族に聞くのが1番早いんじゃないか?」

「……まぁそうかもだが、」


 こうして俺はマーニと自分の実家へ向かう事になった。

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